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人は居ない。
あの日から数百年。
もう年月を数えるのも面倒になってきた頃。
男は前方に見える小さな村を目指し歩いていた。
周りには鬱蒼と生い茂る木々があり、その間を細い糸のような道を沿って村へと歩く。
既に日が傾き始め、辺りが綺麗な緋色に染まっていく中。
今晩はあの村で一泊させてもらおうか。
夕食はどうしようか。
ここらで熊でも一つ狩って行こうか。
そうすれば村で歓迎される可能性があるかもしれない。
などと、男は呑気に考えていた。
そうこうしているうちに村は着いた男は、直ぐに先程まで呑気に考えていた事を、放棄することとなった。
村には人が一人も居なかった。
「?」
男は首を傾げた。
普通誰も居ない状況であれば動揺したり焦ったりするものだろう。
しかし、男はしなかった。
する必要がなかった。
人は居ない。確実に居ない。
裏を返せば、人以外は居たのだった。