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「スケ番とロリとギャル」

8/1 スケ番の台詞を一部修正しました!

 目抜き通りから裏路地に入り、そこから更に奥に入り込んだところに位置する、日の当たらない袋小路。噴水広場の喧噪も届かぬ、人気の全くないどん詰まり。


 その行き止まりの壁の前に、黒い服の小さな子がいた。顔はよく見えないけど、地面に座り込んでしまっているのが遠目から見える。

 彼女の目の前には、超ステレオタイプのスケ番が木刀を手に立ち尽くしていた。


 スケ番が女の子に声を荒げて詰め寄る。


「てめぇ、からアタイに絡んできたんだろうがよ!!」


 スケ番は女の子を威嚇するように、バシンと木刀を石畳に振り下ろす。思わず、後ろでその音を聞いているだけの私の身体も萎縮してしまう。


「ええと……、ううっ……」


 その子の答える声は泣きそうで、今にも消えいってしまいそう。

 声質からして、その子は女の子みたいだ。


「呻いてばっかじゃなくて、うんとかすんとか言ったらどうだ! あん?」


「その……、あのね……」


女の子は恐怖に耐えながら、一生懸命に言葉を紡ごうとする。


「……チッ。せっかく、灰色髪の怪物(グレーヘアモンスター)をこっから追い出せたってのに、また似たような奴が出てきやがって」

 

 しかし、それを聞くスケ番は手持ち無沙汰というように、木刀を片手で振り回している。


 ぷくっと彼女の口からピンクの風船ガムが膨らみ、弾けた。


「痛い目みてぇか? あ゛?」


「ご、ごめん……なさい!」


 これヤバいヤツ! あの子、助けなきゃ!!

 でも、アイツ怖すぎて、正直無理。

 はっきり言って、オタクがヤンキーに勝てるわけない。しかも向こうは木刀持ってるし!


 情けない話、助けに行きたいけど、腰が引けて脚が動かない。


 早くしないと……。

 最悪の自体を想定してしまい鼓動は早まり、心に不安が募ってゆく。


 そのとき、私の頭に電流走る。


 ヤンキーには、ギャルだ! 


 そう、ここはコミュ障オタクの出る幕ではない。ヤンキーに対抗できるのは同じヤンキーか、ギャルだけ。

 そしてギャルに正しく精通してるのは私よりも陽彩の方だ。だから対応は彼女に投げる!


 ゴメン! でも、適材適所だから!


「ねぇ、陽彩。さっき、ギャルがどういうのか分かるって言ったよね?」


『確かに言いましたけど……それがどうしたんです? ていうか、この大変なときに何考えてんですか?』


「ヤンキーにはギャルぶつけんのよ! 身体動かしていいから!」


『はぁ!? ……まあ、いいか。で、どうするんですか?』


 私の理論はまるで通ってないけど、陽彩は納得してくれたようで助かる。


「とりあえず、あの子の知り合いのフリをして陽彩がギャルっぽく絡んでるうちに、気づかれないように私が陽彩の身体から抜け出して、彼女を連れ出す!」


『んな無茶な……』


「ほら早く!」


 私は陽彩に身体のコントロールを譲る。

 私は怖くて近づけなかったスケ番の方へ、陽彩は何の躊躇もなく歩を進める。


 そのとき、


「口で聞いても分からねぇなら、身体に聞くかぁ?」


 スケ番が女の子に向かって木刀を振り上げた。


 マズい!


