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手乗り魔女と異世界からきた弟子  作者: 若桜モドキ
森の中の生活編 -2-
43/74

43.真珠と小判の詰め合わせ

 さて、パメラさんからのとんでもない贈り物を、活用することにしたわけだけど。

 大体の動きはオモチャの拳銃と同じ感じで、操作に関してはまったくといっていいほど問題は無かった。そして、僕の前に立ちはだかったのはその弾丸の作成という難問。


 普通、魔法式は全部で五色。

 赤、青、緑、白、黒、この世界の魔法は基本、この五つで構成されている。


 この中で弾丸として利用可能なのは、他の魔法式を詰め込む仕組みの【黒色魔法式】だろうというのは、さすがの僕もわかっていた。他の触媒は、そもそも弾丸にならないだろう、と。

「基本、触媒は粉末だったり液体だったりするからねー」

 ですよね、と僕はお師匠の作業を手伝いつつ、苦笑した。

 鉱石をそのまま使う魔法式もあるのだが、あの拳銃の弾丸として使えるサイズに加工してしまったら、おそらくはほとんど効果がでないだろうから意味が無い、とのこと。

 なのでテキパキと、【黒色魔法式】の触媒を作成していく。

 とりあえず、弾丸にこめる魔法式は、攻撃用ではない系統の魔法ということにした。

 音と煙で破裂したのがわかる、主に獣よけに使う魔法式を流用するという。

 あくまでも試作品なので、火などを使うのは危険すぎるという、お師匠の判断だった。幸いにもたくさん材料は用意されているので、じっくりと腰をすえて研究できそうだ。


 ――のだが、ここで一つ問題が生まれた。

 どうやって弾丸を撃ち出すのか。


 たぶん、元々は火薬か何かで撃ち出していると思う。この世界にも火薬はあるが、こんな実用性があるのかも怪しいものに使えるほど、安価なものではないらしい。

 そうなると、その部分さえ魔法式で何とかするしかない。


 そこでお師匠は【混色魔法式】はどうかな、と僕に提案した。

 名の通り、複数の魔法式を組み合わせたものだ。

 その分不安定で、魔石を使わないと充分な威力にならないのだけれど、普通なら二回使わなければいけないところを一回で済ませられるので、お師匠を含め使える魔法使いは多い。

 つまり【赤色魔法式】を火薬代わりして撃ち出して、別の魔法式を着弾と同時に展開されるように調整すればいい、というわけ。言葉にすると簡単そうだけど、かなり面倒だとか。

「でも弟子くんにはセラというおししょーさんがいるし、だいじょぶだよぅ」

 とん、と自分の胸を叩いて、まっかせて、と笑うお師匠。


 とりあえず、お師匠に手伝ってもらいながら弾丸の試作品を作る。絵に描いたような形状の弾丸を、調合を変えつつ全部で六つ。若干震える指先で、きちんと装填していく。

 適当に的を用意して、それを狙って引き金を引く。

 最初と次は、的と僕の中間あたりで、爆竹のような音と煙を残して消失した。


「外側のコーティングが、ちょびっと甘いみたいだね」

「じゃあ、次いきますよ」


 僕の服の胸元にすっぽり納まったお師匠と、そんなやり取りをしながら、僕は次々と引き金を引いた。しかし、どれもこれもが的にぶつかる前に、魔法式を展開させて消えていく。

「まだまだ、時間がかかるっぽいねー」

「すみません、ふがいない弟子で」

 構えていた腕を下ろし、僕は思わずため息を零してしまった。

「いいよいいよ。セラはいつもお世話になってるもん。これくらいアサメシマエだよ」

 お師匠は早速結果を書きまとめるのか、家の中へ飛んでいく。僕は銃に弾が残っていないのをしっかりと確認してから、家へ向かって歩き出した。



 この贈り物といい、お師匠の存在といい。

 僕って、ものすごく恵まれた環境にあるんじゃないだろうか。

 それも不相応なぐらいに。

 見ず知らずの異世界に迷い込み、善良なお師匠に拾われて同居をし、こちらのことをいろいろと丁寧に教わって。我ながら、幸運が続くのも限度があるだろうと思ってしまう。


 だからこそ、ふがいない自分が僕は嫌になる。

 こんな道具一つ、ちゃんと扱えないことが情けなくて。


 がんばらないといけない。

 こんなに僕を受け入れてくれた、あの人の為に。

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