25.庭の手入れ
畑を拡張した。
いろいろとお師匠が拾ってくるから、スペースが手狭になったからだ。
一応、加減してくださいとは言ったんだけど……。
「……さすがに、木の苗は」
僕の前には無造作に引っこ抜かれたままの、哀れな木の苗が三つほど。果樹は充分なほどにあるからとってこなくてもいい、と言った僕の言葉は右から左へ押し流されていったようだ。
とりあえず開いたスペースに穴を掘って、いつものように苗木を植えていく。
……たぶん、本職の人がみたら激怒するか哀れむかのどっちかだろう。
まさに『植えるだけ』だから。
しかし僕にもお師匠にも、こっち系の知識はあまりない。一応、申し訳程度に肥料をたっぷりとやるので、それなりに成長して、それなりの数と味の実をつけてくれているけども。
そんなの偶然運が良かっただけかもしれないわけで。
「だから持ってこないでほしいって、言ったんだけどなぁ……」
三本目の苗を植えながらため息を一つ。
ちなみにお師匠は家の中で、収穫したての果物の選別中だ。取れた果物は基本的に生で食べる用と、料理に使う用などに分けている。中途半端なのは、全部まとめてジャムにする。
ジャムはパンに塗ったり、料理に使ったり。
肉類のソースに使うとなかなか美味なものになる、とお師匠は言う。確かにフルーティでもとの世界で市販されていたソース類と、何ら変わらないおいしさの物に仕上がっていた。
まぁ、肉なんてそうめったに手に入らないんだけど。
なので基本はパンにつけて、時々ドレッシングに使うぐらいか。
パン食なので結構消費が激しく、作っても作ってもすぐになくなってしまう。
「弟子くーん、お仕事終わったよーぅ」
お師匠がぴゅーんと飛んできた。
「こっちも終わりました。じゃあ一息入れたら続きをしますか」
「そだねー。今日はセラがお茶を淹れるよー」
僕の目の前でくるんとターンし、お師匠はまた家の中へと戻っていった。今いるのはちょうど家の裏手で、こちら側に面する扉はなく、窓から出入りできるのが少しうらやましい。
僕は汚れた皮の手袋と、スコップなどを適当な場所に置いて歩き出す。
かすかに紅茶と、焼き菓子をあぶったいい香りが漂ってきた。早く早くー、と僕をせかす声が窓の向こうから聞こえる。再突撃されないうちに、僕は慌てて家の中に戻った。
そこにはヒトの姿のお師匠が、意味もなく魔法で茶器を浮かしつつお茶を淹れていて。
「さぁさぁ弟子くん、そこに座りたまえよ」
得意げに笑う姿があった。
そういうところがたまらなく可愛いなぁ、と思いつつ。そんな本音を知られたら大暴走されて理性が大迷惑なので、いつものように淡々と僕は椅子に腰掛けるのだった。