表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手乗り魔女と異世界からきた弟子  作者: 若桜モドキ
森の中の生活編 -2-
33/74

33.ハルの手紙

 家に影を落とす巨体。

 そして窓を振るわせる風。

 わざわざ確認するまでもなく、それはミーネさんと愛ドラゴンのアウラだ。黒いうろこにほっそりとした、けれどたくましい身体は、僕から見てもこの上なくかっこいいと言える。

 名前は明らかに女性のそれだけど、アウラは『彼』――つまりオスだ。


 ドラゴンとその乗り手は同性であることが多いらしい。そして荷物運搬の場合、気質が穏やかなメスが選ばれるのがほとんどだという。街中で暴れたりしないように、という理由で。

 現に『魔女宅配』でも、オスのドラゴンに乗っているのはミーネさんだけだそうだ。

 その理由を、僕は前に尋ねたことがある。

 するとミーネさんは、にやにやデレデレしながら。


「どうせならイケメンの方がいいじゃないっすか」


 ……と、答えてくれた。

 実にいい笑顔だった。

 今日は、そんなミーネさんとの一週間ほどおきの再会だ。依頼書を含む手紙の類も彼女が運んでくれているので、彼女の存在がこのアトリエの生命線とも言える。


「こんちゃーっす」


 わずかに地面を震わせてドラゴンは着地し、ひらりとミーネさんが飛び降りた。

 いつも三つ編みにしている髪は、今日は結わずにそのままだった。

 風圧で乱れた髪を適当に掻き上げながら、斜めがけのかばんから封筒を取り出し。

「はい、セラさんとお弟子さんにお手紙ですよ」

「手紙?」

「ハルちゃんからっす」

「え? ハル……から?」

「ハルから手紙ー? みるみるみるー!」

 遠くにいたお師匠が、荷物も放り出して飛んでくる。

 いつものように僕の頭にぺたりと張り付き、よじ登るお師匠にもよく見えるよう、僕は受け取った封筒の中身を広げる。一応読むのはできるんだけど、時間がかかってしまうからだ。


「えーっと――セラお姉ちゃん、お兄ちゃん、こんにちは。ハルです。メルフェニカの学校は楽しいです。お友達もできたしお勉強もわかるようになりました。先生も優しいです」


 そこにはハルの近況が、とても楽しそうに綴られていた。

 僕が知る学校生活と変わりないその内容に、思わず元の世界が懐かしくなる。

「ハルちゃん、元気そうだったっすよ。また会えるといいですねぇ」

「そう、ですね……いつか、また」

 その時のハルは、どんな風に成長しているのだろうか。

 成長した彼女の姿を思い描き、僕も負けていられないと思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