表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/41

邂逅

俺の名前はロート・ルクス。


 もう20年も冒険者をやっている。

 先輩冒険者にくっついて回る荷物持ちから始めて、今では立派な()()D級冒険者だ。

 

 子供のころに夢見た、物語に出てくる英雄のような強さがあるとか、特殊な能力があるわけはなく、至って平凡なものだ。


 ちなみに冒険者は登録したてのルーキーがFランク。

 そこからE、Dと上がって行く。


 Dまでくれば平均的な冒険者。その上のCになればそこそこ腕の良い冒険者と言ったところだ。


 Bランクになると一流と言われ、世界に数万人いると言われる全冒険者の数パーセントしかいない。

 

 Aランクともなれば超一流でこのエトワール王国においても十数人しかいない。

 

 国から直接の依頼を受けるようなこともあり、その影響力の大きさから各国は権力、金をエサに貴重な戦力が他国へ拠点を移さないように努めている。


 ただ、A級と言えども、大規模魔法で一軍を壊滅させるなんてことや磨き上げた剣術で一度に何十人と斬り倒すなんてことはできない。


 あくまでも人間としての範疇で、圧倒的に強いというだけだ。昔はそんなことができる化け物じみた冒険者もいたらしいが…

 

 まあそんな話は万年D級の俺には関係ない。とっとと今日の依頼を片付けよう。今日は俺の住んでいるヒラーと言う町の東にあるダンジョンに潜っている。

 ここは俺の行きつけのダンジョンだ。ダンジョンに行きつけも何もないとは思うが、D級の俺が無理なく活動できるレベルのダンジョンだからだ。


 今回は採取依頼で、対象はコルク草。

 コルク草とはダンジョン内にだけ生える植物で、コルクのような実をつけることからその名前がついた。


 実をすりつぶして粉末にして飲めば夜の活力がみなぎるらしく、巷では需要が高まっている。噂では60過ぎたお貴族様でも5回はイケるとか。何がイケるのかは知らんが。

 

 今回も高齢のお貴族様が出した依頼だ。人様の下半身のために頑張るとはなんとも言えない気持ちになるが、まああれだ。余れば俺も使ってみよう。


ゴホン。いや、もちろん今後の市場調査のためだ。


 ちなみに俺は万年D級と揶揄われてはいるが、このあたりでは美人と有名なクレアと結婚している。それに天使な娘サクラたんもパパのことを待っている。さあ早く帰ろうコルク草を依頼数+1を取って。


ふふふ。夜が楽しみだ。そうやってコルク草の探索を再開したところ、前方から若い男の声が聞こえた。

 「あっという間に5階層か。やはりダンジョンなんて簡単なものだ。こんなことに手こずっているなんて、冒険者は無能ばかりなんだな。最近は冒険者も弱くなったと聞くではないか。」


 冒険者を嘲るような言葉にムッとしたが、黙ってそのまま様子を見る。

 「冒険者なんて底辺職につく者はたかが知れていますわ。フリント様と比べれば相手にもならないのは当然かと。」

こちらも若い女の声だ。


 「いやー、フリント様のご活躍は素晴らしいものでしたな。さすがは次代のコラルーニ公爵家を継がれる方だ。」

 もう1人の野太い声が響く。それに続いてガチャガチャとした鎧の音や足音が響く。


 おそらくこの通路の先数十メートル程度の位置にいるのだろう。重装備だとこの先は厳しいと思うが、ああいう連中は下手に刺激しない方が良い。

 

 それにコラルーニ公爵家と言えば、王弟が当主のこのエトワール王国の大貴族だ。下手に関わると平民の首など簡単に飛んでしまうだろう。何かあるにしても俺とは関係のないところでやってもらいたいもんだ。さっさとこの場から離れよう。俺は気配遮断を掛け、そっと距離を取った。


 ちなみに俺は素早さに特化しており、忍足、気配遮断などのスキルも保持している。これらの能力だけでD級冒険者になれたと言っても良い。剣技や力、魔法なんかは軒並みE級以下だ。

どうやって相手に気づかれずに接近し、先制攻撃をくらわすかという、自分で言って冴えないが、こと冒険者においてはこの能力こそが長生きの秘訣と考えている。経験からな。 


 やっかいな遭遇もあったが、コルク草探しを終わらせてさっさと家に帰ろう。


 採取の途中何度か魔物が出たが、気配遮断でやり過ごす。もっと高位の魔物となると気づかれるだろうが、ここに出るレベルの魔物なら問題ない。


 そうして一階層また一階層と進んで、8階層へ続く階段を下り、角を曲がった時だった。前方に人の気配を感じ、身をひそめる。気配は3つ、声からして先ほどの連中だろう。会話が耳に入ってくる。

 

 「そろそろ良いだろう。」男が言った。


 「そうね。バカの相手も疲れたしね。」女が応える。


「お前たち何を言ってるんだ。さっさと先にっ…ぐっ…かはっ…」

 公爵家の息子が何かを言おうとして言葉が途切れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