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手乗り魔女と異世界からきた弟子  作者: 若桜モドキ
森の中の生活編 -2-
27/74

27.美味への欲は止まらない

「おーなーかーすーいーたーよーぅ」

「あなたは子供ですか」


 じったんばったん、と僕の肩に乗って暴れるお師匠。

 庭弄りが長引いてしまって、今日の夕食は一時間ぐらい遅れている。お師匠は基本、決まった時間にご飯を食べているので、身体がその時間に合わせるように空腹になっているらしい。


 それに遅れてしまったのだからさぁ大変。

 ハラヘリモードのお師匠は、買って買ってと駄々をこねる子供と同類だ。

 正直、耳元で騒がれるのでかなりキツい。

 つまんで他所におくにせよ、飛んでくるので無意味だし。


 なので僕はおとなしく、騒音に耐えつつ料理続行。しばらくすると疲れて、しょぼーんと静かになってくれるし。そう……ほんの少し、耐えればいいだけの話だ。

 案の定、しばらくわめいて静かになったお師匠を肩に乗せ、僕は切った野菜をバターを溶かしたフライパンに入れる。タマネギとにんじん、あとブロッコリーのような何か。


 一通り火が通ると、傍らに置いてある水の入った鍋に入れて火の上に乗せる。

 その間にフライパンにバターを足し、鶏肉を皮を下にして並べた。


 これはお師匠が罠を仕掛けて取ってきたらしい。……あぁ、すっかり鳥や魚ぐらいなら平気でさばけるようになってしまった。慣れとは実に恐ろしく柔軟なものだと僕は知った。


 鳥の表面がこんがりしたら、それも鍋に入れる。

 最後の仕上げに、僕はフライパンにバターと、そして小麦粉を入れた。傍らには牛乳というよりも生クリームに近い牛乳が、ずっと前から出番を待っている。


 いま作っているのは、最近になってやっと焦がさなくなったホワイトソース。

 そう――今日のメニューは、シチューだ。


「お師匠は鍋の方、見ててくださいね」

「うー」

 だるそうな返事をしつつ、ヒトの姿になったお師匠は僕の隣に立つ。今にも死にそうなしょんぼりモードのまま、それでもテキパキとあくをすくっては撤去する作業をしている。

 一通りソースが完成し、野菜や鳥もくったりと煮えて。

「お師匠、そこどいてください」

「うー」

 元の大きさに戻ったお師匠をまた肩に乗せ、僕はフライパンの中身を鍋に入れた。ゆっくりとおたまで巻き混ぜ、一度味をみる。……すこし牛乳と塩、ついでにコショウを入れた。


「んー、んふふー。弟子くんのおりょーりー」


 香りですっかり元気を取り戻したのか、お師匠はご機嫌だ。

「そんな喜ぶほどのことですか? 食事はいつも僕が作ってるのに……」

「だってセラは、弟子くんのお料理が好きなんだもん」

 ふわり、と鍋を覗き込みながら、お師匠はうっとりしている。


「シチューは甘くてトロトロで、かれ? っていうスパイシーなのもおいしいし。セラ、煮付けたお魚があんなにおいしいなんて思わなかったよー。だから弟子くんのお料理が好きなの」


 たまんないよぅ、とお師匠はどこか虚空を見上げて呟く。

 ……どうやら、餌付けしすぎたようだ。

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