17 ショコラの勘違い
試験に合格した次の日、修行のメニューが変わることはなかった。
ただ、剣術がマーク担当からコーレストに変わった。マークに比べると力は少しだけ弱く感じたが、剣捌きはコーレストのほうが、はるかに巧みだった。
魔術師なのに! まるで剣士のよう! リパンの剣術の先生の上をいくなんて、コーレストって最高!
コーレストはあと七日しかいない。
私はその日のうちに、メニューの変更をお願いした。コーレストのいる間は、この剣術の鍛錬に集中したいと。
願いは聞き入れられた。
剣術の基礎をすでに身につけていたので、コーレストが学んだという二つの流派も、
「流派として教えられるほどの、そんな実力はないのよ」と言いながらも、教えてくれた。
時間はない。今、コーレストの剣術すべてを吸収しなければいけない。
ここで吸収の指輪が使えればよかったのに。
起きてから寝るまで、夢の中でも剣術のことを考えた。
一寸先は闇、未来は霧の中。
ショコラはコーレストから直々に魔術を学ぶ予定だった。それを楽しみにしていた。
しかし、コーレストの剣術にハマってしまった。
コーレストの剣技は、剣士ほど上手いのか。冷静に見ればそんなことはない。
しかし、
このときのショコラは舞い上がっていた。
試験に合格して、唯一の弟子でいられる。
しかも、クズ遺物だと思っていたものが、すばらしい遺物、吸収の指輪だった。
そして、ギャレットとの会話も楽しかった。
それは、老人以外の人と、ひさしぶりに会話をしたせいかもしれないのだが。
ギャレットと二人でプラチナゴーレムを仕留めたのは、なんか、すこし、ときめいた。
実際に仕留めたのはショコラであり、ブルーもいたのだが。
今まで、塑像のように美しい女性が剣を振るう、そんな華麗な姿は、見たことがなかった。
おまけに、タワーレベル1で、剣術の鍛錬が我が身を助けた、そんな実感もあった。
もともと、コーレストに対しては畏敬の念も持っている。
だから、無理やり、弟子になろうとしたのだ。
そんな要素が複雑に絡み合って、ショコラの判断を狂わせてしまったのだ。
ショコラは思う。
コーレストは偉大だ。魔術師レベル7でありながら、これほどの剣術ができるとは。
まさか、まさかコーレストは魔剣士なの?
謎めいた魅力があるコーレストにはピッタリだと思った。
隠しているんだ!
実は魔剣士なんだけど、まだ魔剣士としては、納得のいくレベルに達していないので、隠しているんだ!
私は洞察力のある女。間違いない。
残念なことに、ショコラは自信家でもあった……
ショコラは、確信した。
コーレストの秘密ーー正体ーーを私だけが知っている。
私だけ……くす……つい笑顔が出てしまう。
私だけが知っている秘密ーーそれは判断力をいっそう狂わすには十分だった。
国で五指に入ると言われる、レベル7、魔術師のコーレスト。その弟子になって、国のトップクラスの魔術師になるのが夢だった。そのためにセントディアに来た。
その夢は、リパンのローズ家のためにもなる。
ローズ家の長女、家督第一継承者、ショコラ・ローズの義務でもある。
しかし、目標が変わった。
魔剣士だ。
魔術と剣術の融合。
コーレストがまだ成し遂げていない、高位の魔剣士になる。
たったひとりしかいないコーレストの弟子、その弟子の私が、コーレストを超え、コーレストの夢を成し遂げる。
ローズ家はリパンで再び輝くことができる!
うーーーん、か・ん・ぺ・き!
コーレストが旅立つ前日の夜。
異世界産の刀を師匠からいただいた。
鞘から抜くと、刃紋に火のような、赤い紋様が入っている日本刀。
なぜ私が魔剣士を目指していることがわかったのだろう。
さすが、師匠!
私は飛び跳ねて喜んだ。




