スコーン
どうしてヤンデレと分かってて付き合ってるかって?
それは…。
高校に入ってすぐに告白され、その告白に感動してしまったの。
『キミの全てを壊してしまいたいほど大好きだよ』
なんて告白聞いたことある?
何だか分からないけど、私の事ものすごく好きなんだと言う事は伝わってきた。
見た目は完全無欠のパーフェクトで。
天使の輪ができるほどのサラサラの真っ黒の髪の毛が左目を隠しているとことか。
目尻の上がった右の目元のホクロとか。
華奢に見えて結構筋肉質の体とか。
声だって、人気アニメの主人公を演じれるようなキレイなイケボで。
悪いとこなんて1つもない。
そんな人からそんな告白受けたら、断る道理が無いってもんよ。
夕ご飯を食べ、お風呂にも入り、後は眠るまでテスト勉強しようと、自分の部屋で苦手な科学の教科書を開いて…。
うーん、ダメだ。全然頭に入らない。
しかも、頭使ってたらお腹空いてきた。
その時、快適なLINE通知音が鳴った。
『美優、ちゃんと家で勉強してる?』
『うん』
『美優の顔が見たいな、写メ送って』
これもいつものこと。
こんな平々凡々な美優の顔の写メで良ければいつでもどうぞ。
むしろ、一也くんにそんな事言われてめちゃめちゃ嬉しくて、毎回その要求にはすぐに答える。
可愛く映るアプリを利用して自撮りしてすぐに送信。
『ありがとう。髪がまだちょっと濡れてるね。ちゃんと乾かした方がいいよ!だけど、美優は本当に可愛いね、会いたくなってきたよ』
すごーい、よく見てくれてる!
さすが、一也くん。
よし乾かそう、と下にドライヤーを取りに行くと。
ピンポーン。
家のチャイムが鳴り、ヨイショとイスから立ち上がった母親が出た。
こんな時間に誰だろう?
ひょこっと顔を覗かせると。
「あら、一也くん、どうしたの、こんな時間に?」
玄関に立っていたのは小さな茶色の袋を持った一也くんだった。
わ。一也くんがいる!
涼しい顔をした一也くんがすぐ近くにいる。
嬉しくて、胸がドキドキする。
「先程、スコーンを焼いたので良かったらと思い持ってきました」
「あら、わざわざありがとう。でも、今テスト期間中なのに大丈夫なの?」
「今回のテスト範囲なら、もう完璧に頭に入っているので大丈夫です」
「さすが、一也くんねー」
「一也くん!」
母親と一也くんの間に立ち、二人の会話を止めた。
「美優、まだ髪の毛濡れてるじゃないか?オレが乾かそうか?」
美優に気付いた一也くんが、ニコッと笑うとそっと髪に触れて言った。
本当一也くん優しすぎる。
「まぁまぁ、せっかく来てくれたんだし、美優の勉強でも見てもらってもいいかしら?」
母親は、スリッパ立てから一也くん専用のスリッパを取り出した。