28 ダンジョンレベル1 腕試し ②
揚羽さんは僕らの近くを、相変わらず親しげな素振りで、飛んでいる。
地下ニ階層の階段も現れた。
さあ、下りてみようか。
なんだかあっさり攻略できそうな気がしてきた。
ショコラ、僕、ブルーの順で階段を下りる。
!?
え。
なにこれ?
まさかの大部屋!
しかもゴブリンがたくさんいて、オークまでいる!
百匹以上の魔物………………モンスターハウスだ!
ゴブリンたちが、突然現れた僕らを見ている。
後ろをすぐに見たが、下りてきた階段がなくなっている……
ブルーと目が合った。ニコッと笑ってくれた。
どんまい! そんな感じの笑顔だ。
どんまいじゃないよ、泣きそうだよ。
ブルーは、すぐに、揚羽さんに【遮蔽】と【結界】をかけた。
ブルー、揚羽さんではなく僕にかけてほしい……僕にはかけてくれないの?
なぜ揚羽さん? 揚羽さん、愛されている……
「私はダンジョンに愛されている。今、わかった!」
前のほうからショコラの声が聞こえた。
僕の聞き間違いかな? モンスターハウスだよ? 嫌われてるよ。
僕はトルネコの気分だよ。
ショコラはローブを脱ぐと、足元に投げる。
ローブの下は黒いワンピース。魔術師の定番だが、なぜ刀を持っている?
しかも刃のところが赤くて、やばそうだ。
揚羽さんも驚いてるよ。
ショコラは、刀の先をゴブリンに向ける、すると風刃が、刃先からダダダダダッと飛び出してゴブリンを襲う。
ワンピースと機関銃だ。
ダダダダダッと撃ちながらジグザグに突進して、大きく横に刀をないだ。あっという間にゴブリン数体を切り捨てた。
連射の風刃と横なぎで、あっという間に、ゴブリン十体以上を殺してしまった……。
後ろから、僕を指でつついて、ブルーが言う。
「私たちも必殺技で行きましょう」
ブルーが【加速✖️2】を僕にかけた。
僕はショートレイピアを抜いて駆け抜けた。
先手必勝、ゴブリンもオークもスローモーションだ。
勝ったな。
僕の必殺技はブルーの【加速】二倍掛けである。遊びでやってみたら、自分が突風になったようで楽しかったのだ。三倍掛けも試してみたが、目が回ってすぐに気持ち悪くなってしまった。
初めて戦闘で、【加速✖️2】を使ってみたが、ゴブリン、オークレベルなら、かなり有効だと言うことがわかった。
ただ、動きは格段と早くなるが、その分すぐに疲労がくる。完全な短期決戦用である。
十分、経つか経たないうちに、ゴブリンもオークもいなくなった。
あとから湧いて出てきたのもいるから、全部で百五十くらいはいたかもしれない。
ショコラの剣技と、僕のスピードで、思っていたよりもはるかに楽に、撃退できた。
ただ、やはりかなり疲れた。
僕は座り込んでしまった。
大部屋、モンスターハウスだとわかった瞬間は、もうダメかと思った。
落ち着いて考えれば、ブルーがいるからどうにかなるとわかるのだが、その時は焦ってしまった。
ショコラが予想を超える強さだったのは、ほんとうに度肝を抜かれた。
なるほど、ローブの中に隠してあった、あの刀を試してみたかったのか。
ショコラに
「その刀、すごいね」
と座ったまま、声をかけたら、
「鍔に龍の紋様が入っているから、倶利伽藍丸、って名前を付けたの。コーレスト師匠からいただいたんだよ」
ショコラは自慢げだ。
「風刃はどうやって出したの?」
「刀を持って魔力コントロールの修行をしてるけど、刃先を指先だと思えばいいのよ。刃先に風刃、相性もいいみたい」
なるほど、ふだんから密かに練習してたんだな。
「ギャレットも、前より早くなったみたい」
「毎日ガーデンで、犬さん、熊さんと、戦っているからね」
僕はそう言って【加速】の二倍掛けは、秘密にした。必殺技だからね。
「これだけの魔物がいたのだから、ドロップがあるかもしれませんね」
ブルーがそう言って探し始めた。
たしかにあれだけいたんだから、あってほしい。
探し物競争の勝者は揚羽さんだった。揚羽さんの本気のスピードは早かった。
お宝は直径二十センチほどの透明感のある玉である。
ブルーがそれをリュックにしまうと、
「三階層への階段も現れたので、下りてみましょう」
と、僕らと揚羽さんに声をかける。
「下もモンスターハウスだったらいいなあ」
なにか、いやなことがあったの?
ショコラのことばに、僕はため息をついた。