『陽彩!』


 私の叫び声よりも先に、陽彩の身体が動いて振り上げられた木刀を掴み取る。


「ねぇ、ウチの連れに何か用?」


 木刀を振るおうとするスケ番とそれを阻止する陽彩。

 力は拮抗し、互いの木刀を持つ手が力で震える。


「何だ? てめぇ」


 スケ番が首を静かに回し、こっち見た。分厚く塗られたファンデーションに、真っ赤な口紅の時代倒錯したメイクがよく見てとれる。

 狐のように鋭い目が陽彩(わたし)の目をガン睨んでくる。私はその視線に縮み上がってしまってどうしようもないが、陽彩は全く臆せずスケ番に向かって突っかかる。


「だからさ、ウチの連れに何か用でもあるわけ?」


 ギャル特有のアクセントに、どんな相手にだろうと吐き捨てるように言い切る語気の強さ。それに、スケ番のガン付けに呼応するように陽彩も鬼のような形相で睨み返している。


 こっちもこっちで怖えぇ……。

 女の子の様子も気になるけど、まずは隙を伺わないと。


 睨み合いが続くなか、スケ番が口を開く。


「ああ? アタイはコイツに用があんだ。お前が連れだろうがどうかなんて関係ねぇんだよ」


「ウチには関係あんだよ。その子に文句があるなら、ウチに言いな」


「じゃあ聞くけどさぁ、こいつがさぁ、アタイに突っかかってきたんだけどさぁ。どうしてくれんの?」


 それを聞いた途端に、私の背筋が凍った。


 途中までは語尾の伸び切ったヤンキー特有のなめ腐った話し方だと思ってた。だけど、抑揚なく冷たく言い切った最後の言葉。

 私はその部分に言い知れぬ恐怖を感じ、身体が震え、背筋はが凍った。


「だから何? てか、アンタは一体何なわけ?」


 しかし、陽彩はその言葉に一歩も引かない。


「へぇ、このアンズ様に二人揃っていい度胸じゃないか」


「いや、誰だし。そんな有名人ぶられても、マジ知らないんですけど」


 半笑いで向こうの言葉を流す陽彩。

 二人のガンの飛ばし合い、そして互いの腹の探り合いは続く。


 突如、アンズが口角を上げた。身構える陽彩。

 アンズは木刀を捻るように握り替え、くるりと身を回して陽彩の方に向き直った。


「この町でアタイを知らないとはモグリだな? オメー」


「あんたのことなんか、知ったこっちゃないね」


 陽彩がそう言い放つと、アンズは構えている木刀を下ろした。


「やめだ」


「どうして?」


「アンズ様の温情だよ。仲間のために相手を顧みず飛び込んできた、その度胸に免じて()()()見逃してやる」


 アンズは踵を返して路地から去っていこうとする。

 しかし彼女は途中で歩みを止め、私たちに釘を刺すように言った。


「だからといって図に乗んなよ。お前はアタイに見逃してもらったの。分かる? それに、アタイはお前()見逃したが、そのガキを許した覚えはねぇ。この町に居られないようにしてやっから、覚えとけよ」 


 彼女はそう捨て台詞を残し、肩で風切るようにこの場から去っていった。


 ところどころで心臓止まるかと思ったけど、何とかなったぁ……! 寿命がいくら縮んだか分かったもんじゃない。今度箱根で黒卵食べよ……。


「なんとかなっちゃいましたね。ルナさんの出るまでもなく」


『陽彩のポテンシャルがどうにかしてるんだよ。ていうか、早く女の子助けないと!』


 陽彩は私を宿したまま座り込んでしまっている女の子のもとへ向かう。


「大丈夫?」


 陽彩は目線を合わせようと中腰で彼女に話しかける。


「あ、ありがとう……! ございます……」


 女の子は顔をこちらに向けるも、恥ずかしいのか伏し目がち。でも、可愛げな笑顔でお礼を言った。


 その子は『触れれば散ってしまいそうほどに淡く、どこか妖しげ』という言葉がぴったりのロリ少女。


 身長は私よりも低くて、おそらく140センチ代。

 髪の毛はアッシュグレーで、全体的に少年っぽいショートレイヤー。しかし、前髪の左半分は例外で、その部分は彼女の小さな顔を覆い隠し、ナントカって鳥のくちばしのよう。ええっと……。


「確か、オオ……、じゃなくて。オニ……何だったっけ?」


「頭に、オニオオハシ……。乗せて、ないよ……?」


 その子はアーモンドのように整った、かなり大きく少し垂れ目がちな上目遣いで私の疑問を解決してくれた。


 ていうか、無意識に喋っちゃってた!? 


「ご、ごめんね……! バカにするとかそういうつもりはなくて、単にウチがボキャ貧なだけだけだから!」


 すかさず、陽彩がフォローを入れる。

 余計なことをするな、という気持ちが痛いほど伝わってくる。


「……大丈夫。慣れてます、から……!」


 その子は首を傾げて、にへらと脱力げに笑う。その笑顔は彼女のイメージにぴったりの笑顔だった。


 上半身にはデカデカ『I’ve already dead』と書かれた、中学生が好きそうな黒のパーカーを着ていて、その胸元にはパーカー越しにその存在を主張するほどの、身体に似つかぬサイズのおっぱい。

