5種族会議②
集まったのは、
人族代表 エトワール王国国王 マルグリット•エトワール
エルフ族代表 族長 アルフォンソ
獣人族代表 人狼族族長 ウィレム
ドワーフ族代表 カール
「何事だ?神龍よ。」
「エトワール王よ。緊急事態だ。魔族が再び攻めて来る。」
「どういうことだ。100年前の約定はどうなっておる。」
「最初から奴らは約定など守るつもりはなかったのよ。100年の時間を作り、その間に移住の準備を進めただけのこと。」
「移住だと?まさか魔族はこの地上に再び移り住もうと言うのか?」
「その通りよ。そうなれば力の劣る我々5種族は魔族の好きに使われることとなろう。ある種族は奴隷とされ、ある種族は滅ぼされるであろう。」
「そ、それは本当なのか?何か手はないのか?」獣人族の族長が尋ねる。
「先ほど魔人の1人と、ここにおるルクスが戦った。不可侵、不戦の約定を破ったことから間違いなかろう。そして止める手立てだが、このルクスが鍵となる。ルクスは魔人相手に引き分けたのだ。だからこそこの場に呼んでおる。おぬしらにもルクスのことを話しておかねばならんし、ルクスにも100年前のことを話しておかなければならん。」
それから神龍はこの世界の歴史について語った。元々魔族を含む6種族は地上に住んでいたらしい。その頃は種族間の争いが絶えず起こっていた。そして、その中で魔族だけが他種族より少し強かった。とは言え他の5種族を圧倒するほどではなく、魔族が他種族に侵攻すれば、別の種族が魔族側へ侵攻するなど、争いながらも情勢は均衡を保っていた。また、種族間連合を組んで魔族に対抗することもあった。しかし、争い続けている種族間には常に火種が燻っており、連合を組んでは崩れの繰り返しだった。そして、その均衡も1,000年の争いを経て、ついに崩れる。魔族が人間族を完全に征服した。そして、人間族の子どもの多くが魔族軍に人質として取られ、強制的に人間族の軍を配下に置いた。その勢いのまま次にエルフを、続いてドワーフ、獣人、龍と順に征服された。人間族と同様に各種族の子ども達は魔族領に連れて行かれ人質となった。そこからはやりたい放題、エルフは奴隷とされ魔族の屋敷で召使いとして働かされる。ドワーフや獣人族は魔族のために食糧を献上させられ、魔族の望むまま武器、屋敷、魔族領で道の整備までやらされるようになった。そして魔族に次いで力が強かった龍族は、魔族に疎まれ、何かと理由をつけては、迫害され、遂にはあるはずのない反逆罪を着せられ、多くの龍が処刑された。
この行いに神が怒り、魔族を果ての大地と呼ばれる大陸へ強制転移させた。そこは強靭な魔力壁に囲まれ、脱出不可能となっており、また、魔力濃度の濃さから、強大な魔物達が蔓延る場所だった。
そこに転移させられた魔族は、相当な労苦を強いられたようだ。極寒で食料も乏しく、その環境だけでも、生存は困難を極めた。その上さらに強大な魔物にやられ、魔族はその数を半数まで減らした。
しかし、魔族は数年が経ったころ、覚醒し始めたのだ。果ての大地の魔力濃度に適応し、逆にその魔力を取り込むことで、強大な魔物を蹴散らせるぐらいに強くなった。そして取り込んだ魔力で、天候を操作し、適温へと変える。さらには、魔力を使った土壌改良まで行い、食糧も潤沢になった。遂に、果ての大地は魔族の楽園となったのだ。