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「デンジャラスなロリゾンビィ……!」

8/1 タピオカについて追記しました

8/13 共闘の性癖力について追記しました!

 戦闘はクロちゃんの【性癖(スキル)】のおかげで私たちの勝利に終わった。


 でも、クロちゃんの様子がどうにも変なんだ。


 クロちゃんの姿勢はあの舎弟を倒したときから全く変わっていなかった。敵の喉に噛みつく不自然な姿勢を保ったまま、まるで超精巧なフィギュアのように微動だにしない。


 私も私で動けない。というか、身体が動いてくれない。

 心の中では「やったね! 凄いよ!!」って明るく声をかけたい。だけど、口が動かない、声が出ない。喉に息がつっかえて呼吸すらうまくできない。


 ヤバい。


 陽彩(ひいろ)の意識があれば身体を動かしてくれそうなものの、さっき憑依し直したときに彼女の精神を完全に制圧してしまったのが仇となり、彼女は干渉できないまま。


 路地裏には動かない一人と動けない一人がいるだけ。私たちは互いに声上げることもなく、ただ静寂だけがこの場を包む。


 マジでヤバい。


 息苦しさが増してゆく。息がうまくできなせいもあるけど、得体のしれない居心地の悪さのせいもある。


 正直に言おう。ビビってるんだ、私は。目の前にいる『本物』のゾンビに。

 お気に入りのゲーム実況シリーズでもホラゲだけは避けるくらいに心霊系がダメな私にとっては、目の前の光景は刺激が強すぎる。

 ヴァーチャルなんだから当然、目に見えるものは全て作りもの。でも、体感する方にとっては果てしなく現実(リアル)なんだ。その血液の通っていない真っ白な肌も、人間の可動域を超えて捩れている全身の関節も、瞳孔の開き切った目も。


 初めてのお化け屋敷が怖すぎて泣きじゃくり、スタッフの温情で途中退出した五歳の私よ。それ以降君は心霊系を避けて生きるけど、それでもその比じゃないくらいの恐怖体験と出会うから覚悟するんだよ。


 冷たい、手のひらが。ジトっとした路地の石畳が手に気持ち悪い。


 相変わらずクロちゃんは動かない。私も動けない。

 凍り付いたような間。


 そんなとき、生暖かい風が私の頬を撫で、陽が陰りだす。


 路地に黒い雲が影を落とす。

 固まっていたクロちゃんが不気味な呻き声とともに、ゆっくりと、首を回してこっちに振り向いた。

 とあるアニメ制作スタジオが多用する、映像でしかできないような首の角度。しかし、今のクロちゃんの首の角度はそれすら超えている。


 そして時間が、動きだす。


「う゛ばぁう゛!!」


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


性癖(スキル)】:【拘束(バインド)】発動

『装備品で対象を縛り付けることが可能になる』


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 唐突にクロちゃんが呻く。そして彼女の身体を覆っていた包帯が動き出す。

 彼女の手足から伸びる包帯は壁や地面を蛇のように這いずり回り、私のすぐ横にあった街灯や民家の雨どいに絡みついた。


 ――バキッ!!


「うぇっ!?」


 巻きついた包帯がグシャりと雨どいを潰し、大きな音をたて街灯も包帯に引き倒される。

 あまりにも衝撃的な光景に間抜けな声が出てでしまう。


 そんなとき、


「う゛う゛ッ……。ハズ、シタ……」


 えっ……?


 呻き声のノイズの中に、私にはクロちゃんが確かにそう呟いたように聞こえた。

 雨どいと街灯を破壊した包帯は、シュルシュルとクロちゃんのもとへ。


 クロちゃんはゆらりと振り向き、私と向き合う。


 外した……?!


 見上げてみると、私の頭の上には再びHPゲージの表示が。それすなわち、性癖決闘(フェチバトル)始まりの合図。

 この場にいるのは私とクロちゃんだけ。ということは……!


