第一話 逃亡
初投稿です。よらしくお願いします。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
今はとにかく走るしかない。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
走る。後ろを振り向か暇なんてない。
「殿下!!追手がすぐそこに!!」
何やら後ろから叫びが聞こえるが、気にしてはいられない。
ヒューーーーーー
俺はこの空を切るような音に気づかなかった。
「ガハッ!…ああああああァ!」
肩からマグマが次から次へと吹き出しているのではないかというぐらいに熱い。痛い。
だが、それでも走る。逃げる。
あいつらの…文字通り命をかけて俺を守ってくれた臣下のためにも……俺は生きなきゃならない。
ヒューーーーーーーー
またもや空を切る音が響き渡るが、俺は気づかない。気づくことができない。
右足を踏み出した瞬間、
「あ、れ…?」
右足は地面から垂直抗力を受けることなく、俺は頭から地面に突っ込む。
「ブハッ!!」
やばい。追手が!
すぐに立ち上がろうとするが、全身に力が入らない。右足を見ると、左肩だけでなく右足にも矢が刺さっていることにようやく気づく。
何度も何度も力を込める。上半身を何とか起き上がらせ、生き残った右手で何とか下半身を引きずり茂みに隠れようとする。
「おい!いたぞ!」
追っ手の1人がそう叫ぶ。
「よくやったバルト。トドメは私がさそう。」
「もちろんです。団長。」
この団長と呼ばれた男はダルム.アイザート、アーサイル帝国騎士団団長である。かつて、幼かった俺にも稽古をつけてくれた人でもある。
「ハァ…ハァ…ダルム!…お前!!」
左肩、右足に矢が刺さり、思考を維持するのでさえ難しい。今にも気を失いそうだ。
「殿下。お久しぶりですね。ですが、残念なことに私は殿下を殺さなければなりません。」
今の俺じゃあ、どう足掻いてもこいつには勝てない。
「私共が生きるには、力のあるものにつかねばならぬのです。」
栄えある騎士団の団長がそれをいうのか。まるで傭兵のセリフだ。騎士団というものは、王のため国のために命をかけて守るものじゃないのか。
だが…こいつのいうことも分からなくはない。本来、力のあるものが国のトップになるべきで、血筋だけのものがなるべきではない。無能な王は王ではないのだ。
「わかった。ならば、俺を殺せ。」
俺を殺して国が安定するならば、それで良い。
「団長!玉璽の回収はいいんですかい?影武者の可能性も…」
「いや、私が殿下を間違えるわけがないだろう。玉璽も殺した後で良い。皇帝の証明書を手放しているわけがないからな。」
その瞬間だった。2人が会話をする一瞬の隙に矢の刺さっていない左足に魔力を込める。
今だ!!!
一気に地面を蹴り、後方空中に飛び上がる。
このままいけば崖に阻まれた川がある。そこに逃げられれば!
「何!?させるか!!」
ダルムも魔力を全身に纏って、俺との距離を一気に詰める。剣を両手で持ち上げ一瞬にして振り下ろす。
死の淵にいるからだろうか……。騎士団長の剣速がやけに遅く感じる。結果、反射的に上半身をそらすことができた。
「何!?今のを避けるだと!?」
しかし避けたと言っても、ダルムの剣先は伸びる。微かに避けきれずに、切っ先が目のふちにあたる。
目から血飛沫が飛び、視界が曇る。
「ああァッ!目がァァァ!!」
上空にいた俺たちはそのまま下降し始める。
ダルムは崖の手前で着地するも、俺は崖下へと落ちていく。着地点は目標通りの三十メートルも下にある川だった。
バシャン!!!
これでもかと水しぶきが飛んだ―――と同時に、俺は気を失ったのだった。
「いいんですかい?団長。」
「ああ。瀕死の状態であの高さから川に落ちたんだ。確実に死ぬ。」
「ですが、玉璽は…?」
「そんなものは何とかなる。」
「へぇ。そうですな。」
その時のダルムの頭には、今まで幽閉されていた皇子が魔法を使い、さらには自分の剣を避けたことで頭がいっぱいだったのだ。
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「まこと!大丈夫よ!お母さんがついてるから!」
母さん…
「そうだぞ。まこと。父さんもついてるぞ!!」
父さん…
「誠くん。気持ちを前向きにね。先生が必ず手術成功させるから。」
先生…
懐かしい顔が脳裏に浮かび上がる。
11歳から入院して、17歳になってようやく手術できる体力をつけたんだ!手術なんて全然平気さ!
「はい。それでは手術を始めます。」
手術中であるにもかかわらず、鮮明に先生の声が聞こえる。
あれ?今、全身麻酔中だよなぁ?
なんで麻酔中に意識があるんだ?
「メス。」
先生が看護師から刃物を受け取り、俺の腹へと刃物を突き刺す。
痛い。痛い、痛い、痛い痛い!
先生!麻酔が効いてないです!!
先生!やめてくれ!!気づいてくれ!!
痛い!痛い痛い痛い!!
「痛い!!!」
カッ!と目が見開かれる。
なんだ夢か……
「ハァ…ハァ…ハァ…」
顔が熱い。さらに左肩、右足が特に痛くて、ドクドクマグマが吹き出している。さらには、川の水面に全身を打ち当てた衝撃からか、もう体が動きそうにない。
だが、追っては振り切ったようだ。
ここで死ぬわけにはいかない!
右の掌を地面に突いて、思い切り力を振り絞る。
動け。動け、動け!動け!!
残っているかも分からない魔力を右腕にこめ、ようやく上半身を起き上がらせる。
ゆっくりと首を回して、辺りを見渡す。
「い、え…?」
木々に囲まれ、物騒とした森の中に、ポツンと一軒の家がある。家の周りには庭があり、それを囲うように柵がある。かなりちゃんとした家のようだ。
あそこにいけば、もしかしたら人がいるかもしれない…。
かすかな生への希望を持って右腕で体を引きずる。…
「ハァ…ハァ…ハァ…」
やっとのことで敷地内に手を入れる。
扉までもう少し……
しかし――――何とか起き上がっていた上半身もついに力尽きてしまい、俺は完全に気を失ってしまったのだった。
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