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依頼受理

初投稿

 自慢ではないが俺、マーナガルムはかなり腕の立つ傭兵だ。 

今は一人ソロではあるものの、最近まで魔女の二つ名を持つ人物と組んでいた実力は高く評価されていると自覚している。仲間の力だけで実力を偽造しているつもりもないしな。

ここ最近身を寄せているヴィンセント王国でもかなり上位に位置するんじゃないだろうか?

指名依頼もそれなりに多く、実入りの多い仕事もかなり回ってくる。

──だが、傭兵なんてもんは言ってしまえば荒くれ者でしかない。

どれだけ実力が高かろうが頭が悪ければカモにされるし、実力があるバカが暴れりゃ他に迷惑が掛かる。

そんなわけで契約書は割とこっちを下に見ているモンが多い。

ま、俺クラスになるとそれなりに好待遇で依頼は来るんだが、いかんせん分からない事はある。

そんなもんはさっさと他人に聞くに限る。

「滅茶苦茶条件いいから俺は別にいいけどよ、指名依頼ってこんなんだったか?」

俺は受け取った依頼書を読みながら受付の…名前は忘れたが美人に聞く


~~~~~~~~~護衛依頼~~~~~~~~~~

依頼者:ソール・キャサリン・ヴィンセント

受理者:マーナガルム・スコル

期間:1.受理者が死んだ時。

   2.依頼者及び受理者の双方の合意に基づき契約解除される。

報酬:依頼者が持つ財産の全て(月額小遣い制。別途応相談で支給あり)

条件:受理者は依頼者の傍をいついかなる時も離れない。

   受理者が睡眠をとる際は依頼者が別に護衛を用意する。

   受理者の衣食住その他の要求は依頼者が用意する。



どう考えても内容が良すぎる。期間も受理者、つまり俺の合意が必要ってのもそうだし、護衛依頼にしちゃどこかに行くとかそういうわけでもない。期間が実質無期限とはいえ報酬も破格過ぎる。財産全てとか正気なのか?

純粋に貴族様のお抱えになれる感じにしちゃ好待遇すぎる。こんなもんお抱えどころか婿取りレベルだろう。

確かに最近は王家や貴族やらの護衛依頼を受けてはいたとは言え、好待遇すぎて疑っちまう。

「確かに条件良くて詐欺を疑うかもしれないとは思うんですけど…」

「でもでも、これ受けてくれないとギルドの評判にも困るって言うか、詐欺ではないんです!」

「ま、そりゃそうか。ギルドが受け入れたんだもんな」

少し必死な形相の受付の姉ちゃんにびっくりしながらも俺はあっさりとその護衛契約を決めるのだった。


「…あれ?つかコイツってこの国の第3王女じゃね?」

「依頼書受諾しましたー!!頑張ってください!」


──────────────────────────────────────────


 「あ~…まあ王宮勤めとかなら、割合はいい…のか?」

政治とかはサッパリだが、今のところドロドロした貴族の争いなんかは起きてねえと聞くし。

受付の姉ちゃんも騙す気なら俺はこの依頼より前に騙されてくたばってるだろうし。

反応と俺の記憶から確かに依頼者はこの国、ヴィンセント王国の第三王女様だろう。

王家からは戦争の時と第一王女が嫁に行った時と第七王子の狩猟の護衛の3回くらいしか依頼は受けてねえが、その時に第三王女(お嬢)とも会話をした記憶はある。

そう、俺はこの国のお嬢に何度か会った事がある。王家からの依頼で王宮に行った際に物珍しさからか俺達を見ていたのを、ぼんやりと覚えている。その後に名義の異なるこのお嬢から何度か依頼を受けたが…どうやらそれが今回の仕事に繋がったらしい。

ギルドを出てぶらぶらと宿まで考えながら歩く。


──────────────────────────────────────────


 依頼を受諾した際に住処まで用意してもらえるってもんで、荷物やらなんやらを纏めねえとな。

なんでも明日の朝には傭兵ギルドの前に迎えを出すって話だったしよ。

幸い、いつ死ぬか分からない傭兵稼業をやってる以上は専用の馬車を用意するようなデカい家具やらはねえが、抱え込んでたお宝はあるわけで、それを売っぱらって装備も調整しとかねえとな。

あー、礼服、か何かはいらねえか?一応まともな軽装でいいよな?

せっかくだし小物も買い揃えておくか…。回復薬ポーションも残量が心もとないしな。

そして俺は売るものを分別するとそれらを抱えて馴染みの店に向かった。


「おーい、オッサンさん、邪魔するぞ」

「邪魔すんなら帰れって言ってんだろガルム。一体何の用だよ」

いつもの挨拶を交わしながら店に入り込み、単刀直入に用件を伝える。

「わりぃわりぃ、新しい依頼入ったから装備整えたくてね」

「装備ィ?下取りもか?」

「そーそー、お偉いさんの護衛することになったからな。多分デカブツは振り回せんだろ?」

そう言いながら室内での戦闘を想定して両手剣やら大剣やらを置いていく。

「ん、貴族様の護衛なら室内が基本か。金属鎧フルプレートアーマーもいらねえだろ?」

「そうだなぁ、多分動きやすさを考えても革鎧に鎖帷子あたりがせいぜいだろ」

なんだかんだ言いつつ理解力の高いオッサンとお古の下取りと新調をしていく。

「おいおい、結構溜め込んでるじゃねえか。他の仕事の事も考えたら幾つかは残していいんじゃねえか?」