「く、クロちゃん? どうしたの……?」


「あ゛あ゛……! タ……、あ゛……」


 ヒタリ、ヒタリ。


 ゆっくりと歩いてくる彼女の頭の上にもHPゲージが表示されている。ただし、その残量はさっきと変わらず空っぽのまま。


 ――恐怖。


 歩いてくるクロちゃんの姿があの日見たお化け屋敷の化け物と重なって、心の奥底からその感情を湧き上がらせる。そのせいで鼓動は乱れ、怖すぎて泣きそうで吐きそう……。


「スケ……、う゛……、がぁっ……!!」


 呻き声を合図に包帯が私に向かって、来る!

 高速の包帯は空気を切り裂き、ヒュっと甲高い音を鳴らす。


 回避は無意識だった。私はいつの間にかに飛び退き、包帯を避ける。

 クロちゃんから伸びる包帯が足元の道を砕き、真横の窓を割った。


「イ、ヤ……」


 彼女はどうしてか頭を抱え、私に向けて手を伸ばす。


「う゛ぐ……」


 呻ると同時にまた包帯が鞭のように迫りくる。


 に、逃げ……!


「危なっ!!」


 右に、左に、身体を捻って、包帯を躱す。


「……、ケテ……」


 ダメだ……! 今すぐここから離れたい……!!


 絶え間なく迫る包帯を必死になって掻い潜って、隙を伺う。

 嵐のような猛攻は止む気配を見せない。


 が、突如、攻撃が止まった。


「タ、スケ……、テ……」


 そうぽつりと呟いて、クロちゃんは呆然とその場に立ち尽くしていた。

 どうしてか分からないけど、これはチャンス!


 攻撃が止まった隙に振り向いて走り出そうとした、そのとき――


 踏み出そうとした足が、止まる。

 唐突に身体が私の言うことを聞かなくなるこの感じは前にも……。


『ねぇ、アンタ何してんのさ!!』


 私の脳内に陽彩の怒鳴り声が響き渡る。

 やっぱり。彼女が身体の制御を私から奪い返したのだ。この切羽詰まった状況で!


「何って、逃げなきゃ!」


『はぁ?! 逃げるって何から?』


「ぞ、ゾンビから……!!」


 そう答えると、さらに剣幕を増して陽彩は私に怒鳴る。


『ゾンビって……。あれはクロちゃんよ!』


「そ、それは分かってるけど……。向こうはこっちに攻撃してきてるし、それに……、これ以上はもう無理なの!」


『アンタ、苦しんでる彼女を置いて逃げるの?』


「苦しんでる……?」


『そう! アンタが逃げようとしてたとき、いやその前から、クロちゃんはずっと何かに苦しんでた! それなのに、そんな彼女を置いて逃げるっての? アンタには『助けて』ってクロちゃんの叫びが聞こえなかったの?』


 陽彩のその指摘に、周囲の音が遠くなったように感じた。

 クロちゃんの呻きに潜んでいた、助けを求める声。私は自分のことが手いっぱいでそのことに気づく余裕が全くなかったから。


「でも……、私も怖いものを見続けるのはもう無理なの……」


 目の前のクロちゃんは口を半開きにして、まだ立ち尽くし続けている。

 正直その姿を見ると、心臓は破裂するんじゃないかってくらいドキドキするし、鳥肌は収まらないし、ここに居るのはキツイ……。


 しかし、陽彩は私の言い分にも全く変わぬ調子で続ける。


『クロちゃんはあなた(ルナ)の大切な友達(フレンド)じゃないの? あなたにしてみれば、フレンドなんてたかがこの(ゲーム)世界上の繋がりでしかないかもしれない! でも、クロちゃんからしてみれば、あなたはこの世界で初めての友達なのよ!

 ルナ(あなた)とクロちゃんの関係って、相手の癖が苦手だからって簡単に切るような、そんな上辺だけの薄情な関係性なの?』


 違う。そんな関係じゃないのは分かってる。だけど、だけど……!


