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一也くんのバイト

一也くんがバイトで会えない日曜はいつもより一也くんのLINEが当然の事ながら少なくなる。

だけど、少なくなる変わりに内容はいつもよりとても濃くなる。


『美優、美優に会いたいよ。仕事中もオレは美優の事しか考えてないよ』


『美優に会えない日曜日は、この世の終わりのような感じになる。オレの心は今日の天気のようだよ』


昨日はあんなに天気が良かったのに窓を打ち付ける雨の音が部屋に響く。今日の天気は降水確率100%のどしゃ降りだった。


『美優、美優は今何してる?美優に会いたいよ、本当は電話して声が聞きたいけど、声を聞いてしまったら今すぐにでも会いに行ってしまうと思うから、我慢するよ』


一也くんの休憩の合間に送られてくる怒濤のLINEの内容は美優に返信の内容を考えさせてくれない。

一也くんはきっと美優へのLINEのためにせっかくの休憩時間を割いているのだろう。


美優も一也くんに会いたいよ。

だけど、今ここでその事をLINEで送ってしまったら、一也くんは間違いなく仕事を投げ出して美優に会いに来てしまうだろう。

いつもは真面目で絶対にそんな事をしない一也くんだけど、美優の事となると自分を見失ってしまうから。


『美優も会いたいけど、今はバイト頑張って!バイトしている一也くん大好きだよ』


送信ボタンを送ってから、LINEアプリを開き、LINEバイトのサイトを開く。

一也くんは美優の家から近い、お洒落なレストランのウェイターをしている。

一度、一也くんが働いているところを見てみたくてそう伝えたところ、私が来ると恥ずかしいからってふんわりと断られた。

バイト中の一也くんも格好いいんだろうなー。

制服を着て接客をしている一也くんの姿を想像するだけで。

うっ、ヨダレが…。

美優もバイトしようかな?

でも、美優は人一倍トロいから一也くんと同じバイト先で働いたらきっと一也くんの足を引っ張ってしまう。


それは良くない。


それに、きっと、美優がバイトするって言ったら、一也くんは…。



「それは絶対にダメだよ」


翌日の朝。

昨日とはうってかわっていい天気だった。

いつも通り、約束の時間より30分も早く美優を待っていてくれた一也くんは美優のバイトの話を聞くなり、言葉を尖らせた。


「美優の接客なんて見たくない。見たくないと言うんじゃなくて、他の誰かに笑い掛ける姿なんて絶対に見たくない。美優の笑顔はオレだけのモノだよ。バイトしたいなんて急に言うから驚いたよ、何か欲しい物でもあるの?あるならオレがプレゼントするよ」


長い前髪を風がさらい、いつもは見えない左目が一瞬見えた。


そんな些細な瞬間でさえ、イケメン過ぎて…。

何でこんなに格好いいんだろう?


「欲しい物なんて無いよ。一也くんと一緒にバイトできたら、少しでと長く一也くんの側にいられるなって思っただけだよ」


そう言うと、白い頬をピンク色に染めて前髪をいじりながらくすっと頬笑った。


「美優が望むなら、オレはいつでも美優に会いに来る。それが、たとえ、夜中だろうと手が離せない状況だとしても、美優が会いたいと言うなら、オレはいつでも会いに来るよ。……だから、バイトなんてしないで欲しい」




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