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これは性癖《フェチ》で戦うゲームです

ロードが完了しました。

これよりオープニングPVを開始します。


 Eros(エロース).inc presents


 その文字と共に映像が始まる。


「フルダイブ型VRMMO新時代、到来」


 ――このゲームにおいて、もっとも重要なのは『性癖』である。


 そのテロップが表示されると、いつの間にか私はコロッセオのような円形闘技場の観客席にいた。

 降り注ぐ強烈な日差し、割れんばかりの声援、観客たちの熱量。その全てを耳や肌を通じて現実のように感じられる。


 闘技場の中、バトルフィールドと呼ぶべき場所には赤と青の陣営に分かれて二人の女の人が向かい合い、それぞれの後ろには互いに男が一人ずつ立っている。

 多分、同じ陣営にいる男女はペアなんだろう。


 赤の方にいる女性は綺麗な顔立ちで、銀縁眼鏡のよく似合うちょっと幸の薄そうな感じの人。しかし、首から下は物凄くこの場にそぐわない、足首までをすっぽり覆う超ロング丈のコートを羽織っていた。

 さらに特徴的なのは彼女の首元。そこにはペットが着けるような真っ赤な首輪、それに鎖が。その鎖は彼女の後ろにいる金髪ロン毛ヨレヨレスーツのホスト崩れのような男が握っている。


 反対の青い方には真っ白なミニスカセーラー服を身に(まと)い、髪を後ろで二つ結びにした、笑顔の眩しいクラスのアイドルのような女の子が立っていた。

 そんな彼女の後ろには大学生くらいの男が。遠くて顔はあまり見えないけど醸し出してる雰囲気は爽やかな2.5次元系イケメンといったところだろうか。


 にしても、私は一体何を見せられているんだろう。そう思ってるとき、青のイケメンが口を開く。


「もう彼女も僕も準備はできている。そろそろ始めようじゃないか。性癖決闘(フェチバトル)を!」


 よく分からない単語が飛び出してきた。

 性癖決闘(フェチバトル)ってなんだよ……?


「望むところだ!」 


性癖決闘(フェチバトル)、スタート!」


 二人が同時に叫ぶと、目の前に半透明のウィンドウが浮かびあがってくる。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


性癖決闘(フェチバトル)

『それは、性癖が武器になる戦い――』


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 性癖が武器に?


「さぁブス。脱げ(キャストオフ)


 私の前からそのウィンドウが消えると、赤い方の男がそう言って、フィールドにコート姿の女性を蹴りだした。女の人の腰のあたりをドンと。男の蹴りには優しさの欠片もない。見た目からしてなんか嫌な感じがしていたが、それに違わずなんてひどいやつだろう。


「こんなところで……、ですか……? いっぱい、み、見られてしまいますよぉ……」


「おい! 返事は『ワン!』か、『はい、ご主人様』だろぉがよ!」


「はい、ご主人様ぁ!」


 へ、変態だ……。

 そのやり取りを満更でもなさそうな顔でしているコートの女性を見て、私はそう思った。


性癖技(スキルアーツ)『キャストオフ』!」


 眼鏡の女性は声高にそう叫ぶと、コートを恥じらいながらしゅるりと脱ぎ去る。その下から現れたのは、なんと首輪と同じ真っ赤なビキニ、ただそれだけ。本当に彼女はそれしか身に着けておらず、そのビキニが覆うのは顔に似合わずたわわに実ったグラマラスな果実。


「どうだ?」


「最ッ高に……、興奮しますッ!!!」


 そう言い終わると同時に、彼女の足元から赤いオーラのようなエフェクトが舞い上がった。

 それと同時に彼女は目にも留まらぬ速さで駆けだす。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


性癖(スキル)】:【露出癖】発動

『身に着けている装備が少ないほど、攻撃力・移動速度上昇〔大〕』


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 脱ぐとバフがかかるのか……露出癖。ちょっと戸惑いはあるものの、なんとなくスキル効果は癖のイメージに合っている感じはする。


 そう思いウィンドウから視線をフィールドに戻した、その一瞬。

 そのほんの少しの間で、眼鏡の彼女が十メートル以上の距離を詰め、セーラー服の彼女に拳を振るう。


「うらぁ!」


「ぐぅッ!」


 セーラーの彼女は両手を構えてガード。しかし、その拳は無慈悲にも防御を突き抜け、彼女の頬を打つ。

 心地の良い打撃音がフィールドに響き、セーラーの彼女は大きく吹き飛ばされ、そのまま闘技場の壁に打ち付けられてしまう。その衝撃で硬そうな石壁に放射状の大きなヒビ割れが走った。


 普通の人間を遥かに上回る移動速度に攻撃力。それは間違いなくスキルの賜物だろう。あの露出狂(へんたい)やべーなおい。


 今の攻撃でセーラー服の彼女の頭上に浮かんでいるバーが2割ほど減った。


「そんなもんか。もうちょいHP削れると思ったがな」


「舐めてもらっては困る。なんたってセーラー服に勝る衣装はないからな!」


 青の方の爽やかな彼は高らかにそう言い放ったが、いったいそれはどういう論理だ。相手のホスト崩れも当然のようにその言葉を受け入れるが、明らかに会話が噛み合ってないだろう。

