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2×××年8月2日(月):フレンド登録(山吹)

※去年の変更内容については削除しました。

 天気予報では雨やと言うてたので濡れるのを覚悟でログインすると、運動会とかでよく見るタイプのテントが一張り設置してあった。三方に幕も付いている。

 中には、飛鳥さん達と忍者さんがいた。

 うちと忍者さんは、飛鳥さん達に名前を教えた。忍者さんは、牡丹と言う名前やった。

 因みに、牡丹さんは黒髪ポニーテールで茶色の目。顔は頭巾の布でマスクの様に覆われていた。



「ところで、お二人はβ版でも同じ姿と名前で?」

 牡丹さんが掲示板に書き込みを終えたタイミングで、ジェイクさんが質問して来た。

「うちは違うんよ。浮気と婚約破棄の慰謝料として、譲渡させたんや」

 うちは本当の事を教える。

「無理矢理ですか?」

 ジェイクさんが眉を顰めた。

「浮気相手の親御さんが、娘と結婚したいならゲーム止めろって言うたらしいねん。うちが慰謝料として要求してたから、こっちにくれた訳や」

 無理矢理譲渡させたんは、うちとちゃうで。

「それなら、問題ありませんね」

「因みに、その人が使ってたキャラ名は?」

 飛鳥さんが尋ねる。

「ローマ字でORIBEやったな。知っとる?」

「いいえ。全く」

 仲良かったとか言われんで、良かったわ~。

「で、牡丹さんは?」

 ジェイクさんが、牡丹さんに聞く。

「弟が、もうやらないからって譲渡してくれました」

「もうやらないって、どうしてですか?」

「VRより従来のゲームの方が良いみたいです」

「なるほど。因みに、キャラ名は?」

「雷の音で、雷音です」

 雷音さんは知り合いやったらしくて、飛鳥さん達は驚いていた。OPの巨大蜘蛛と戦っている中にいるらしい。


 ルートさんにフレンド登録を持ちかけられて登録し合っていると、昨日のぶりっ子が黙って混ざろうとして来た。

 顔を良く見ると、美人ではない。素顔なんやろか? でも、何処かで見た様な……?

 【解析】でステータスを見て、名前は『愛守姫』と判ったけど、何て読むんやろ? ……プリンセスとかか?

「何かご用ですか?」

 サフランさんが尋ねる。

「何って、フレンド登録するんでしょう?」

 まさか、『ぼたん』か『やまぶき』と読むんか?

「貴女とするとは、言っていませんよ」

「照れなくても良いのよ。貴方達が、ボクとフレンド登録したいと思っているのは、解っているんだから」

 もしかして、『美人じゃないのに、何故かモテるヒロイン』がやりたいんかな?

「貴女に照れる理由など一つたりとも有りませんし、フレンド登録したい気持ちも微塵も有りません」

 普通に「ボクともフレンド登録してくれませんか?」と言うたら、登録してくれたやろうにな。

「……貴方達は違うわよね?」

 断られたのが信じられないと言った表情で、彼女は他の面子に確認する。

「我々の中に、フレンド申請ぐらいで照れる人は居ませんよ」

 グレープさんは、『ボクに惚れているんでしょう?』と思っていそうな彼女の言葉に不機嫌になったらしかった。

「それとこれとは別でしょう?」

 『ボクは特別だから』と聞こえた気がした。

 ふと気付くと、牡丹さんが『モバイル』を見て呆然としていた。

「ん? 牡丹さん、どないしたん? 『モバイル』見詰めて」

「その人にフレンド申請したら、断られて……」

 うちが尋ねると、牡丹さんは理由を教えてくれた。

「は?」

 やっぱり、男目当てやったんか。露骨やなぁ。

「ちょっと、あんた! どういう事?! フレンド登録したいんやろって申請要求しておいて、いざ申請したら断るなんて! 断る為に、照れずに申請しろ言うたんか!?」

 もし、牡丹さんが、『自分からは恥ずかしくてフレンド申請出来ない人』やったら、その言葉に勇気出して申請したのに断られたなんて、凄いショック受けるやろうな。

「ち、違うわ! 彼女の申請を断ったのは、他人から貰った大量のAPで楽するようなズルイ人を許せないから」

 あ、これ、飛鳥さん達も当て嵌まっていると言えなくもないな。

 飛鳥さん達で逆ハー作ろうとか企んでいるんやろうけど、邪魔しちゃるわ。まあ、邪魔するまでもないみたいやけどな。

「何が違うんや! うち等八人全員、他人から貰った大量のAP使ってんのに!」

「そ、それとこれとは」

「違わんわ!」

 牡丹さんも、狡い事はしてへんし。

「ですね。特典APは、βテストの時に取得したAPより遥かに多いですし」

 サフランさんが乗って来た。俺様タイプは嫌いなんやろな。女の場合は、何て言うんやろ? ……姫様?

「で、でも、それは貴方達がβテストで頑張ったからでしょう?」

「頑張った覚えは有りませんが。意外ですね。貴女は、狡い事をしていない牡丹さんを狡いと称した人ですから、私達の事も狡い人だと思っていると考えたのですが」

「ズルしたじゃない!」

「何がですか? 弟さんが自主的に『コクーン』と特典を譲渡した事ですか? 運営側が特典の譲渡をあちらの判断で認めた事ですか?」

「特典を使った事よ!」

「それの何が狡いのでしょう? 貴女は、譲渡された物……例えば親の財産等をズルイからと使用しないのですか?」

 悔しげに俯いた愛守姫は、肩を震わせて叫んだ。

「寄って集って虐めるなんて酷いわ!」

「自分から因縁付けて来て、その言い分を否定されたら虐め呼ばわりかい! 被害者ぶるあんたの方が狡いわ!」

 そもそも、そっちが先に虐めようとしたんやないの! 八人で居る所にフレンド登録しろと言って来たのに、一人仲間外れにしようとしておいて!

「だ、だって……自分で言わずに人に言わせるなんて、ズルイ!」

 うちの口が早かったから、タイミング逃して言い辛くなったとかやろ?

「言いたいから言っただけや! サフランさんかてそうやで! そんなに牡丹さんから言い返されたかったんなら、何か言って貰おうか?!」

 牡丹さんが、うちより酷い事言う人という可能性もあるのになぁ。

「貴女は、家族から貰った物を壊れていなくても・古くなくても・汚くなくても、直ぐ捨てて同じ物を買うのかもしれませんけど、私は貴女と違ってそんな感じの悪い事はしませんので」

 牡丹さんは少し考えて、そう言った。

「捨てろなんて言って無いじゃない! 特典APを使わなければ良かったの!」

「貴女なら、『コクーン』を貰った事も狡いと思っているかと思ったんですけど」

 同感や。高価な『コクーン』を貰った事を狡いと言わないなんて、意外過ぎる。

「嫌な人ね!」

「もしかして、貴女。誰かに『コクーン』を買って貰ったんですか?」

 うちは、ジェイクさんの言葉に納得した。

「……もう、良いわ!」

 愛守姫さんは、顔を真っ赤にして怒ると、ログアウトした。

「図星だったんでしょうか?」

 サフランさんが呟く。

「面白い人でしたね」

 冗談なのか・本気なのか、ジェイクさんは、笑みを浮かべてそう言った。

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