13 指輪
夕飯から一時間遅れで到着したので、攻略の詳しい報告は翌日に持ち越された。
それでもショコラは、おもちゃの指輪を、プラチナゴーレムが出て大変でした、ということばを添えて、コーレストに渡した。
そうだったの? おつかれさまでした。詳しい話は明日聞くわね……確かに受けとりましたと、コーレストは指輪を大切そうに受け取った。
それぞれがシャワーを浴びてスッキリしたあと、ショコラ、僕、ブルーの三人で食事をとった。疲れていたのでことばは少ない。
食事後、長居は無用と、僕とブルーは、ショコラを置いて、屋敷から出るフリをしながら、地下通路を通って自宅に帰る。ショコラは屋敷ですぐに寝るだろう。
寝室に入ると、
「ショコラさんの幸運は、まだまだ続きそうです」
ブルーはそう言って、僕に寄り添った。いい香りがした。
えっ、どういう意味?
「おもちゃのコンパクトミラーが実は、偽装の鏡だった、という話を本で読んだことがあります。
その鏡は優れもので、性別まで変えられたとか。私の【偽装】でも、そこまでできません……
元の姿に戻るときの呪文が、楽しいんです。確か『ララ……』
……呪文の続きを忘れてしまいました……」
なんのはなし?
「あの指輪も、同じなんです。
おもちゃに見えて、おもちゃではありません。めったに見ない遺物、たぶん、吸収の指輪だと思います。コッソリ【鑑定】をかけてみましたが、反応はなにもありませんでしたが。
でもたぶん…………そうだと思います。あんなのが縁日に出ているんだったら、明日から二人で縁日巡りのデートです。」
やっぱりあのときの青い粒子……【鑑定】を使っていたんだ。
なんで吸収の指輪だと思うの?
「あのガラスは、もちろんガラスですが、まだらの具合からふつうのガラスではないと思います。
この地の高度魔術文明からの遺物ではなく、空からのダークマテリアルによって、もたらされた遺物だと思います。
ガラスが三連なのは魔術を吸収する衝撃を和らげるためでしょう」
ブルーってなんでもわかるんだなあ。
「いえ、そんなことはありません。わからないこともたくさんあります」
そう言って、ブルーは僕を抱きしめた。僕もゆっくりと抱きしめ返す。
互いに顔を埋め合う。香りが、より濃密になった。
隣の家に移ってからの習慣である。
「ショコラさんとの出会いは、必然だったのかもしれませんね」
えっ? なに?
「真理のゴーレムが現れた理由ーー私の解釈です」
★
「やっぱり。そんな感じがしたの。
プラチナゴーレムが現れて、おもちゃの指輪ってことはあり得ないわ」
コーレストがジョンから指輪を受け取る。
ジョンの後ろには三人の老人が控えている。
「四人でいろいろ調べましたが、かなり質のいい、吸収の指輪です。
初級魔術ではまったく反応しません。反応するのは中の上ぐらいから。
あえて反応させないようにすることも、できるようです。
上級で二つ目が反応します。
そこから考えると、高位魔術師と戦闘せざるを得ないときの、切り札の魔術に対応する指輪だと思われます。
吸収した魔術の放出も可能ですが、吸収するときのロスがあるようで、90から95%ほどの放出になりそうです」
「遅くまで、ありがとうございます。もう休んでくださいね」
コーレストはそう言って老人たちをねぎらった。
老人たちが部屋を出たあと、
「プラチナゴーレム……吸収の指輪…………」
そうつぶやいて、コーレストは今後について、深く考えをめぐらした。




