30 喫茶と洋食トリコ
ダンジョンレベル1攻略記念で、翌日は、ブルーと街に、買い物に行くことにした。
ショコラも、もちろん誘ったけど、剣術の鍛錬があるので、パス、となった。
ショコラは、ふふ、修行らしい、ふふ……ブルーとデートかな?
「なにかほしいものはある?」
僕が尋ねると、
「服の予備が必要です」
恥ずかしそうにブルーが答えた。
そうだね。たしかに予備は必要だよね。一人で買いに行ったほうがいいよね。
「それじゃあ、僕はお店でも見ながら歩いているから、行っておいでよ」
そう言うと
「はい、ありがとうございます」
ブルーはタッタッタと行ってしまった……当たりだったみたい。
揚羽蝶も飛んでいて、のどかだ。近くに広い公園があるというから、行ってみてもいいかな。
そんなことを考えながら僕はお店を見て歩く。
お団子屋さん、喫茶店(下見)、お蕎麦屋さん、楽器屋さん、薬屋さんとお店を見て、ちょうど右側に細い道があった。
街に来たらやってみたかったことの一つ、路地裏散歩。
一つ願いが叶った。
細い道の両脇には民家が並んでいて、玄関先には花壇があったり植木鉢があったり。蝶も飛んでる。いい雰囲気だ。
陽を浴びながらゆっくり歩いていると、地味で小さな遺物のお店があった。
中に入ってみると、剣とか防具とか石とかアクセサリーとか並んでいた。
扇子型剣とか、ペン型ナイフもある。おしゃれなバンダナも売っているが、なぜか、高い。
お、偽装の仮面がある! このあいだ、偽装の鏡の話を聞いたが、仮面もあるんだ。
革製の小さなポーチがあった。何が入っているんだろうと思って、中を見たら、小さなドライバーみたいだった。ただ、先端が変に曲がっているのもあったりして、謎の工具である。
加速の指輪があった。いつもはブルーに【加速】をかけてもらっていたが、これがあると便利かもしれない。速さは僕の唯一の武器といっていい。他に取り柄がないともいう。
しかもその速さはほとんど他力である。僕のいいところってなんだろう?
指輪は高い気もするが、速さは自分の唯一の武器である。これは買うしかないと思って、買ってしまった。
お店を出てから、指輪をつけてみる。どのくらい早く動けるか、後で確かめてみよう。
大通りに戻ったら、紙袋を下げたブルーがちょうど戻ってきた。
「待ちましたか?」
「ぜんぜん、指輪を買ってしまいました」そう言って右手の甲を見せた。
ブルーは一瞬だけ目を丸くしたが、
「とても似合ってます」
と微笑みながら言ってくれた。
○
若い店番の男は驚いた。
指輪を買ったのが、あのコーレストの甥だと気づいたからだ。最初はコーレストの弟子という話だったが、それは間違いで甥だったと兄貴から聞いた。
人相から考えて間違いない。
なぜあの指輪を買う? そういえば、七つ道具も点検していた。同業だったのか。
人嫌いと言われているコーレストだから、甥を名乗ってもバレないと踏んだな。
セントディアで何か仕事をするのか……兄貴にも後で連絡をしなければなるまい。
そう思いながら、店番の男は、指輪を買った男が出て行ったドアを眺めていた。
○
さっき下見した『喫茶と洋食トリコ』という名前の喫茶店に入る。プリンが美味しそうだったのだ。
僕は濃い味プリンとコーヒー、ブルーは同じプリンと紅茶を頼んだ。
お待たせしました。
そう言って出てきたプリンは大きかった。オクシモロンの二倍はあるかもしれない。
上には定番の、さくらんぼとホイップクリームがのっている。
プリンも大きめだが、スプーンもカレー用みたいに大きい。
「いただきます」
そう言ってスプーンを刺そうとしたら、まさか、の抵抗にあった。
たいそう、固めのプリンである。
「ナイフとフォークが必要ですね」
ブルー、それは本気? 冗談? ちょっとわからないよ……
無理にスプーンを入れ、一口食べる。カラメルもプリンも味が濃い。たまごの味もしっかりする。おいしい!
コーヒーにすごい合う。
「おいしいね」
僕がそう言うと、ブルーは僕の目を見つめ、
「プリンの日だね」
そう言って、微笑んだ。
…………一個食べてお腹いっぱいになってしまった。
ランチ、食べられないかも。




