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公園を通る度にこのやんちゃの爪跡が目に入ったが、後悔はしていない。

 

 触れてはいけないと言われると手を出したくなる。踏みとどまるのが正しい。

 が。

 ハイ、とコーヒー缶を差し出し欄干に(もた)れて桜を眺める。君は僕とは逆を向いて池に映る桜と揺蕩(たゆた)う花びらに夢中。

 見て、と水色に染まった指で塗りが一部()げたベンチを指す。傍らにはペンキ塗り立ての立て看板。

「『我愛尓』?」

 声に出して読み(うつむ)いてしまった君に何て意味と囁くと、小さな声がバカと呟いた。

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