26.巨大野菜の恐怖
見よう見まねもバカにできないと、僕はこの世界に来て常々思っている。
百聞は一見に、とは言わないけれども、見るだけでも見ておくと意外と何とかなったりするものだ。特に意味もなく、畑をいじくる番組を見ていた過去の自分を、僕は褒め称えた。
ある程度『見まね』ができるなら、そこからは日々の積み重ねと経験でカバー。
そうして作られ、日々拡張される僕の家庭菜園。素人臭いながら、そこそこ見栄えも良くまとまっていると自負している。お師匠も、弟子くんは凄いねーと褒めてくれるし。
「ふぅ……こんなもんか」
僕はスコップを傍らに置いて、真新しい畑を眺める。
この前、ミーネさんから購入した野菜の種を早速植えてみた。その形状と味などから、ソレがタマネギに限りなく近いものであるとわかり、少々調子に乗って多めに植えた。
タマネギはいろいろと使い道があるし、そこそこ保存が利く。
多めに作っても、消費するのに苦労はしないはずだ。
「おつかれさまー」
お師匠が僕のそばに飛んでくる。少し顔がすすで汚れていた。どうやら『お仕事』をしていたらしい。ハルがいる間は、危ないからとやめていたのを、最近再開したところだ。
この畑も本当は、ハルと一緒に作業しようと思っていたのだけど……仕方ない。
今頃はがんばって勉強しているのだろうか。
便りがないのがなんていうけれど、落ち着いた頃合に手紙を出そうと思う。向こうもこっちを心配しているかも知れないし、一番近くにいる知り合いは、たぶん僕とお師匠だ。
パメラさんはシェルシュタインの里にいる。
海の向こうはあまりにも遠い。
ちなみに手紙のことはまだお師匠には何も言ってない。あくまでも出してみようかなって感じだし、直接会いにいけるならそっちの方がいいかもしれないとか思ったりもしている。
どっちにせよ、お師匠を経由して準備することになるだろう。だから忘れないうちに話しておこうと思ったけど、お師匠はどうやら目の前のご馳走予備軍しか入っていないようで。
「ねぇねぇ弟子くん、ここには何を植えたの?」
「タマネギの一種だと、ミーネさんは言ってました」
「ふぅん……」
「タマネギはいろいろ使えますから、料理のしがいがあると思いますよ」
「そーなの?」
「えぇ。焦げない程度に焼いて煮込んでスープにしたり。あとは他の料理に『隠し味』として混ぜてみたり。薄く切って水にさらして、サラダに入れるのもいいですよね」
「……いいねぇ」
「魚にもあうと思いますよ」
「お魚なら、手に入るからおいしく食べられそうだねぇ」
「たくさん植えましたからね。いろいろチャレンジしてみましょうか」
と、まだ芽も出ていない畑を眺め、ニヤニヤする僕らはさぞかし不気味だろう。
この後、タマネギが実ったのはいいけど、大きさが僕の顔ぐらいあるとんでもない品種だと知って、チャレンジし続けるもすぐにネタ切れを起こすという悲劇を味わうのだけど。
それはもうちょっと先の話になる。