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手乗り魔女と異世界からきた弟子  作者: 若桜モドキ
森の中の生活編 -2-
36/74

36.はた迷惑なお裾分け

 ある日、僕が二階の部屋からリビングにくると、お師匠が荷物を前に百面相をしていた。

 神妙だったり、真っ赤になっていたり、ぶんぶんぶんと首を左右に振ったり。僕がいた位置からは背中しか見えないのだけれど、明らかに百面相しているとわかる仕草だった。

 どうやら、僕が二階にいる間にミーネさんが、荷物を届けにきたらしい。

「……」

 明らかにプレゼント、といった梱包の箱の前。

 お師匠はその中身を手にとって、百面相をして、戻して、手にとって……を、ずっと繰り返していた。見ていてかなり面白いのだけど、いつまでも続けられてもそれなりに困る。


「お師匠」

「っびぎゃあああああ!」


 ただ声をかけただけなのだが、お師匠はそれはそれはすさまじい悲鳴を上げた。

 もはや何かの鳴き声のようなすごい声。

「でで、ででで……でで!」

 お師匠はヒトが理解できる言語を失って、何かを必死に箱の中へ。慌てて隠されたそれは衣服らしい、ということしかわからない。まぁ……お師匠への贈り物だから、僕には無縁だ。

 とりあえずは、その時間はそう思っていたんだけど。




「で、弟子くんはこういうの……嫌いなのかな」

 などといいながら、お師匠はモジモジとしている。珍しく大きい姿をしているなぁ、と思っていた僕は、いきなり部屋に入ってきたお師匠の姿に言葉を失った。


 時刻は夜中も近いころあい。

 部屋の中には、魔法式で灯るランプの明かりだけ。


 そのほのかにオレンジがかった明かりの中、お師匠はなぜか僕の前にいる。さぁ寝ようかとベッドに入ったところだった、僕の目の前。つまりベッドの上に。

 お師匠が着ているのは、いつものジャージのようなパジャマではなかった。


 丈の短い、ワンピースのような衣服。

 すそにはレースが縫いつけられていて、黒というカラーもあって大人っぽい感じだ。びっくりするほど白い足が、より白く目の中にうつりこむ。これは何と言うか……妖艶、というか。


 しかしいかんせん……お師匠は、あまりに幼い姿をしている。十歳前後には、その格好は少しムリがあるんじゃないかなぁとか、聞かれたら怒られそうな感想が真っ先に浮かんだ。

「何しにきたんですか……」

「え、えっと……その」

 もじもじ、とお師匠は視線をそらす。

 なんとなーく、あの百面相していた荷物の中身が、今来ているネグリジェなんだろうということは悟ることが出来た、しかし、どうしてお師匠がここにいるのか理解できない。

「ゼロがね……あ、知り合いの使い魔なんだけどさ。二着もらったから一着あげるねって送ってくれたんだよ。てっきりローブだと思ったらこんなのでさ、せっかくだから着たの」

「いや、そうじゃなくて」

「ねぇねぇ、かわいい? ほら、レースでひらひらだよぅ」

 と、お師匠はただでさえ短いすそをつまみ上げる。

 慌てて僕はその手を押さえて、中身の露出を阻止した。


 誰か、誰でもいいから、どうしてお師匠にソッチ系の常識を教えなかったんだろう。僕だって健全な男子高校生だったわけで、こういうのはさすがにヤバいわけで、うん。


「弟子くん?」

 などといって、小首をかしげるお師匠は、かなりの攻撃力があった。

 とにかく今すぐに、ここから退却していただかなければ。


「とりあえず部屋に行ってさっさと寝てください今すぐに」

「……かわいくない?」

「かわいいです、かわいいですよ」

「じゃあ、添い寝していい?」

「どーぞどーぞご自由……え?」


 流れるままに適当に返事をし、とんでもない選択肢をチョイスしたと気づいたのは、満面の笑みで僕に飛びついてくるお師匠の、その身体を受け止めてベッドに沈んだ瞬間だった。



 ……えぇ、次の日は寝不足ですとも。

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