 私はそう思わずにはいられなかったが、その疑問はすぐに解けた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


性癖(スキル)】:【セーラー服】

『セーラー服を装備時、受けるダメージを軽減』


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 なるほど、服に関するフェチは防御系の効果。あの青い方の人はセーラー服が好きだから、ダメージカットというわけみたい。

 じゃあ、そういうスキルがあるなら、ブルマとかスモッグとかえっちな水着もこの世界じゃ、立派な防具なんだろうな。見た目と防御性能は全く噛み合ってないだろうけど。


 ちなみに私はブレザー派だ。セーラー服をパツンパツンに張らせる巨乳ちゃんも捨てがたいが、ブレザーの硬い生地ではち切れんばかりの胸を無理やり抑え込んでいる絵面の方が好きだからね。


 片や真っ赤なビキニに、片やセーラー服。冷静に考えると真剣勝負中とは思えない服装がシュールでちょっと謎の笑いがこみ上げてくる。でも、好きな格好で戦えるって考えるとそれはそれで魅力的だ。


「大丈夫?」


「はい、何も問題ありません!」


 かなりのダメージがあるように思えたが、呼びかけにセーラー服の女の子は眩しい笑顔で答える。青陣営もまだまだやる気の火は消えていないようだった。


 しかし、


 ――ヒュッ


 突如、場内に響く風切り音。

 それとほぼ同時に首元を抑え、もがくセーラーの彼女。

 見れば、彼女の首に何かが巻きついている。


性癖技(スキルアーツ)『チェーンチョーキング』!』


 それは鎖。

 露出狂の彼女は自分の首輪に繋がっていたチェーンを相手の首に巻き付けたのだ!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


性癖(スキル)】:【首絞め】発動

『首絞めによるダメージが上昇』


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「俺はな、こういう(プレイ)が大好きなんだよ!」


 そう言い放つホスト崩れ。

 時間とともに、セーラーの彼女の頭上のHPゲージがゴリゴリと削れゆく。


 しかし、イケメンは余裕たっぷりにこう返す。


「そうか、そうか。それは結構。なら、俺も大好きなものを見せてやるよ!」


「なに?」


 驚くホスト崩れ。


「いけるかい?」


「は……、はい!」


性癖技(スキルアーツ)『変態』!!」


 イケメンは恥ずかしげもなくその言葉を堂々と言い放った。それを合図に、セーラー服の彼女は右腕を首元の鎖からだらりと下ろした。

 彼女の右手の皮膚の下で何かが蠢く。その動きは皮膚を突き破ろうとしているかの如く。ピシッっとヒビの入るような音が響き、彼女の右手の皮膚が小さく裂け、亀裂の中に黄緑色の何かが覗いた。


「ウォオオオオ!!!!」


 彼女は唸るように叫ぶ。


 すると、


 ――グァッパァ!!!


 彼女の右手が完全に裂け、カマキリの腕に。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 【性癖スキル】:【変態】発動

 『身体の一部を変態させる』


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 スキルの発動によって第二形態とも呼ぶべき姿に変わった女の子。可愛げのある顔にカマキリの腕という見る人が見れば嫌悪感を覚えてしまうようなその姿に、私は驚きつつも胸が躍った。


 常識的に考えて、腕が異形に変態するなんてことは一般的なゲームでプレイヤーができることの範疇を超えている。しかしながらそれが可能であるということは、私の性癖である憑依だって問題なくできるはず。


 まあ、冷静に考えてみると『露出首絞めお姉さん』に『セーラー服の片腕カマキリ変態JK』って性癖は互いに業が深すぎる気もする。もっと言えば、そんな両者の戦いをPVに採用した開発陣も相当にヤバい。

 でも私にとっては、そのヤバさがこのゲームに対する期待感を膨らませてくれているのだ。


 セーラー服の彼女は腕の大鎌で首元に繋がるチェーンをバラバラに斬り刻む。


 一連の光景を目の当たりにした私は、ただ見入っていた。


「俺はこういう身体の一部が異形の子が大好きなのさ」


「物好きめ。なら、お前の好きな性癖(モノ)と俺の好きな性癖(モノ)どっちが強ぇか勝負じゃあ!」


「望むところだ」


 女二人が鎌と拳を構え、互いの出方を睨み合い。

 観客たちは息を呑み、静寂が闘技場を包む。


 風が土埃を巻き上げて、二人の間を駆け抜けた。


「いけ! ブス!!」


「いくよ!!」


 その声とともに、彼女たちは駆け出した!


「はぁあああああ!!!!!!!」


「うぉおおおおお!!!!!!!」


 空気を揺るがすほどの二人の雄叫び。

 鎌と拳がぶつかり合う、その瞬間――




 突如、ブラックアウト。




 超いいところで目の前から景色が消え、激しい効果音と共にデカデカと、目の前にキャッチコピーとゲームロゴが現れたのだった。


 ――あなたの性癖は武器になる

 ――『フェティシズム・フロンティア・オンライン』

引き続きキャラエディットに移行します。

しばらくお待ちください……。


4/6 性癖技に関する調整を行いました

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