憧れの女性《ひと》、おっぱいで無双する
12/11 戦闘シーンの一部を改稿しました。
3/11 一部の数値を修正しました。
1/1 台詞を修正しました。
「誰の女に手ぇ出してんだって聞いてんだよ!」
白銀の髪、褐色の肌、二メートルに迫る長身。そして私の視線を掴んで離さない、豊満でものすっごく形の綺麗な魅惑のおっぱい。
私と陽彩の窮地に乱入してきたのはなんと、このゲームのCMに出ている、私の憧れの人だった。
「そいつらはオレの女だ」
このゲームを始めたキッカケの人。あの好き勝手されたヒロインの姿にそっくりな人。この世界で一度はお目にかかりたかった人。
「それを分かって、お前らは手出ししてんのか?」
そんな人が今、私の目の前にいて、しかもどうしてか分からないけど助けに来てくれた。
私は嬉しくなって、安心して、感動してしまって、いろんなものが胸にこみ上げ、今にも叫んでしまいそうだった。
しかし、この場で高まって感極まってるのは私だけ。
リーダー格を踏み倒されたマッチョ連中どもは呆気にとられ、ただポカンと口を開けていた。
それになんだか、有名人を目の前にしてるのに気づいているのは私だけって感じもする。
「だ、誰だ、お前は!? その脚をとっとと俺の上からどけて、部外者はあっちいってろや!!」
その直感は合ってるようで、マッチョ男どものリーダー格の男は彼女のことを知らないような反応を見せる。
「部外者? お前らは自分たちがちょっかいかけた女の彼女を部外者と呼ばわりするのか?」
マッチョ男どものリーダー格よりも遥かに迫力のある、ドスの効いた低い声。心の奥にズンとのしかかってくるようで、聞いていてとても心地がいい。
しかし、その声色から紡がれる内容はとても落ち着いて聞いていられるものではない。なんたってめちゃめちゃ憧れてた人が私たちのことを『オレの女』なんて言うのだから。
「オレの女? 女が女を好きになんのか?」
「お生憎様、オレは両刀だ。好みの奴ならどっちでも構わない」
「だから何だ? そんなに言うんなら、証明してもらおうか。なあ、あんたのツレってんならコイツらの名前くらい言えるだろうな?」
「知らねぇな」
えっ……?
この場にいる全員が固まる。私も、陽彩も、あまつさえチンピラ供でさえ、予想だにしていなかった答えに返す言葉を失っていた。
確かに、私はさっきゲームを始めたばかりの超初心者。そしてあの人はこのゲームの顔とも言えるスーパースター。接点も無ければ彼女が私のことを知るわけもないのだけれど、そう断言され現実を突きつけられてしまうと少し凹む。
しかし、自らもたらした静寂をあの人は予想だにしない言葉で破った。
「この街はオレの街だ。まぁ、もうすぐお別れだがな。とはいえ、オレの街にいる女は全員オレの女だ!」
またまた飛び出す彼女のぶっ飛んだ台詞に、相変わらず誰も言葉が出ない。
『この街にいる女は全員自分の女』だなんて、話のスケールがデカすぎる。そんなことを言うなんて、酔っ払いかヤリまくりな人のどっちかだろう。
それでもあの人の力強い表情を見るに、その言葉に嘘偽りないと思えた。ちゃんと助けてもらえそうだって、そう思えた。
それに加えて、ちゃんと私もその女としてカウントに入れてもらえていた。その事実が堪らなく嬉しかった。
「他人の女に手出ししたらどうなるか、分かってんだろうな?」
「……上等だ! やってやんよ!!」
その声を合図に一斉に構えを取るマッチョたち。
「そうこなくちゃあ……、なッ!」
「ぐふっ!」
彼女は踏みつけているリーダー格の脇腹を蹴飛ばし、その巨体を軽々と脇へと転がした。
「楽しませてくれよ?」
リーダー格は一斉に駆け寄った仲間たちに支えらえれて、少しよろめきながら立ちあがる。
「どこの馬の骨は知らねえが、俺らに喧嘩売ったこと後悔させてやんよ」
「威勢は十分みたいだな。嫌いじゃないぜ? そういうの」
「アニキ、そっちの女たちは……?」
「そんなん後だ!!! 何としてもコイツをぶっ潰す!!!!」
煽られてブチ切れたリーダー格の狙いは、完全に私たちから銀髪さんへ。
「ほら。怪我したくなきゃ、嬢ちゃんたちは隠れてな」
彼女は私たちにそう言って脇にある物陰を顎でさす。
私はそれに無言で頷き、陽彩と一緒にその陰に隠れて彼女を見守る。
「何を庇いながら戦うのはオレの専門外でな。これで心置きなく戦えるってもんだ」
「おい、目! 【窃視】のスキルで早くコイツのステータスを見やがれ!」
リーダー格は仲間の一人を『目』と呼び、指示を出す。
「そ、それが……、アニキ。さっきから見てるんですが、妨害でもされてるみたいになぜか名前も【性癖】も見えないんです。見えるのは性癖力だけで、しかも……」
「なんだよ!」
「この女、性癖力が50000を超えてるんす!!! これは流石に逃げた方が……」
「なっ……!」
50000!? 私の性癖力が5000だから……、この人やっぱりすごい……!
