一也くんがいてくれるなら
「動いたらお腹空いてきたね、お茶でもしようか?」
繋いだ手をぎゅっと握り返してくれた一也くんがニコッと頬笑む。
土曜日の午後のショッピングモールは、たくさんの人で賑わっている。たくさんの男の子たちもいるが、その中の誰よりも一也くんが断トツで一番カッコいい。
それがよく分かるのは彼氏連れの女の子も一也くんが横を通り過ぎる時、必ず2度見して、その後で自分の彼氏を見て、もう一度一也くんに目を向けるもの。
もう一度自分の彼氏を見て、また一也くんを見てタメ息をついたりしてる。
女の子はもちろんのこと男の子だって一也くんを見てから、今更自分の外見に気を配ってみて、やはり勝てないと言う感じで肩を落としたりしている。
モデルと言っても通じるぐらいのイケメン振りで、美優には本当にもったいないぐらいの彼氏。
「ん?どうした?」
頭2個分以上の背丈の一也くんが視線を落とした。
優しい眼差しが美優の事見てくている。
長く伸ばした前髪が左目を隠しているため、右目しか見えないが…。
ああ、右目の下の泣きボクロとか本当に色っぽい、まるで天使が間違えて地上に降りて来てしまったような美しさを持っている。
「一也くんのカッコ良さに見とれてた」
こんな麗しい一也くんを見ていたら、普通ならなかなか言えないこんな言葉が普通に出てきた。
「え?」
一也くんが歩みを止めて、空いている方の手で美優の頭をくしゃと撫でてくれるから、幸せな気持ちでいっぱいになる。
「ありがとう。世界一可愛い美優にそんな事言われるなんて、本当にオレって幸せ者だなって思える。本当にありがとう、大好きだよ、美優」
美優は一也くんにそんな事言われる女の子でいられるのかな?
そもそも一也くんにふさわしい女の子なのかな?
余裕なんていつも無いし自信なんて一つも無いけど、いつも変わらない一也くんがいてくれるなら。
ずっと一也くんの側にいたいと思う。
「ほら。美優の好きなチョコバナナパフェがあるからこの店にしようー、美優の好きなホイップ付きのココアもあるし…」
少し歩いた先にお洒落なカフェがあったのでそこに入る事にした。
「うん!」
「オレがオーダーして席に運ぶから、美優は席に座ってて」
一也くんのこの言葉はいつものもの。
「たまには美優も一緒に並ぶよ」
「大丈夫、美優に運ばせるなんて事、オレできないよ。美優はただ座っててくれればいいから」
「うん、分かった」
そこで空いてる席に向かおうとしたところ、一也くんが私の腕を掴み、
「またナンパなんてされんなよ」
そんな言葉が私の耳元をくすぐった。