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34 アンリエッタの任務 ①

 再びアンリエッタに指令が出た。五階層タワーレベル2の調査である。


 通常レベル3から出現するはずの金属ゴーレムが現れていると探索者協会から報告があり、その原因を調査するというのが今回の表向きの任務である。同行者は魔術師一名。


 任務については、さらに、ダンジョンレベル1の調査と同じ手法を用いるように、という指示もあった。エリア外に蝶をおいて、後から来る探索者パーティーをその蝶が尾行し、別空間の異世界をも調べる、というものである。


 指令が出たのは前日の午後、魔術師との顔合わせは当日、朝だった。


 しかし、幸運なことに、魔術師は同郷の知り合いだった。入団前は、顔は知っていてもあまり話したことはなかったが、魔導師団に同期で入団したのがきっかけで、よく話をするようになった。

 レスリー・カッセルという名の男性、心なしか、特別親切にされているようにアンリエッタは感じていた。


 この人なら頼めるかもしれない、アンリエッタは、タワーに向かいながら、そのことばかりを考えていた。おかげでレスリーからの話は、半分、上の空だった。当然そんなことはレスリーも気づいた。


「なんか、心配事があるのか? アンリエッタ」


 タワーに着くまで、少しだけ時間がある。お願いをするなら、このタイミングしかない。タワーに着いたら、もう無理だろう。


 しかし、実行すれば、レスリーに迷惑を…………迷惑ということばではすまされないような負担をかけてしまう。


 それでいいのだろうか。


 自分勝手な思い込み、思い込みに、たぶん、すぎないのだろうが、もう心は耐えきれなかった。


 レスリーには、言い表せないほど、申し訳なく思う……わかっている……自分への好意を利用しようとしている……そんな自分が嫌だった。けれど、心の悲鳴には、もう身体が耐えられなかった。


 条件が、あまりに、そろいすぎた………ジュリーのミュート家への訪問、魔術師レスリーとの任務、レスリーの好意……


 この機会を逃したら、もう、二度とチャンスはない……




 アンリエッタは、理性の静かな流れから決心できずにいたが、身体のほうはもうすでに耐えられない状態だった。口が勝手に動いて、打ち明けてしまっていた。レスリーに、今までずっと冷えた心の中で悩み続けていた計画を。



 アンリエッタの蝶は弱い。決して戦闘において、主力にはなり得ない。

 使い捨てにされる、あるいは、心に呵責を感じるような、そんな心に重い任務が中心となる、そんな予感を抱えながら魔導師団で過ごしてきた。

 それは、郷里で蝶が召喚できる神童とほめそやされた過去の輝きと、乖離がありすぎた。



 生まれ変わりたかった。







 レスリーは、ことばが出なかった。しかし、思いつきで言えることではない。アンリエッタの瞳を見る。


 断れば、必ず後悔をする。

 願いを聞き入れて、なにかあったとしても、後悔はしない……と思う。




 やめておけ、ただではすまない。そんな声も聞こえる。

 落ち着いて状況判断する心は、否定をしている。


 しかし、そう、それはきっと気分の問題だ、そうレスリーは思う。


 直感ーーそれはこの場合、感情と言い換えてもよいのだがーーを信じて、レスリーは心を決める。


 レスリーは、

「わかった」

 短くそう言って、アンリエッタに細かい説明を求めた。







 二人は、いやアンリエッタは、上層部から派遣された探索者パーティー二組によって、監視されていた。この任務で適性が確認できれば、次は実践配備である。データはできるだけ多いほうがいい……


 だが、距離があったために二人の会話は、その二組には聞こえていなかった。







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