「でも、でも! 私、こういう心霊系は、怖いのだけは本当に無理なの!」


 私のその叫びを聞いた陽彩はそれまでの様子と異なり、私に向かってギャルの口調ではなく委員長モードの口調で優しく諭すように語りだした。


『ルナさんは人間(プレイヤー)だから、当然怖いもの、苦手なものがあるのは分かる。でも、あなたは()()()()クロちゃんと友達になった! だったら、それをあなたが好きになるかどうかは別にして、この子は「そういうのを好きなんだな」って認め合って付き合うのが友達ってものじゃないの?』


 それを聞いた瞬間、心に言葉がグサリと刺さり、頭の中に電流が駆け巡るような感じがした。


 性癖を否定される痛みは誰よりも分かってるって、思ってた。だけど、自分がその側に立っちゃってるって、陽彩に言われるまで思いもしなかった。

 これじゃ、あの初心者狩りたちと同じじゃないか。


 だったら私は……!


『クロちゃんはとっても優しくて、むやみやたらに人を傷つける子じゃないって、ルナさんも分かっているはず。彼女が私たちに攻撃してきてる状況も、彼女が助けを求めてることも、きっと訳がある』


「分かってる。だから私は……、怖いけど、でも! クロちゃんを、苦しんでる友達(フレンド)をた、助けなきゃ!」


 私は振り返り、再びクロちゃんと向き合う。

 動きこそ止まっているものの、彼女がゾンビであることに変わりはない。


 私はクロちゃんを助けるって決めた。でも、怖いもんは怖い!!

 足が震えて、全く彼女の方に向かおうとしてくれない。


『どうしたのさ?』


 大見得を切った割に何もしない私を陽彩も不思議がっている。


「やっぱり、怖くて……。足がすくんで、動けそうにない……」


『なんだそんなことか』


 陽彩は私のトラウマを、『そんなこと』と言って軽くあしらった。

 しかし、彼女はこう続ける。


『大丈夫、怖くてもあなたは一人じゃない。勝手に入り込んで来たのはそっちだけど、でも結果的にあなたの誰よりも近いところに私はいますから。安心してください。』


 陽彩の言葉は自信に満ち溢れていて、心の中に満たされていた恐怖や不安が和らいでいく気がした。


『今の私たちなら楽しいことは分かち合って倍にできるし、辛いことは二人で分け合って半分にできる。それにルナさんの怖いこと、苦手なことは私が引き受けます』


「陽彩……!」


『だって私たちは()()()()()、なんでしょ?』


 彼女はそうきっぱりと言い切った。

 その様はまさに私が求めていた理想の姿! 誰にでも優しく手を差し伸べてくれる、クラスの委員長ちゃんを体現したもの!


 いつの間にか足の震えは止まっていて、乱れていた呼吸も元に戻っていた。

 大丈夫って、心からそう思えてる。 


「じゃあお言葉に甘えて、存分に引き受けてもらうよ」


『もちろん。ここには二人いるんだから、できる方がやればいいんです』


「う゛う゛っ……」


 クロちゃんが呻き、再び動き出す。

 私は陽彩に身体のコントロールを託し、彼女の精神の奥へ引っ込む。


「いきます!」


『オッケー!』


 陽彩は思い切り駆け出す。

 クロちゃんが両腕を大きく開き、包帯の攻撃が来た!


「ふっ!」


 陽彩は走りながら身を(よじ)って寸でのところで包帯を躱す。

 陽彩を捉え損ねた包帯はクロちゃんのもとに戻り、再び私たちを捉えんと襲い来る。

 今度は上下左右から同時にっ! これじゃ、躱す方向がない……!


