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開幕1-11
開幕1-11
月光に照らされている短髪は青くキラキラ輝いていた。そして靴を隠す程長いワンピースを着た女性は右手で髪の毛を整えていた。
近寄る程に成熟された二十台くらいの軆は見る者全ての心を捕らえてしまうくらい美しいものだった。
“これ”が人間だったら千人の男に声掛けされるだろう。しかし髪の毛の間から見える耳が異形だった。
その姿形は神話等に出て来るような海の物で出来ていた。その女性は万を越える兵隊を前に左手に棍棒を持って猪のように突っ込んだ。
左手を軸に棍は華麗に舞う。手の甲で回す時もあれば、腕で回す時もあり、身体を駆け巡る。壁に当たり返って来た棍に当て失神する者も大きく。激しく迅い棍は月光で“光り”の帯を縦横無尽に描いてる。そう芸術家が作品を作るように。
最早、目で追えない棍棒は“彼女”という芸術家を守っている番犬と例えても良いくらいだった