「なんかの間違いじゃねーのか……? いや、でも俺たちにはボスに伝授されたとっておきのテンプレ【性癖】構成がある! それに人数分を合計すれば性癖力はこっちが上だ!」
「うぉおお!!」
屈強な男どもが、銀髪のお姉さんめがけて襲いかかる。
まず二人、彼女の正面に躍り出て、騒がしげな叫びと共に殴らんと振りかぶる。
しかし彼女は動じない。それどころか、「そうこなくちゃ」と心待ちにした瞬間を楽しんでいるようにさえ見える。
一人が先走って拳を振るう。
瞬時に彼女はステップで軽く回避。真横に躱され、マッチョのパンチは空を切る。
パンチを躱され生じた隙に、彼女は一切の躊躇なくパンチを差し込む。
その拳はマッチョ男の顔面を捉え、たった一撃でそいつを沈めてみせた。
もう一人の男が迫り、身体めがけてパンチを繰り出す。
が、彼女は微動だにしなかった。『動かざること山の如く』といった感じでドッシリと身構え、不敵に笑うだけ。
「舐めんじゃねーぞ!」
男の勢いに任せた全力のフルスイング。当たれば大きなダメージを喰らってしまいそうな拳。
その攻撃を彼女は躱すことなく、驚くべきことにむしろ自らの大きな胸を突き出すようにして自分から当たりにいったのだ。
拳を受け止め、美しい巨乳はぶにゅりとひしゃげてしまう。
そんな状況にも関わらず、彼女は表情一つ変えずに不敵な笑みを浮かべたまま。
気づけば彼女の頭上にはHPを表すライフバーが浮かんでいたが、攻撃を受けたにも関わらずそれは一切減少していなかった。
そして、彼女は胸にめり込んだ腕をいともたやすく掴んで捻り上げ、男を無力化してみせる。
「んだよ、話と違って弱すぎる。スキル構成的に当たりかと思ったが、どうやらこいつらも違げぇらしい。
ったく、どいつもこいつも同じ【性癖】ばっかりで個性がない上に、やることも変わらねえから紛らわしいんだよ」
「クソッ! あの馬鹿どもが……! なんなんだよ一体!?」
「知らねぇようなら教えてやるよ。
『デカイ胸に攻撃は通じない』、それがこの世界の常識。デカ乳にはな、夢と希望と防御力がたっぷりと詰まってんだ。だから生半可な攻撃じゃ傷一つ付かねぇ。それが【巨乳】のスキルってもんだ」
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【性癖】発動:【巨乳】
『胸のサイズに応じて、胸部へ与えられるダメージを軽減する』
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「んだと! だったら、俺たちの真の実力を見せてやるわ!」
彼女の台詞に噛みつくリーダー格。
その声と合図に、さっき私たちにしたのと同じように、残ったメンバーが彼女を取り囲む。
「結局、群れるしか能がねぇみたいだな」
「うるせぇ!」
マッチョどもはリーダー格の男とアイコンタクトを取りつつ、構えを取りながら彼女に襲い掛かるタイミングを計っている。
まさに危機的状況。
しかしその光景も目の当たりにしても、彼女は全く動じない。それどころかかかってこいとでも言わんばかりに、余裕そうな表情を絶やさない。
「いつまでもそんな表情でいられると思うな! どんな奴も囲んでリンチすりゃあいいんだよ!!」
「そっちがその気だってんなら、オレもとっておき。見せてやるよ」
彼女はその言葉一つでマッチョどもを牽制し、両者は見合ったまま動かない。
ピンと張り詰める空気。
その中で微かにリーダー格のつま先が、動く。
「やっちまえ!!」
静寂を破り、勢いのある足音が響いた。
前後左右、全ての方向から一斉に、マッチョ男どもが彼女に向かって飛びかかる。
「危ない!!!」
私は思わず叫んでいた。
ヒーローショーで、怪人がヒーローに不意打ちを繰り出した瞬間を眺める子供のように。
「安心しな嬢ちゃん。これがオレのとっておきだッ!!!」
お姉さんが奴らに放ったとっておき。
「なッ……!?」
「超絶技! 『絶対巨乳凍結』!!」
そのとっておきとは、――自らの胸を強調すること。
自分自身をギュっと抱きしめた両腕に挟まれ圧迫された彼女の胸。それによりタンクトップ越しでも分かる美しい理想形は、むにっと縦長楕円に形を変え、見た者にさらに柔らかさと大きさを感じさせるおっぱいへと進化した。
もはや、視覚に対する暴力。
あんな巨乳フェチに対する大サービスみたいなことをされたら、全力でおっぱい見ちゃうに決まってるじゃん!!
釘付けにされてしまった視線は彼女の胸から全く離すことができず、そして――
身体が全く動かない。
視線だけじゃなく、腕が、足が、全身が、石のように固まってしまっている。
彼女の胸越しに見えるマッチョ男も動けないのは同じらしく、腕を振りかぶったままその場で固まっている。
それだけじゃない。
彼女に襲い掛かったマッチョ連中でさえ攻撃する寸前の体勢のまま、何一つ身動きを取れないでいた。
ど、どうなってるの……?