『陽彩!』


「大丈夫!」


 包帯が迫る中、陽彩は思い切り地団駄を踏んだ。足元にあったマンホールの蓋が飛び上がり、それが盾となってぐるぐる巻きのミイラになった。

 陽彩はそのマンホール蓋を踏みつけて包帯を抑え込み、クロちゃんまで一気に距離を詰める。


 眼前にはクロちゃんの顔。

 大きくてまん丸で吸い込まれてしまいそうな瞳。

 互いの呼吸が触れ合う距離。でも向こうの吐息は全く感じない。


「クロちゃん!!」


 しかし、


「う゛……、う゛ぁう……!!」


 クロちゃんには全く聞こえていないとような感じで、逆に腕を掴み返され、陽彩の白い首筋に彼女の尖った八重歯が沈み込む。


「うぐっ……!」


 ガリガリと音を立ててHPゲージが削れてゆく。

 陽彩はクロちゃんを引きはがそうと全力で抗い、ゲージを二割ほど減らしたところでクロちゃんを突き飛ばし、ようやく外れる。


「やっぱ、声をかけたくらいじゃダメか……」


『どうすれば……』


「……あ゛う゛」


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


性癖(スキル)】:【拘束(バインド)


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「――ッ!」


 陽彩の四肢にクロちゃんの包帯が触手のように絡みつき、みるみるうちにミイラのように捕まってしまった。


『陽彩!』


「ヤバい、マジ動けねぇ……!」


 思い出したかのように、陽彩がギャルモードの口調になる。

 急にこれってことは……。要するにガチでヤバめな状況ってことだ。


 結構な勢いで突き飛ばしても、クロちゃんにはダメージが入ってない。というか、そもそも彼女のゲージはゼロ。


 語り掛けもダメ、攻撃も効果なし。その上、私たちは彼女にガッチリ拘束されてしまった。


 一体、どうすれば……? どうやったらこの状況を打開できる? クロちゃんを助けられる?


 一歩、また一歩。クロちゃんはゆっくりと距離を詰めてきている。

 このままじゃ、あの舎弟の二の舞になる。


 どうしようか思い悩み、パッとウィンドウを開いて所持アイテムを覗く。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【メモリーカード】

【タピオカミルクティー】×1

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 持ってるものは貰ったメモリーカードと、クロちゃんが私のために頼んでくれたタピオカだけ?! 碌なもん持ってないな……。

 メモリーカードは使い方分からんし、役に立ちそうなもの無いじゃん!

 今だって悠長にタピオカ飲んでる場合でもな――


 そのとき、頭の中に電流走る。

 ゾンビ、不死の存在……、アンデット。そして、タピオカは回復薬……!


 そうだ! アンデットに回復系をぶつけるとダメージになるゲームもそれなりにある! このゲームの仕様がどうなってるかは知らないけど、やってみる価値はある!!


『陽彩! タピオカ! タピオカでワンチャン!!』


「はぁ……? 意味が分からないんですけど……。ていうか……、私には無理!」


『えっ?』


「動けないこの状態じゃどうしようもない! こんな状況で一体誰がやるのさ!」


 そうだった。よくよく考えたら、私たち拘束されてるんだった! この状態じゃ、アイデアがあっても誰が……?


 ……。


 ――私がやるしかないじゃん。


 私だけなら憑依を解いて、この拘束を抜けられる。

 とはいえ、ゾンビ状態のクロちゃんを間近で見てると、陽彩に憑いているとはいえ更に怖い。


 でもっ……!


『陽彩。私が、私がやる!』


「でも、ルナさん怖いのダメなんじゃ!?」


『そう、ダメ。でも、それは怖いからダメなんであって、クロちゃんの性癖自体がダメなんじゃないって気づいた。だから、恐怖さえ克服すれば何とかなる!』


 そう。その性癖自体は理解できないわけじゃなく、ただ昔の件のせいで怖いだけだって、私は陽彩に諭されれ気づいた。だから、その恐怖を克服すれば何とかなる、と思う。


 克服すれば。


「克服ったって、そんな簡単にできるもんでもないでしょう……?」


『陽彩は一緒にいてくれるんでしょ? なら怖さ半分! それに、大切な友達(フレンド)のため! だったら、恐怖なんて……、恐怖なんて……!』


「声、震えてるよ。でも、そこまで覚悟を決めてくれたんなら、その『覚悟』、私も一緒に背負う。性癖決闘(フェチバトル)に負けないよう、あなたが何かし終わるまで、なんとしてでも耐えてみせる。だから……、クロちゃんを頼んだよ! ルナ!!」


