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true177の短編小説10作詰め合わせ【2】

カッコつけも、時には悪くない。

作者: true177

 大人の区分は、どこからなのだろう。成人の定義は満十八歳から上と決められているのだが、精神的な『大人』は人によりけり。十六歳ほどで既に大人任せのどっしり構えの人もいれば、二十歳を過ぎても子供のままという人もいる。


「……私は、アイスティーでお願いします」


 ウエイターに注文を付けたのは、奈央美なおみさんだ。徹平てっぺいの初デート相手である。緊張のあまり、話し方がぎこちない。


 喫茶店に誘ってくれたのは、奈央美さんの方。お誘いのメールがあり、即答でOKした徹平だったが、自分自身のあることをすっかり忘れていた。


 そう、苦い飲み物は基本飲めない、ということだ。


 日常生活では、苦い物が飲めないからと言って困ることはほとんどない。麦茶か水で事足り、紅茶やコーヒーを選ばなければそれでいいからだ。


 しかし、ここが喫茶店で、おまけに奈央美さんが紅茶(アイスティーとは冷たい紅茶のこと)を頼んだとなると話は異なってくる。


 ……奈央美さんに合わせて、僕自身も頼んだ方がいいのか……?


 飲めないとは言ったが、味を好かないが故に飲まないのであって、我慢をすれば飲める。


「……徹平くんは? どうするの?」


 ……印象は大事だって聞くし、それに『苦いものが飲めない』なんて思われたくないし……。


 『人は外見より中身』と豪語する輩がいる。長期的に付き合うことが前提ならば正しいが、出会い段階で中身など分かるはずがない。結局、人は外見の第一印象で決めてしまう。入れ墨を入れた強面のサングラスの男は、元から敬遠されるのである。


 カッコいいと思われたい。『苦いのが飲めない』とは思われたくない。見栄を張る気持ちが、徹平を動かした。


「……僕も、アイスティーで」


 かしこまりました、と足早にウエイターは去って行った。


「徹平くんは、紅茶とか、ゴクゴク飲める?」


 いきなりの、奈央美さんの質問だ。


「……はい、飲めます」


 カッコ悪いところをわざわざ見せる事はない。もっと打ち解けられるその時が来たならば、本音を話そう。そう決意を固めた。


 奈央美さんが、よどみのない白い歯を見せた。


「そっかー。喫茶店に連れてきてこういう事言うのもなんなんだけど、苦いのはあんまり受け付けなくてさ」


 それは、僕も同じです!


 奈央美さんは、僕と同じだった。


「……徹平くん、すごいね」

「……それほどでもないです……」


 この嘘を、いつばらそうか。いや、苦手を克服すれば、正真正銘の事実になる。うーん、悩ましい。


 とにかく、奈央美さんから好意を向けられているようで、なによりだ。


 注文したアイスティーが、二つ届いた。一個は奈央美さんの手元に、もう一個は徹平の前にそれぞれ置かれた。


 しばらくためらっていた奈央美さんは、意を決してアイスティーを口元に運んだ。独特の風味と苦みで、顔をしかめていた。


 徹平も、平静を装いつつアイスティーに口を付ける。


 ……前に一度騙されて飲まされたことがあったけど、やっぱり好きには慣れないよなぁ……。


 人生で二回目の紅茶は、控えめにほろ苦かった。

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