「デカすぎる乳は見る者全てを釘付けにする。【巨乳】を極めし者がたどり着くスキルの神髄さ。オレほどの胸にもなれば胸派なら誰でも関係なく魅了できて、その動きを止められるってわけ」
被ダメカットに加えて、足止め効果まである。【巨乳】スキルって凄い……!
「お前らだって、本当はこういうのが好きなんだろ? その証拠にてめぇらみんな、オレの胸に魅了されてんだ。本当はデカい胸が好きだってここにいる全員が思ってんのさ。
好きでもない【性癖】を装備するくらいなら、自分の癖に素直に生きた方が楽しいぜ? 少なくとも、この世界じゃな」
はい、私も大好きです。大きなおっぱい。
「そんなてめぇらに、もっとサービスだ」
そう言って彼女は自らを抱きしめた腕をお腹の括れに這わせて、腰元のホットパンツへと下してゆく。
えっ……!? サービスって! いや、それ以上は!! 見たいけどセンシティブ!!! まさか!? まさか!!
「キチンと……受け取りやがれ!!!」
突然に勢いよく、下りていた腕が上がる。
ばさりとなびく赤コート。
瞬間、耳をつんざくような破裂音が二つ。
音と同時に彼女の目の前にいた男が二人、その場に倒れた。
「餞別変わりの鉛玉さ」
すらっと伸びるお姉さんの指の中には煙を上げる二丁の拳銃。
彼女は身体を真後ろへと捻って銃を構え直し、背後にいるマッチョ二人に狙いを定め引き金を引く。
「アディオス」
銃口から飛び出した二発の弾丸は動かぬ的に向かって一直線に飛んでゆき、正確にその眉間をぶち抜いて、彼らのHPを消滅させた。
「これで終わり。嬢ちゃんたち、もう出てきていいぜ」
なんとか助かったぁ……! おっ、いつの間にかに身体も自由になってる。
でも、何かが引っかかる。まだ、何かが足りないような……。
「ありがとうござ……」
そう言いかけた私の視界に、この場から走り去ってゆく後ろ姿が映りこむ。
あれは……、さっき『目』って呼ばれてた人!
「あっ! あの人、逃げていってます!!」
私と同じことに気づいた陽彩の声につられて、銀髪のお姉さんはその方を向く。
「なんだ、一人足りねぇと思ったらあんなとこに居やがったのか。オレの胸で魅了されないとは。小さい方が好みなのか、はたまたケツ派だったのか。
まぁ、あんな奴の趣味なんざどうでもいいが、オレはケツの方が好きだけどな」
お姉さんがお尻派ということを暴露してるうちに、『目』と呼ばれた男は逃げてゆく。しかし彼女はお構いなしにコートの内ポケットを探り、白い箱を取り出して振っている。
「ん? 空かと思ったら一本入ってるじゃねーか! どうやらまだ、オレもツイてるらしい」
箱を傾けてお姉さんは中身を取り出し、白い棒状のモノを咥えた。
そして初心者狩りの残党が逃げていってるこの状況で、お姉さんはポケットから出したライターを口元に寄せ、咥えてるものに火をつけた。
「た、煙草!? こんなときにゆっくり吸ってたら、逃げられちゃい――」
「こんなときだからこそ吸うのさ。その方がイライラも収まって、頭もスッキリすんだよ」
そうは言っても、逃げ出した奴はもう二、三十メートルは離れている。
「でも煙草を咥えながらで、この距離の相手を打ち抜くのは厳しいんじゃ……?」
「まぁ、心配すんなって。オレはな、むしろこうしてる方が調子いいんだぜ」
そう言うが、男はどんどん遠ざかってゆく。
お姉さんは大きく一息つき、目の前が真っ白く曇るほどに紫煙を吐き出す。
そして、
「それが【愛煙家】ってもんだ」
一言呟き、引き金を引く。
弾丸が漂う煙をその身に纏い、彗星の尾のように尾を引きながら、直線ではなく弧を描くようなあり得ない軌道で標的に向かってゆく。
「凄技【スモーキンシューティング】。オレが煙草をやってる間はいかなる弾丸も――」
彼女が放ったその一撃は正確に男を貫き、
「外さねぇ」
HPを削りきり、そいつをポリゴン片へと変える。
宣言通り、標的に弾丸を当てたお姉さんは用済みの拳銃を腰元のホルスターへ。
「す、すごい……!」
彼女はそれと入れ替えるようにして、ポケットから何かを取り出した。
その手の中にキラリと光る、銀の小瓶のようなもの。
「今度こそ、これで終わりだ」
銀の小瓶の蓋を開けつつ、お姉さんは一服。手に持つ煙草をくゆらせながら、空に向かって煙を吐き出す。
「それなりに楽しかったぜ? 退屈しのぎ、くらいにはな」
紫煙が風に流され晴れる頃、彼女は煙草を小瓶に押し込み、その蓋をパチリと閉めた。
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