 その言葉を聞いたら、不思議と心が軽くなって勇気が湧いてきた。だって、私たちは二人で一人の、共に戦う仲なんだから!

 突然、目の前に浮かび上がる、半透明の水色ウィンドウ。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『新たな世界への扉が開かれ、新しい【性癖(スキル)】に目覚めました』


性癖(スキル)】:【共闘】LV.1

『自分の相棒(バディ)(シングルの場合は同一パーティプレイヤー)と同時に戦闘を行う場合、被ダメージを1/2にして共有、攻撃時に二人の攻撃の合計分のダメージを与える』


 基礎性癖値:100

 好きレベル:10

 性癖力:1000

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 なるほど、怖さ半分、出力二倍ってことか!

 これなら、行ける!


『行くぞぉぉおおお!!!』


【憑依解除】


 私は憑依を解き、陽彩の身体から飛び出す。

 想定通り、私は少し離れた場所に実体化して拘束から逃れた。共闘状態で私も陽彩のダメージを共有するも、さして気にする量ではない。


 そして全力で走り出す。

 伸びている包帯に絡まれないように、必死こいて避けたり、潜ったり。


「アイテムオープン!」


 目の前に浮かぶ、アイテムウィンドウ。

 その中から、タピオカミルクティーを選択する。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【タピオカミルクティー】×1


『巷で流行りの名物屋台が作った、自慢のタピオカミルクティー。飲むとHPを回復する』


 ・使用しますか? ◆はい いいえ

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『はい』の方を選ぶと、光を放ちながら私の手の中にドリンクが実体化。

 ぶっとい独特のストローの刺さった、大きめのカップ。


「う゛……、う゛……!!」


 気づけば、目の前にはクロちゃん。

 彼女を私に噛みつかんと口を半開きにしている。


 でも、もうゾンビだって怖くない!


 カップから蓋を取り去って、構える。

 彼女の口は腕先間近。


 しかし、そこが絶好の距離、最善のタイミング。


「タピオカ、喰らええええ!!!!!」


 私はクロちゃんの口にミルクティーをありったけ流し込む。

 ゴクリ、ゴクリと彼女の喉の奥に消えてゆくタピオカミルクティー。

 そこまでは想定内。

 しかし、


「な、何ですとぉ!」


 思わぬ想定外(ハプニング)

 なんと、一飲みごとに空だったクロちゃんのHPゲージが回復してゆく! そして全て飲み終わると、彼女のゲージは完全にマックスに。


 この世界ではポーションでアンデットは倒せないらしい。そして、アンデットも普通に回復できるらしい。


 もう、完全に打つ手なし。どうしようもない。

 と、思ったときだった。


 空のカップを持つ私の手に、手が触れる。

 その手は荒い布に覆われていて体温のない、だけど不思議と温かみを感じる手。その手に引かれるがまま掲げていた手を下ろすと、私の手の甲に雫が、ポツリと垂れた。


「お姉、ちゃん……。ごめん……、な、さい……!」


 顔を上げるとそこには、顔の包帯に目元から頬にかけて湿った真新しい一本線を浮かびあがらせている、可憐で儚げなロリっ子の姿があった。

お読みいただき、ありがとうございました!


「面白かった」「先が気になる!」「頑張れ!」「この子好き!」等ありましたら、「ブックマーク」や☆を押して「評価」で応援していただけると幸いです。


皆様の応援がルナや陽彩の力になって、きっと物語を面白い方へと導いてくれます!

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