 そしてスク水オンリーの下半身。


 この子はつまり、スク水パーカーロリだ。


 そしてこの子について一番目を引くのは、全身に巻かれた包帯。

 スク水から伸びる両脚にも、パーカーの袖から覗く両手にも、タートルネックにマスクみたいな感じで首から目の下にかけても、何かを固定しているかのように包帯がみっちり巻かれていて、素肌はほとんど見えず、見えるのは口周りと、目から上だけ。


 その見えてる地肌は唇を含め、血液が通っていないかのように真っ白で、大きな目もよく見ると死んだ魚のよう。


 彼女には全体的に生気がない。

 だから、触れたら壊れてしまいそうだと私は思った。


「もう大丈夫だよ」


 まだどこか不安げなスク水パーカー包帯ロリに、陽彩が優しい声でそう告げる。


「ありがと……、お姉ちゃん……!」


 ロリが陽彩の腰に抱きつく。

 同時に、トクンと、陽彩の心臓が跳ねる。


『よかったね。お姉ちゃん!』


「う、うるさい!」


 私が陽彩をからかうと、その子は不思議そうな顔で私たちを見る。


「お姉ちゃん……、誰とお話……、してるの……?」


 あっ! という感じで、陽彩は口を開く。

 仕方ない。このままだと陽彩がかわいそうな子になってしまう。そう思い、私は憑依を解いて陽彩の横に実体化する。


「わわっ……!」


 この様子を見て、その子を驚かせてしまったようだ。彼女はびっくり仰天し、尻もちをついてしまう。


「私は陽彩。そして」


「私はルナ!」


 私たちは流れで自己紹介をする。

 すると、


「私は……、クロ」


 彼女も返してくれる。


 クロちゃん……か!


「よろしくね!」


 手を差し伸べる。しかし、クロは私の手を取ってくれなかった。


「……、ダメ! 私と一緒に居たら……、お姉ちゃんも、きっと酷い目、あうから……」


 クロはさっきのアンズの言葉を気にしているらしい。それで、私たちを痛い目に合わせないよう配慮してくれていたのだ。


 凄く分かる。とても心の優しい子だって。


「でも、大丈夫!」


 私はクロの両肩にポンと手を置く。


「あんなんハッタリに決まってる。それに、何かあったら絶対お姉ちゃんたちが一緒になって解決するから!」


「ほんと……?」


「うん! 文字通りにね!」


「ええ、約束する」


 私たちの言葉でクロの表情は晴れる。


「ありがと……、お姉ちゃん……!」


 そう言って、クロは陽彩の方に抱きついた。


 抱き着くの、こっちー!! 

 ガーン。ちょっとショックー。しかも、陽彩は勝ち誇ったような笑みを浮かべてやがる。


「あと……、こっちのお姉ちゃんも……!」


 クロは私にもぎゅっと抱きしめてくれた。


 その瞬間、私の頭の中にアラームが鳴る。ログイン前にVRギア側で設定できるやつだ。それを設定してると、設定した現実時間にきっちり知らせてせてくれる。

 うわぁ、もうそんな時間かぁ……。この世界(フェチフロ)にいると時間を忘れるから困る。


「ごめん! ちょっとリアルでやることあるから落ちるね!」


 流石に、七回忌とはいえおじいちゃんの法事をサボるわけにもいかないし。


「じゃあ、そろそろ……、私も、落ちます……」


 クロも同じタイミングで落ちるみたい。


 ああ、そうだ!


「クロちゃん! ここで合ったのも何かの縁だし、私とフレンドになろうよ!」


「いいんですか……?」


「もちろん!」


 私はクロちゃんとフレンドコードを交換する。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  『クロとフレンドになりました』


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 初めて見たけど、半透明のウィンドウを確認してこれでよし。


「……始めての、お友達……!」


 クロが呟く。


「じゃあ、また今度遊ぼうね!」


「……うん!」


 そうクロに告げログアウトし、私は現実に戻るのだった。

お読みいただき、ありがとうございました!


「面白かった」「先が気になる!」「頑張れ!」「この子好き!」等ありましたら、「ブックマーク」や「評価」で応援していただけると幸いです。


皆様の応援がルナや陽彩の力になって、きっと物語を面白い方へと導いてくれます!

これからも、どうぞよろしくお願いします。

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[良い点] 性癖盛り盛りのキャラが出て来ていいですね~。今回の新キャラも楽しみ
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