表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/54

2×××年7月某日:彼女が【エール】を始めた訳(山吹)

なんちゃって方言です。

近畿地方です。


2015/11/17 山吹の本名を変更。

 うちの名は、大峰吉野(さくら)

 七月のある日、元婚約者の浮気相手の父親の部下によって、うちの部屋に『コクーン』が運び込まれた。

「これ、あいつのですよね? どうしたんですか?」

 浮気と婚約破棄の慰謝料代わりに「それ頂戴」と言った時には、拒否されたんやけど。

「はい。社長が、家の婿になるからにはゲームなどやらせんと仰いまして」

「なるほど」

「所有者変更手続きも正式版移行特典の譲渡手続きも、させてあるそうですので」

「正式版移行特典?」

 怪訝に思って首を傾げる。

「【アンゲロスライフ】と言うゲームが、クローズドβテストが終わって八月から正式サービスが開始するそうなんですが、テストプレイヤーだった人には、ゲームを有利に進められるようAP(アビリティポイント)が贈られるそうです」

「へー。それ譲渡出来るなんて、珍しいんとちゃいます?」

「でしょうね。……あ、済みません。戻らないと」

 時計を見て慌てて帰らはったのを見送った直後、噂をすればなんとやら、元彼からメールが届いた。



 あいつの浮気が発覚したのは、うち等の結婚式まで一ヶ月という頃やった。

「社長令嬢と結婚が決まったから、別れてくれ」

 元彼の家で昼食を作り、食べ終えた所でそう言われた時は耳を疑った。

「は?」

 数ヶ月前から様子がおかしいとは感じていたけど、マリッジブルーだと思っていた。

「……何時から付き合ってたん?」

 うちは「専業主婦になってくれ」と言われたのを承諾して、数日前に引き継ぎを終えて退職したのに。

「何時だって良いだろ」

 その時、チャイムが鳴った。

「誰だ? こんな時に……」

 玄関に向かったそいつは、「ヒィッ」と小さく悲鳴を上げた。

 社長さんが泣いている娘を連れて怒り顔で立っていたからや。

 未来のお義父さんを追い払う訳にも行かず、あいつは恐々と二人を家に上げた。

 社長さんは、娘が結婚したいと言う男を調査させたら結婚間近の婚約者がいると判ったので、騙して弄んだのかと怒鳴り込みに来はったのだった。

「ち、違うんです! 彼女とは別れようと、今」

「そうよ! 彼が愛しているのは私だけなの!」

 鬼の形相で怒る社長さんを、元彼とその浮気相手は必死に宥めようとした。

 とっくに元彼への愛情が冷めていたうちは、食後のコーヒー片手に撮影タイム。


 結局三人の話し合いは、娘に激甘な社長さんが折れて結婚を認めると言う事で、三十分ほどで終わった。

「彼が私と出会うまでの代役、ご苦労さま」

 勝ち誇ったようにうちにそう言った彼女に、怒りよりも痛い人を見る様な居た堪れなさを感じた不思議。

 その時、社長さんが娘の代わりに八桁の慰謝料を支払うと言い出した。

「ちょっと、パパ! どうして、そんな勿体ない事するの!」

 彼の愛娘は怒ったが、社長さんは譲らなかった。口止め料も含まれているんやと。

 つまり、娘を悪者にしたくないから破談の本当の理由を黙っていて欲しいと言う事やった。

 うちはそれを呑み、翌日社長さんから振り込みがあった。



 でも、一週間も経たない内に社長令嬢が他人の婚約者を略奪したと言う噂が社内に広まったそうや。彼女自身が自慢げに吹聴したらしいで。

 お陰で元彼は友人の大半に切られて、残ったのは同類の浮気男と集る気満々の奴だけらしいわ。まあ、友人が居らんようなっても・ゲームが出来んようになっても、社長令嬢と結婚出来るんやから、問題有らへんやろ。

 うちは、元彼からのメールに、『ただの知人なのに愚痴メールなんて送らんといて。キモイ』と返して、【アンゲロスライフ】公式サイトを開いた。



 そんな経緯で、うちは【エール】を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