表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/74

62.何年待てるの?

 次の日、カグヤさんのいない朝食の席。

「ねぇ、アウラ。何年待てる?」

 パンをかじっていたお師匠は、肉をかじっているアウラにそんなことを言い出した。絵に描いたような朝の団欒に投げ込まれたその問いかけに、誰もが答えを見出せない。

「だから、何年待てるのかなって、セラは疑問に思ったの」

「……いや、だから何が」

「だって、ミーネはまだ十三歳だもん。さすがに子供には無理だと思うよ」

 子作りとか、と笑顔でお師匠は言い放つ。


 何度もいうけれど、今は朝だ。

 家族の団欒のような穏やかな空気漂う、爽やかかつ穏やかな朝だ。

 間違っても、そんな話題が出るようなタイミングでもない。


 お師匠の直球の発言に、アウラはしばし唖然とする。ミーネさんなんか、真っ赤になってうつむいてしまった。かわいそうに、と思いつつ、ぽかんとしたアウラに不安が募る。

 想像もしていなかったというよりも、出鼻をくじかれたような、その表情に。

「……駄目、か」

 あぁ、やっぱり『待つ』気はなかったようだ。

 お師匠、いい質問でした。グッジョブ――とは、まさにこのことだろう。

「母子共に健康でいてほしいなら、あと数年は待たないとねー。実際に出来る出来ないはともかくとして、出来かねないような行為も禁止だよぅ。女の子はね、とてもデリケートなの」

「……ダメなのか? 本当に?」

「ダメです」

 アウラは完全に、今すぐに父親になる行為をするつもりだった……のだろう。

 むしろ、成人を焦ったのはそっちが目当てだったんじゃないだろうか。ミーネさんが成人してしまったから、これで手を出しても大丈夫的な。同性ながら、最悪だといわざるを得ない。


「ミーネ、ダメか?」

「だ――ダメにきまってんじゃないのっ、ばかーっ!」


 ちら、とミーネさんを見たアウラは、赤面した彼女に横っ面を張り倒す。そこまでは乙女心というのものを想像するに、ひっぱたかれても仕方ないよなぁ、と僕は思ったけど。

 その後、押し掛けてきたアウラの身内の女性陣――お姉さんや妹に、本音を言った彼がしこたま説教と折檻を施されているのを見て、さすがに少しだけかわいそうだな、と思った。


「子供は早く作らないと、俺の理性が持たない……どうしよう、ミーネ」

「そんなの知るかあああっ!」


 いや、やっぱりもっと殴られた方がいいよ、うん。

 見た目だけは立派な成人男性なのに、中身はどう考えても子供だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