4 召喚師
屋敷に着くとジョンとメアリーは執事とメイドとなり夕飯の準備を始めた。ブルーも二人について行く。
ブルーは老人二人と会ったばかりのはずなのに、仲がいい。歳の差もあるのに、話は合うのかな?
夕飯はコーレストと僕、それからブルーも一緒だ。
なぜブルーもここに? 老人二人と仲良しならメイド役じゃないの?
食事をしながら、突然現れたブルーについてコーレストから教えてもらう。
結論からいうと、僕は、実は召喚師で、やはり僕がブルーを召喚していた。初めての異世界訪問のせいで、ダークマテリアルの身体への吸収があまりにもよかったのが原因らしい。ダークマテリアルの作用で、僕は召喚師へと成長し、ブルーを呼ぶことができた……
「召喚師は滅多にいない能力者で、軍事的に大きな戦力になると恐れられているの。
考えてみて。一人の人間が攻撃力の高い獣や虫を召喚できたら、それだけでパーティーみたいなものが組めるわ。しかも召喚という繋がりがあるので連携も巧み。召喚師一人が国の魔導師団一個隊に相当するとまで言われているわ。
だから、召喚師は見つかるとすぐに国の魔導師団所属になります。
見つかればね。
表面上は保護という名目だけど、国の管理下に置かれるということ。自由は、ほぼ、なくなるわ。しかも、逃げられない。自立複合思考型高移動重攻撃戦隊みたいなものだから、どこの国も軍事的戦力としてほしい。たとえ逃げたとしても、他国も含めて保護という名目のもと、拘束しようと一生追ってくる。
追跡者をその度ごとに殺して、殺して、一生逃げ続けられると思う?
だから、いい? ギャレットは自分が召喚師であることをあかさないこと。けっしてね」
コーレストは淡々と話した。
コーレストも同じ召喚師で、老人四人は召喚された人だという。
「人を呼び出すことができるなんて召喚師、調べてみたけど、過去に誰一人として見つかっていない。召喚師が呼び出すものは獣や虫がほとんど」
それだけに、人を呼び出すことができる召喚師は、在来の召喚師以上の脅威であり、国に所属するようなことがあれば、国家間の軍事バランスが崩れて、戦争が起こる可能性が高くなるだろう。また、さまざまな実験の材料にされるかもしれないとコーレストは説明した。
コーレストは自分と同じ能力−−−−人を呼び出すことができる−−−−を持った子どもを見つけるために、三年間老人たちと旅を続けたという。五年前のことだ。広範囲探知感応魔術で調べたらしい。国中の町や村をくまなく回って、可能性があった子どもは僕一人だけだったという。
「私の場合、呼び出せたのは老人四人、五人目は呼び出せなかった。だからというわけではないけど、ギャレットも最大四人までは呼び出すことができるんじゃないかしら」
その一人目がブルーなのか、そう思って僕はブルーを見た。
うーん、召喚された人というより、お姉さん、かな。兄貴はいるけど、姉貴はいなかったな……
「あるじ様、よろしくお願いします」
ブルーが立ち上がって頭を下げる。いやいや、「あるじ様」はやめようよ。ギャルくん、ぐらいにしようよ。
でもそれは言えなかった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
何かの面接みたいだな。
「いい? ギャレット、あなたは、好むと好まざるとにかかわらず、大きな力を授かった。きっと使命があるはずです。ノブレス・オブリージということばがあります。高貴な者、力を持った者には、相応の義務が伴うのです。
私の使命は、同じ能力者の発見と保護、育成だと思っています。あなたにはあなたにしかできない使命がきっとあるはずです。そのことは忘れないで」
コーレストが真剣な顔で、覗き込むような視線を向けて話す。
「わかりました。その使命、何かはわかりませんが、覚えておきます」
コーレストの視線に押されて、チョットかっこいいこと言っちゃったけど、使命、荷が重そうだ、うーん、無理そう……かな。
ちなみにコーレストは召喚師ではなく、表向きは魔術師として生きているという。活動履歴からレベル7認定を受けているが、彼女は、特別な時以外は、魔術の能力はないらしい。
だから剣術上手いのかーと納得してしまった。
老人四人が魔術師で、しかも無詠唱で魔術を行使できるから、コーレストはフリだけ、実際は老人たちの無詠唱魔術で誤魔化しているという。
なるほど、見かけと事実は、異なる場合もある。
人生のよい勉強になります。
ところで、コーレスト、特別な時は魔術使えるの?
さすがにそれは教えてくれなかった。秘密だそうだ。
「秘密のある女性って魅力的に見えない? そうそう、試してみたい実験があって今度一緒にしてみない? 数年先になると思うけど。実験内容は、まだ秘密」
コーレスト、魔術できないよね。なんの実験さ。僕は聞き流すことにした。