プロローグ
「いくら綺麗な顔でもね、薄皮1枚剥がしたらみんなおんなじようなものよ‼︎」
小動物を思わせる真ん丸な茶色い瞳に、同色のふんわりとしたボブ。世間一般で可愛らしいと形容されるであろう彼女は顔を赤くしてそう叫んだ。
「めぐるちゃんってばそんな身も蓋もないこと言わないでよ……その薄皮1枚が大切なんだよ」
そうだ、その薄皮に騙されてくれ。
仮にも貴女ヒロインだろうが!
一条 めぐる。乙女ゲームのヒロインである。意味分かんないって?私も実はあんまりしっかりと理解してるわけではない。
ただ、生まれた時から私は何か満たされない日々を送っていた。比較的勉強も運動も出来たし、友達もいたし、家庭環境も悪くない。最初は自分が特別な存在だと思い込んでしまう思春期にありがちな心情かと思っていたが高校受験の日、彼女を見てやっと何が欠けていたのか気付いた。
プログラミングされていたかのように浮かぶのは一つのゲームの内容。曜日ごとに男をひっかえとっかえするような少しゲスいものだ。
私に足りないものがあったのではなく、私が彼女を満たす為の人間だった。
乙女ゲーム、『ワン☆ウィーク』。一条 めぐるはヒロインで、円堂 幸(まあ私なんだけど)は彼女を助けるサポーター。ああ、スッキリ。私は彼女を助けるために生まれたきたらしい。
そして今現在、ある問題が浮上している。
「サチまでそんなこと言うの!?私がすっっっごい迷惑な生徒会に付きまとわれているの知ってるのに!」
ヒロインが恋愛してくれないのだ。
うがぁぁぁああ!と叫ぶ彼女はハッピーエンドを迎える事が出来るのか。否、私がハッピーエンドまで連れて行くのだ。
髪を振り乱し攻略対象たちへの呪詛を吐くヒロイン。
こりゃ腕が鳴るぜ、といつか見た少年漫画の主人公のさながらの台詞を心の中で呟き、私は今日も彼女の恋愛を影ながら支えることを決意するのだった。




