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手乗り魔女と異世界からきた弟子  作者: 若桜モドキ
森の中の生活編 -2-
28/74

28.セラ様と呼びたまえ!

「呼びたまえ!」

「……は?」


 のんびりとした朝。

 お師匠はおはようの挨拶よりも先に、そんな叫びを放った。

 さらには僕の目の前で、むんっと腕を組み。

「思うに弟子くんは、セラへの敬いが足りない気がするんだよねー」

 などと、実に心外なことまで言い出す。

 何か至らないところがあったのだろうかと考えるけれど、特に思い当たらない。

 日々の食事には決して手抜きなどしないし、合間に行う魔法の勉強だって――実技がからっきしというところ以外は順調だ。少なくとも調合に関しては、精度が上がっている、はず。

 ましてや敬いの心が足りないなんて、あってはならないことだ。


 なれない料理に勤しんだのも、爆発に咽ながら使えもしない魔法の勉強をしたのも。

 すべてお師匠ただ一人のためなのに。


「ちゃんと敬ってますよ」

「ホントかなー? セラのこと、愛玩動物みたいに思ってない?」

「……」

 思わず、無言になってしまった。


 確かにお師匠のことを可愛がるのは僕の趣味の一つだ。

 指先や手のひらで頭を撫でると、まるで猫のように目を細める姿とか、たまらない。特に意味も理由もなく、無性に撫でたくなることもある。だって、お師匠がすごくかわいいから。

 だから、 つい愛玩してしまうわけで……。


「やっぱりー! セラはおとなのレディなんだよ! きっとたぶん弟子くんより年上のはずなんだからーっ。弟子くんのバカバカバカー! セラのこと、ペットとか思ってたんだああ!」


 目の前を上下左右に飛び回るお師匠。

 最後に僕の胸に思いっきり体当たりして。

「弟子くんのバカ」

 そのまま、動かなくなってしまった。

 どうやらすねてしまったらしい。

 これはこれでかわいいなぁ、とか思ったりもするんだけど、さすがにそれを口にすると後が厄介だし、このままでいられても何かと困るので、なんとか機嫌を直してもらおう。


 とりあえず、指先で後頭部を撫でてみた。

 すると、かすかにうれしそうな笑い声が聞こえる。


 この程度で単純だとか、僕は思わない。むしろこの程度で機嫌が良くなるくらい、僕を好ましいと思ってくれているんだと自惚れてみる。それは、この上ない喜びだ。

 まるで蝶のようにふわりと僕から飛び立ったお師匠は、今度は僕の手に止まった。

 手をおわんのように丸くすると、次はその中にすっぽりと納まる。



「で、イヤですか?」

「……ちこうよれ、くるしゅーない」

 ご満悦の様子で僕の手の中にいるお師匠。

 そんなんだから、ついつい愛玩したくなるんですよ。

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