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19 六階層

 ガーデンレベル1草原は、五階層の異世界である。


 なのに、五階層で上向きの階段が現れた。六階層が出てきた?


 これは、上に上がれ、ということだ。


 不安を感じてブルーを見ると、かわいらしく微笑んでうなずいた。階段を上がってもいい、そういう合図であろう。


 階段を恐る恐る上っていくと、六階層は果樹の森だった。

 五階層と同じように、果樹の森は季節を無視してリンゴや梨、バナナ、に蜜柑などの果実を実らせ、僕らの周りだけに広がっている。

 その向こうは五階層と同じ草原だ。


 階段を上り切ったところには、十センチほどの長さの円筒状の棒が落ちていた。手で握れる太さである。

 人工的な棒に見えたので、拾ってみたら『G1ー*6』と彫られている。


 この状況が理解できず、周りを眺めていたら、ブルーが解答をくれた。


「このガーデンと友好関係が築かれたようです。

 今、手にしているのは、六階層への鍵だと思います。

 その鍵を持って、同じパーティーメンバーでこのガーデンに来ると、六階層が開放されるのでしょう」


 異世界と友好関係を結ぶことができるとは聞いていたが、まさか、こういう現象を友好関係と呼んでいるのかと、驚いてしまった。


「ということは、ここの果物を地上に持って行ってもいいってこと?」


「はい。ガーデンの、せっかくの好意を無にするのは申し訳ないので、もらっていきましょう」

 そう言ってブルーはトートバッグを取り出す。


「今回は少しだけ。その鍵と果物を持って、探協に報告に行きましょう」





 地上に戻り、まずは背中のリュックの野菜を『おいらの買い物カゴ』に持っていく。

 いつもの五千フラを受け取ってから、探協に行った。


 僕は探協の一階に入って、ことの重大さに気がついた。

 僕は、ちょっと気づくのが遅い。にぶいともいう。


 コーレストの甥っ子として僕は有名人だ。ここで異世界との友好関係を結んだとなれば、よけいに目立ちそうだ。


 僕は地味に生きたいと常々思っている。もともと、農家の次男なんだ。


 思っていることと現実が違うじゃないか。


 逃げちゃ、ダメだ、逃げちゃ、ダメだ、逃げちゃ、ダメだ……


 僕が入り口あたりでぐずぐずしていると、ブルーはグイグイと受付に向かって歩いていく。

 ブルー、ためらいがないね。


「これをお願いします」

 そう言って。トートバッグごと受付嬢に渡す。トートバッグの中味は、棒っきれの鍵とリンゴや蜜柑などの果物である。


 受付嬢は、なんで果物を持ってくるの? と中身を見て、怪訝な表情をしていたが、棒っきれが目に入ったのか、がたんと音を立てて立ち上がった。


「少しお待ちください」


 そう言って、トートバッグを持って奥に入った。


 十分もかかっただろうか、僕にはとても長く感じた。


 入り口で待ち続ける身にもなってほしい。


『待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね』

 今は待つ身が辛いです、太宰先生。


 待っていると奥からあの大将が出てきて、ブルーと、離れて立っている僕を見て、奥に入れ、そう手で指示して、奥に入ってしまった。


 ブルーはやはりグイグイ奥の部屋に入って行こうとする。僕はブルーを追いかけて、金魚のふんのようにくっついて、部屋に入った。


 ブルー、僕がビビっているのが、わかっているね。やっぱり姉かな?




 ソファーに座ったあと、大将は自己紹介をした。


「ここの協会長のマルク・ラゴだ。この間は迷惑をかけたな」

 この大将、探索協会のトップだったのか、どおりで貫禄がある。


 僕は腹を括った。

「いえ、誤解は誰にでもあることですから、気にはしていません」

 いや、半分は誤解じゃないんだけど。


 ブルーに、ビビっているのを気づかれているので、ここでいいところを見せようと、ちょっとかっこつけてみた。


「今回の鍵と果物だが、まず最初に返却しておこう。それで、事情を聞いてもいいか?」


「もちろんです」そう言って、ことの事情を話した。


 ただ、野菜を三分の二、残していたことは、僕が間抜けだとバレるので、省略した。


「なるほど、いきさつはわかったが、友好関係がなぜ結ばれたのかはまったくわからないな」


「そうですよね。僕もまったくわかりません。運がよかった? のかな?」


「うーん…………それはともかく、ガーデンレベル1と友好関係が結ばれたことは公表するか、どうする? 公表すれば、もちろん知名度は上がるが」


「公表しないでください。なぜ友好関係が築かれたのか、理由もわからないし、ただでさえおばさんの甥っ子ということで、注目を浴びてしまっているので、そっとしておいていただけるとうれしいです」


「珍しいな、探索者は自分の知名度をあげたいものだが。

 まあ、おばさんがあのコーレストだから、しかたないか。

 わかった。公表は控えよう。ただ、その果物を買取所に持っていくときには注意するんだな。結構な高級品だぞ」


「わかりました。ありがとうございます」

 そう返事をして、その日、探協を後にした。





 ガーデンレベル1と友好関係を結んだことが評価されて、僕とブルーのIDカードは1から2に上がった。





 IDカードのレベルが上がるとなにかいいこと、あるのかな?







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