22 依頼
マーガレットの訪問があった翌日、いつものようにガーデンに行き、野菜と果物を収穫する。
果物はいつまで収穫できるのかな。
「その鍵には使用回数があらかじめ決められていますから、回数分、六階層に上がったら、鍵が消えると思います」
ブルーの返答に、心配性の僕は考え込んでしまった。
果物が収穫できなくなったら、『おいらの買い物カゴ』のオヤジになんて言い訳しようか? 果物がない理由を必ず尋ねてくるはずだ。今から考えておかねば。
そんな心配をよそに、ブルーは、
「少しお金が貯まってきたので、今度、街でお買い物をしませんか」
と誘ってくる。
さては、ブルー、プリンが食べたいな?
夕方、『おいらの買い物カゴ』に野菜と果物を卸したあと、探協に寄る。
受付嬢に、剣術の指導者を紹介してほしい旨を伝えると、僕とブルーの顔を覚えていたのか、なぜか奥の部屋に入り、マルク・ラゴを呼んできた。
面倒な依頼だと思ったに違いない。
ピンポン! 正解です。面倒な依頼だと思います。
「こんにちは。今日はお願いしたいことがあって来ました」
マルクにあいさるすると、
「もう夜になるが、どうした?」
と不審そうな顔をする。
あれ? 以前、ねずみの国で仕事をしたときには、朝でも昼でも夜でも、職場に入ったら、『おはようございまーす』だったんだけど……
僕は、ショコラはコーレストの遠い親戚で剣士志望という、予定していた設定で、剣術の指導者の紹介をお願いした。
「なるほど、話はわかった。わかったが、どの程度なのか、剣の腕前を見ないと、紹介はむずかしいな」
しまった。ショコラの腕前がわからない。
そこまで剣術の鍛錬がしたいと言っているのだから、そこそこはあるのだろう。
「明日、その女性をこちらに来させます。面倒ですが、見ていただいてもいいですか?」
「わかった。それなら午前中のほうがいいだろう。そうすれば、技量に合わせて、午後、指導者を紹介できる。もちろん紹介料は、かかるからな」
「それはもちろんです。よろしくお願いします」
支払いはどうせマーガレットだ。いくらでも取ってください。
そう言って僕らは探協を後にした。
帰りがけに、マーガレットに、探協でのことを伝えて、僕らは帰宅した。
マーガレットは安堵の笑みを浮かべていた……
マーガレット、ほんとうにつらかったんだな。
ショコラが迷惑をかけて、ごめんなさい。迷惑をかけないように僕からも注意しておきます。
つい、僕は心の中で謝ってしまった。
次の日、いつものように、野菜と果物を卸したあと、昨日のお礼と、その後どうなったのかを聞きに、探協に寄る。
受付嬢にに昨日のお礼を伝えると、
「良い腕前の女性でしたね。女性で、あの腕前は、なかなかいないと、協会長も驚いていました。あの女性なら、確かに適切な指導者を見つけるのは難しかったでしょう。もう先生の紹介も済んで、料金も受け取っています。もう先生のこと、お聞きになりましたか?」
「いいえ、何も聞いていないのですが」
「そうですか……驚かないでくださいね。指導者はリリアン・バス先生、剣聖の、二番目の弟子の方です」
「…………えっ?」
ショコラってそんなに上手かったの?
「……剣聖って何人弟子がいるんですか?」
「二人です。その二人目の弟子のリリアン・バス先生が、指導してみたいとおっしゃったようで、先生に決まりました」
「……そうなんですか……いろいろありがとうございました」
「また何かあれば、相談にいらしてください」
ショコラをだましたり、ウソを言ったりしていたが、だまされていたのは、僕のほうだったのか?
男女の仲は、だまし、だまされ、なんだね。
ブルーも微妙な顔をしている。
マーガレット、ごめん、ショコラへの注意はやめにしたよ……
今日の学び
ショコラには逆らわない。