「あー、多分だが今度の依頼は長引くからな。依頼終わってまだ新しいの必要になったら用意するわ」

「そうかぁ…長くなるってんならしゃあねえな。オマケしといてやる!」

「ヒュ~!助かるぜ!」

ちなみにおまけは手入れ用の油と使い捨ての布だった。


──────────────────────────────────────────


 翌朝、武具の手入れで夜更かしをした俺は見事に寝坊しギルドまで走っていた。

「マーナさん遅いですよ!」

怒り心頭の美人な受付の姉ちゃんのごもっともな指摘に俺は首を竦めて謝罪の意を示す。

「あー、悪い悪い。ちょいと寝過ごした。時間前だから許せよ」

運んできた乱れ箱を下ろし、縁に座って息を整える。

「時間前ですけど!ちょっと身嗜みを見ますよ!?何かあったら大ごとなんですから!」

わーわー騒ぎながら俺を頭から足までじろじろと見る。悪い所があればそれなりに指摘が入るだろうし

俺としちゃこれで怒られねえってんなら別にいいんだけどな。

「うーん…まあ大丈夫でしょう…多少の武装は傭兵らしい、ですし」

「そいつはよかった。んで、まだちょいと時間あるよな?具体的には俺が朝飯喰う時間くらいは…?」

「はぁ…確かに予定では少しありますが…何かあったかなぁ…」

「ご心配なく、朝食はこちらで用意してあります」

そして突然現れた執事服を来た爺さんがそんな事を言い出す。

「まもなく、お嬢様もこちらに着きますので、マーナガルム様は今しばらくお待ちを」

「あー、了解了解。依頼主自ら来てくれるなら助かるわ」

そして言葉通り、爺さんが現れてすぐ王家の紋章が入った馬車が来るのだった

馬車はそのまま俺達の前で止まり、中から一人の女性が現れる。

太陽の光を受けてキラキラと輝く宝石のような蒼い瞳、サラリと風に靡く白銀の髪、整った目鼻

幾度見ようとも美人としか表現のできない、紛れもなくこの国の第三王女─俺の依頼主。

「お久しぶりです。マーナガルム、私の依頼を受けて頂き、本当にありがとうございます」

「お嬢、こちらこそ、指名依頼して頂きありがとうございます」

「マーナガルム、詳しい話は後でさせてください。まずはこちらへどうぞ」

ぼんやりとしている俺の袖を引っ張る王女に釣られ、俺も馬車へと入っていく。

「手狭で申し訳ありません。すぐに王宮に着きますゆえ、少しばかりお待ちください」

出発します、と外から先ほどの爺さんの声が聞こえるとすぐさま動き出した。


──────────────────────────────────────────


 馬車の中で軽い軽食サンドイッチを俺が食べ終わったのとほぼ同じくらい、馬車が止まった。

降りて周りを見れば、まあ王宮だな。敷地内の中央にひと際デカく目立つ建物が謁見の間と執務室。

周囲には住み込みの文官や軍官の住居と仕事場。入り口近くにある小さいのは謁見を求めに来た奴や、あるいは昔の俺みたく雇われ仕事で来た外部の人間が滞在する建物。そんな建物に紛れて大きさや色で自己主張をしている王家が住む部屋。

一つ一つの小さいが内部は空間魔法とやらで拡張されており、一番小さな建物でも王都の上級宿と同じくらい快適な生活が送れる事を俺は知っている。


「マーナガルム、お待たせしました。私達の家に着きましたよ」

そんな建物の塊を抜けながらお嬢様に案内をされたのは、王宮の中央からかなり離れたところにヒッソリとある金と銀の線が引かれた建物。目立つ大きさではなく見た目的には小ぢんまりとしているが、色々と見てきた俺には分かる。

内部が拡張されててそこらの貴族の屋敷よりでかくなってるぞ…。

「俺は雇われの傭兵っすけど同じ家で寝泊まりしていいんすか、お嬢?」

「ええ、常に守って貰うんですもの、同じ部屋で寝ますよ?」

「同じ部屋…?俺は別にいいっすけど、色々問題があるんじゃないすか?」

未婚の女性─特に貴族など─は結婚やそういった肉体関係すら政治の道具である為、かなり厳しいのが一般的だ。それをお嬢は守って貰う程度の事で同じ部屋に泊めようというのだ。何か問題が起きたらどうするつもりなのか。特に俺の未来。死ぬのはごめんだぞ?


そう思ったのが顔に出たのか、長々とお嬢からありがたい薫陶を与えられた。

曰く、必要だからするのであって、本来であればやはり許されないことらしい。

なんなら馬車を運転してた爺さん(執事長らしい)は最後まで反対したとかなんとか。

とてもよく分かるしまだ反対して欲しいが、諦めたとのことだった。


 「ねえ、マーナガルム、旅の話を聴かせて頂戴な。かの時空を支配する魔女と共に旅をしていたのでしょう?」

「必要な物があれば遠慮なさらずに教えてくださいね?巡り巡って私の為になるのですから、用意いたしますわ」

「この国には慣れまして?この国の出身ではないのでしょう?どこで生れたのですか?」

「そろそろ夕食のお時間ですけど、お好きな食事はありまして?用意させますわ」

お嬢は普段聞かない話を聞くのが楽しいのか、俺の話を聞きたがった。

絶え間なく、俺が何か別の話をする隙も無く、夕食まで話を続けるのだった。


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