44 カラス
まあ、ないとは思うけど、ジュリーにもそれとなく聞いてみよう、そう思いながら、シャノンはカラスを三羽、人に見つからないよう、夜の闇に紛れて、密かに放った。
カラスはアンリエッタをすぐには見つけられなかった。
三羽が少なすぎたのかもしれない。シャノンはそうも思ったが、それ以上数を増やせば、人に知られてしまうかもしれない。
ジュリー・クロスには、カラスを放った翌日に会うことができた。
部屋を訪問したのだ。
彼女は悲嘆に暮れていた。
アンリエッタの初仕事を一緒にこなし、それをきっかけに仲良くなれたのに、まさか二回目の調査で魔物に殺されるなんて。
そう言って、俯く。もう流す涙もない様子だった。
シャノンなら、話してもいいかも。もうアンリエッタは帰らない人になってしまったし。
ジュリーはそう、つぶやいて、二人だけの秘密を話した。命の恩人のこと、お礼のクッキーのこと。
もうあたしだけの秘密だけど、今からは私とシャノン、二人だけの秘密になるわ。
最後にジュリーはそう言って、微笑んだ。
シャノンは心に隠し持っている思いを言うことはできず、ありがとう、ずっと大切にするわ、そう答えて、ジュリーの部屋をあとにした。
シャノンはジュリーに申し訳なく思いながらも、まさか、アンリエッタの行き先がわかるとは思わなかった。
ミュート家だ。間違いない。
アンリエッタの知る家は、知人は、セントディアには、他には絶対に、ない。
しかし、その後、カラスにミュート家を見張らせてもアンリエッタは見つからなかった。
ミュート家は三人、姉のブルー、弟のギャレット、お手伝いをしているマリカ。
最初、マリカを疑ったが、容姿が違いすぎる。
カラスは、視覚はとても発達している。しかし、その分、においには、あまり敏感ではない。もし、においに敏感であれば、マリカが実はアンリエッタだとすぐにわかっただろう。しかし、気づくことができなかった。
レスリーが退団した。魔導師団で、そんな噂が流れた。
シャノンは思う。
もし、私の想像が正しければ、レスリーは必ず、ミュート家に行く。レスリーを追わなくても、ミュート家を見張れば、彼は必ず姿を現す。そのときに、アンリエッタも姿を現すはずだ。
予想は的中した。
退団した翌日早くに、ミュート家にレスリーが現れた。
しかし、アンリエッタはいない。
妙なことに、レスリーはお手伝いのマリカと抱き合っているという。
まるで再会を喜ぶかのように。
おかしい、変だ。
カラスに何度確認しても、間違いないと、くぁくぁとうなずく。
…………そうか、マリカがきっと、アンリエッタなんだ。
完璧な偽装に騙されていたんだ。
そうだったのか。
シャノンは三羽のカラスに次の指示を出した。
マリカを襲え。




