57/1018
開幕1-12
開幕1-12
壱目で海の魔物と解る神話に出て来る姿形をした人形の女性。“光りの芸術家”が作品を仕上げる如く棍棒の迅い動きが止まる。
彼女の後ろには大勢の甲冑を着た塊が道端に倒れ込んでいた。彼女に武器を向けたこの国の軍集団だった。
生き物のように細長い水が彼女の周りをくるくる、ぐるぐると二つの違う速度で回っていた。
棍が彼女の左手に止まる。軍集団との戦いは終わったのだ。直後。軍集団を包み込んだ激流が城へと向かって押し付けるように荒々しく運び行く。
彼女はまるで乗り物に乗るように激流の上へと立つと、自身の命を狙ったにも関わらず。溺れぬよう気を掛けながら城へと突っ込んだ。
“それ”を見終わるや否や。自分の役目は果たした。と言わんばかりに〝水〟へと姿を変えて、地面に染み込んだ。
後には満月が照らす闇夜が静寂を運び込む。