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消しゴム

「ここがこうなるから、これで答え分かる?」


メルヘンチックな美優の部屋の中央に置かれている小さなテーブルを一也くんと二人で囲って明後日からの中間テストのためにお勉強中。


ダメだ、全然分かんない…。


今日こそはちゃんと勉強しようって学校にいる間は決めていたのに。

いざ勉強しようとすると全く気持ちが追い付かない。

元来自分が勉強嫌いな事もそうだけど。

大好きな人が隣にいるから余計かもしれない。

隣に一也くんがいるだけでドキドキが止まらなくなる。

一也くんが動く度に何かいい匂いする上に風がサラサラの髪をさらう度にまた甘い香りするし、透明感のあるシルバーかかった右目が美優を見るだけで、呼吸困難に陥りそうになる。

あー、本当にかっこいい!

こんなにかっこいい人がどうして美優の側にいてくれるのか今世紀最大の謎だよ。


「美優どうしたの?全然ペンが進んでないけど、オレの教え方悪かったかな?」


「あ…ううん、そんな事ない。一也くんの教え方は完璧なのに美優の頭がついていかないの、ごめんね」


「美優は悪くないよ。うん、もう一度最初からやろう。ゆっくりやれば美優ならきっとできるよ」


「う…う、うん」


「来月の旅行のために頑張ろう」


そうだよ、赤点なんか取ったら学校休みづらくなる。

さすがに美優のパパだってそんな点数取って学校休んで男の子と旅行行くって言ったら反対されてしまうかも。


「うん!」


「偉い偉い」


優しく私の髪の毛を撫でるから一也くんの細い指先に私の長い髪が絡む。


「髪の毛伸びたね。2.5センチぐらいかな?」


さすが一也くん。ミリ単位で美優の事分かってくれてる!


「うん、出会った時は肩ぐらいまでの長さだったもんね」


「そうだったね」


一也くんと出会ってもう2ヶ月。

それはどんな2ヶ月よりも深く濃い時間だった。

初めての恋。初めての彼氏。

何かの拍子に一也くんが髪の毛の長い子が好きだと知ってから伸ばそうと思った。

一也くんと過ごした時間の分だけ伸びた髪の毛。

これからもこんな時間が続いていけばいいな。


「あ、ここ間違えてる消しゴム消しゴム」


ペンケースから消しゴムを探してみても見当たらない。


「はい、美優」


一也くんが今開けたばかりの新品のnonoの消しゴムを私にくれた。


「え?美優の消しゴムは?」


「ああ。これ、もう角が丸くなってたから新しいの用意してきた」


え?


一也くんのペンケースの中を見ると、今まで美優の使っていた消しゴムが何個か入っていた。


「これ美優の?」


「うん。美優の消しゴムが丸くなる度に新しいのに変えてたんだ」


気付かなかった!


一也くんって何て気が利くんだろう?

うん、一也くんのためにも美優もっと頑張ろう!





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