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手乗り魔女と異世界からきた弟子  作者: 若桜モドキ
森の中の生活編 -2-
29/74

29.迷いの森

 ……さて。

 僕は現在『迷子』だ。

 ちょっと散歩のつもりで森に入ったのはいいんだけど、見事に迷った。周りは同じような木ばっかりだし、道らしい道もない。不用意といえば不用意なんだけど……うん。

 でもこんなに迷いやすい場所だとは思わなかった。

 お師匠はしょっちゅう、ここを散歩してるのにな……。


「上からだと、目印か何かがあるのかな」


 などと呟きながら上をみるも、そこには覆い茂る木の葉っぱ。

 とても違う景色が広がっているようには思えない。むしろ地上の方が、まだわかりやすいんじゃないかとさえ思う。むき出しの岩や、木の実がなっている茂みとかがあるから。


 まぁ、そんなわけでしばらくは飢え死になんてことはない……と思う。

 思いたい。


 とりあえず僕は、茂みのそばに腰を下ろした。

 僕の記憶が正しければ、こんな形の木の実をお師匠が持ち帰ったことがあった。つまりこの辺りはお師匠の『庭』の可能性がある。ヘタに動き回るよりは、それを期待する方がいい。


 後できることといえば、耳を澄ますことだけだ。

 獣という危険を察知するためでもあるし、お師匠の声やヒトの物音を聞き取らないと。

 さて、後はどれくらいすぐに見つけてもらえるか――。


「あれあれ弟子くん、なにしてるの?」

 ……。


「お散歩なの? つかれた?」

「えぇ、まぁ……」


 僕の目の前にはお師匠。

 その向こうの向こう……木の葉の合間には、実に見覚えのある屋根。たぶん、全力で走れば十数秒でたどり着けそうな距離だ。いくら木の葉が合ったとはいえ、どうして……。


「もう大丈夫だと思うけどねー。念のために、えいえいっ」

 と、お師匠は僕の頭上をくるくると旋回する。


 それから、いつものように肩に座って。

「この森ねー、精霊とかいっぱいだから迷うっていうか、迷わされるんだよねー。すぐそこに目的地があっても、隠されて気づかなかったりね。ただの悪戯だから、遭難はしないけど」

「はぁ……」

「だから、お散歩するならセラと一緒にね。セラと一緒だと悪さされないから」

 任せてよぅ、とお師匠は言ってくれるけど……。


 たぶん、当分僕は森に行かないと思います。

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