オタク、憧れの推しと会話する
1/1 台詞を修正しました
「大丈夫かい? 嬢ちゃんたち」
キラキラと輝く銀髪をかき上げ、いい胸のお姉さんは私たちへ語り掛ける。その姿は一仕事終えた、オトナな女って気がして超かっこいい!
改めて、憧れの人を間近に見上げる。
カッコよくて、美しくて、強くて、おっぱい大きくて。
「えっと……、あ、あの……、その……」
急に、恐怖やら、興奮やらで抑えられていた感情が胸の内にこみ上げてきた。
「あ? 何だ?」
今、彼女に言わなきゃいけないことはたくさんある。でも、なんかいろいろ高まり過ぎて、上手く言葉にならない。
ええっと、CM見てたときからファンで……! 一目見たときから憧れててまして……! 助けてくださってありがとうございますで……!
推しとの握手会のときみたいに、言おうとしてることが頭の中で渋滞して口から出てこない。でも、待たせてるし、とにかく言うべきこと言わなきゃ!
「あ、あの!!」
「だから、何だってんだ」
「憑依させてください!!!!!」
「……、は?」
私の欲望マックスの発言に、この場の空気は凍り付く。
憧れの人からの視線も、陽彩からの視線も冷たい。
し、しまったぁああああ! 最初に言わなきゃいけないのはお礼でしょうが! 言わなきゃいけないことに引きずられ過ぎて、つい欲望が……!
もう! 私のバカ!!
なんとか、挽回しなくては。できなくても、挽回しなくては!!!!
「な! なんでも……!! ない……、です……」
まともに顔を見上げられず、視線は右に左に泳ぎまくる。
「その――」
お姉さんはそんな私の顎に片手を添え、クイっと顔を引き上げ、
「人と話すときは相手の胸じゃなくて、目を見て話すもんだぜ。子猫ちゃん」
私の瞳の奥の奥まで見据えて、そう言った。
こここ、子猫ちゃん!?
そんなこと現実で言われたことないし、憧れの人に顎クイされながらそんなしっとりと落ち着いた低いイケボで呟かれたら……!
肋骨を突き抜けそうなほどに心臓が激しく動き、心を鷲掴みにされているように胸がキュンキュンしっぱなし。全身が燃えているかと思うくらい身体は火照り、耳たぶまで真っ赤になってるのが自分でもわかる。
お姉さんと視線が繋がったまま、数秒――しかし永遠にも感じられるほどの間、私は深呼吸をして呼吸を整える。
煙たくて苦い、彼女の香り。
でも、嫌じゃない。どことなく落ち着く匂い。
よし……!
「ありがとうございました!」
「なに、当然のことさ。オレも仕事みたいなもんだしな。気にすんなって」
お姉さんは優しく微笑む。
「私、お姉さんにCMで見たときから憧れてました!!」
「なッ……! 気づかれてる!?」
でも私の言葉を耳にした瞬間、お姉さんは驚愕の表情を浮かべる。
「あの仕立て屋……! このコートがあればバレないんじゃなかったのか!? おいお前、どうしてオレがあのCMに出てるってわかった?」
私の顎を持ったまま視線鋭く、ぐぐっと顔を寄せ問い詰めてくるお姉さん。
胸のドキドキは更に激しくなってきたけど多分今はそんな場合じゃない。
それに、理由がしょーもなさすぎて、答えるのが恥ずかしい。というか、普通に怒られそう……。
「あの、怒らないでくださいね……?」
「情報の出所によっては、怒るだけじゃ済まねえかもな」
私は憧れの人に顎クイされながら、もう一方の腕で額に銃を突きつけられてる。
もしかしなくても触れてはいけない話題だったのかもしれない。
私はごっくんと唾を飲み込み、意を決して言う。
「お、おっぱいです!!」
「はぁ?」
陽彩、絶句。お姉さんもポカン。
「CMでみたお姉さんのすっごい理想形なおっぱいと、お姉さんのおっぱいがまるまる同じだったもので、そうかなぁって思ってました!!」
またも、沈黙を招いてしまった。
今回は自業自得というか、至極当然な気がするけど。
お姉さんは俯き、肩を震わせている。
まずい。絶対怒らせてしまったぁ……。まぁ、嘘ついてるって思われてもしょうがないような理由だし。
陽彩に助けての視線を送ってみるも、彼女は黙って首を横に振るのみ。
そしてお姉さんはついに耐えきれなくなり、吹き出した。
「……プッ。クックック……! ハーハッハ! あー、こりゃケッサクだ。なんだそりゃ! いくらなんでも胸、好き過ぎだろ! そんなに見たいなら見せてやるぜ? 別に減るもんじゃねーしな」
お姉さんは笑いながら、ほれほれといった感じでその豊満な胸を私の方へ差し出してくれる。
夢にまで見た楽園を目の前にして、もう死んでもいいかもしれない。
「それに、なんだっけ? 『憑依させろ』だっけか?
そんなん聞いたことないし、今までオレがあった中でもこんなに自分の癖に正直なヤツは中々いないぜ?」
「それじゃあ憑依しても!!」
「それとこれとは話が別だ」
お姉さんは私の台詞を食い気味に、きっぱりと断った。
「クソ野郎が帰れとお怒りなんでな、オレもそろそろ行かねーといけねぇ。クソ野郎とはいえ、アイツもオレの大事な相棒だ」
「そう、なんですね……」
お姉さんが行ってしまう。
「また、会えますか?」
「おいおい、そんな今生の別れみたいな顔すんなって。あんたがこの世界に飛び込んだときの初心な性癖を忘れなきゃ、またどっかで会えるさ」
じゃあな、とお姉さんは別れを告げて去っていく。
そういえば!
「お名前! 教えてもらってもいいですか?」
「カトラス。オレの名前はカトラスだ。それじゃあな。アディオス、子猫ちゃん」
そう言ううちにカトラスさんは手を振って去っていった。
「行っちゃった」
カトラスさんか……! カッコいい人だったなぁ。
『子猫ちゃん』なんて呼んでもらえたし、おっぱいも堪能させていただけたし。それに、また会おうだって! また会えば、もっといっぱい話ができると思うし、あのおっぱいとかもっと堪能できるかもなぁ!
こりゃ、あの人にまた会うまで、絶対にやめられないぞ……!
それにあの人にまた会えるように、もっと癖を磨かなくては!
「嵐のような人でしたね」
「ほんと、実際見てちょっとびっくりだけど、もっと憧れちゃったな」
「まったく、荒々しいヤツには困ったもんだ」
「……ん!?」
その声を聞いて、私と陽彩は顔を見合わせる。
明らかに今まで居なかった謎の声。
「やぁ! こんにちは、お嬢さん」
振り向くとそこには、大学生くらいに見える男の人。
初対面で馴れ馴れしく『お嬢さん』なんて呼ばれたもんだから、あんまり気分はよくない。でもよく見れば、日曜日の朝に主役をやってそうなルックス。
まさか、新手の初心者狩り……?
そう思い、陽彩と目配せをして、互いに警戒しあう。
「何ですか、あなた?」
「僕の名前はキバ。始めたてのプレイヤーをサポートするAIキャラさ。短い間だけどよろしくね」
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