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手乗り魔女と異世界からきた弟子  作者: 若桜モドキ
森の中の生活編 -1-
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8.世界のレシピ

 ずっと気になっていたことがある。

 それは、二つの世界――僕が元いた世界と今いる世界の、奇妙な共通点だ。


 わかりやすいところで言うなら、食べ物の呼称。

 実はほとんどというのも無意味なほどに、変わらない。

 オレンジみたいなレモン、なんてものはあるけれど、基本的に僕から見たレモンはお師匠から見てもレモン。チーズやバターもあるし、牛乳も飲まれている。

 一度、差し入れされた都のスイーツなんて、元の世界のソレと何が違うのかわからないくらいに生クリームだった。おいしかったし、味も僕が知る生クリームと変わらない。

 食べ物だけじゃなくて、たとえば時間の数え方や距離の単位も同じだ。

 さすがに暦はちょっと変わってたけれど、でも『月』のような区切りがあって、ひと月三十日になっていたりする。生活はしやすいのだけれど、偶然も積み重なると薄気味悪い。

 まったく理からして異なる二つの世界。

 それなのにどうして、こんなにも共通する部分が多いのだろうか。

 ……という話をしたら、お師匠は妙に興味を示してくれた。


『セラの知り合いにね、世界について研究している変わり者がいるんだよ。パメラ・シェルシュタインと言ってね、かの一門にその魔女ありと言われる不老の魔女さ』


 お師匠の知り合いでもあるそのパメラという魔女の仮説の中に、僕の話と互いに参考にし合えそうなものがあるという。むしろ、僕の証言が仮説を裏付ける可能性もあるそうだ。


 その仮説とは――世界にはあらかじめ用意された素材がある、ということ。


 それを神様と呼ばれる何者かが、その時々の気分や目的で組み合わせていろんな世界を作り上げているのではないか、という……まぁ、かなりぶっとんだ仮説だった。

 だけどもしそうなら僕の話に、それらしい説得力ができる。

 レモンはああいう形で、味ということが、あらかじめ素材の中に入っていたなら。


「……面白い話だけど、証明しようがないしな」


 僕以外の、僕とは違う世界からの来訪者でもいなければ。

 とはいえゲームとか小説でもないのだから、そんな都合よくポンポンと飛んでくるわけがないのだから。結局、仮説は仮説のまま……ということになるんだろう。

 僕だってどうしてこうなっているのか、いまだによくわかっていないのだから。

 ただ恐ろしいほど古い古い魔法には、世界を世界を渡り歩くなんて記述が残るものもあったりするという話だし、そういうのを使えば帰れる……かもしれないね、なんて感じで。

 しかし方法の手がかりはあるけれど、肝心の魔法式はさっぱりわからず。

 お師匠曰く、【召喚式】というヤツの応用じゃないか、とのことだけれど何をどうすればいいのかというレシピは、いまだ見つかってない。そんな魔法があったという記述だけだ。



 ……まぁ、一番の問題は、アレだ。

 僕に帰る気がないことなんだろうけれど。

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