23 ショコラの挑戦
ショコラはその日、八時に探索者協会に着いた。リパンとは違い、大きくて立派な建物だ。
受付嬢にIDカードを渡して、
「剣術の先生をお願いしているショコラ・ローズです。よろしくお願いします」
と伝えると、受付嬢がすぐに奥の部屋へ案内をしてくれる。
「お嬢さんが例の、剣士希望か」
カードを受付嬢から受け取った、体の大きな髭面が独り言のようにつぶやく。
リパンで発行されたカードに視線を落として、マルクは、少なからず驚いた。
リパンのローズって、あのローズ家か? コーレストとは遠い親戚関係だったのか……知らなかった……
驚きを顔に出さないようにしながら、
「悪い悪い、俺は協会長のマルク・ラゴだ」
マルクは軽く挨拶をする。
ショコラは受付嬢に言ったことばをリピートした。
「それじゃあさっそく剣の腕を見せてもらおうか。地下室で俺と打ち合おう」
マルクは、現役のときは、レベル6まで到達した剣士である。引退して役職を担っているが、腕にはまだ自信があった。
地下の一室。
ショコラは喜びで胸がいっぱいだった。また剣を振るえる!
ショコラは思う。
私の夢の一歩。その一歩目がこの大男だ。
無心に木剣を振った。後ろでコーレストが、こう動くの! と支えてくれている気がした。
私が師匠の夢を叶えます!
気付くと、そこまで、よし、わかった、というような声が、聞こえた。
声が聞こえたとき、自分が一瞬、何をしていたのか、わからない感覚に襲われた。
そうだ、剣術の技量を知りたいと言われて、テストを受けたんだ。
マルクは、まさかここまでできるとは思っていなかった。
筋がいい。剣士を目指すだけある。
すでに何かの流派をかじっているのか、攻守のバランスもいい。
守っているのかと思うと、突然、決め技かと思えるような切り込みをしてくる。
油断ができない、予想しにくい剣筋だ。
まだまだ荒削りなところもあるが、逸材かもしれない。
おもしろい剣士がいたら私のところに来させなさいと、剣聖が以前、言っていたのを思い出す。
行かせてみるか。
ショコラは大男から、
「受けてくれるかわからんが、剣術の師を紹介しよう」と紹介状と地図を渡された。
ショコラは魔術師である。いや、つい最近、勘違いから剣に目覚め、魔剣士を目指すようになったのである。
剣聖なんて知らないもん、の人であった……
渡された地図に従って行くと、大きく、威厳を感じさせる建物に着いた。探索協会よりも立派かもしれない。
紹介状を渡して、中に入り、広い広い道場の隅で待つ。
ショコラは思う。
私の夢の第ニ歩。そのニ歩目がこれから始まる。
道場の隅で審査が始まる。相手はあの大男より技量が高い。それがすぐにわかった。
それでも、やることは変わらない。
私は、私の剣を振るのみ。
無心に木剣を振った。後ろでコーレストが、こう動くの! と、再び支えてくれている気がした。
私が必ず師匠の夢を叶えます!
気付くと、そこまで、というような、声が聞こえた。
声が聞こえたとき、自分が一瞬、何をしていたのか、わからない感覚に、再び襲われた。
そうだ、剣術の技量を測られていたんだ。
審査を座って見ていた、線の細い若い男が、
「私が指南しよう」
そう声をかけてくれた。
「毎日八時に、ここに来なさい。」
「ありがとうございます」
これで剣術の鍛錬ができる!
魔剣士に近づいた!
でもこの先生、大丈夫かしら、若くて頼りなさそうに見えるけど。
もっと、こう、こんな感じ、うまくは言えないけど、そんな剣の達人に教わりたかった。
けれども、今はこの先生で満足しよう。
早く達人に教わりたい。
ショコラは知らなかった。
その先生、リリアン・バスは、剣聖の二番弟子、いわば、達人の一人であった。




