鳴らなかった理由|掌編
掲載日:2026/05/01
短い実験作です。
電話の呼び出し音が鳴る。
画面に表示された名前に気づいた。
もう終わったと思っていたのに。
昔の事が頭をよぎる。
楽しかったこと、悲しくかったこと、辛くて眠れない夜のこと。
忘れていたはずの想いに、まだ胸が熱くなる。
本当は分かっていたのに、電話に出たくなかった。
電話に出れば、また同じ話の繰り返しになってしまう。
でも、かけ直した方が良いのだろうか。
過去の思い出に疲れ果て、身体に力が入らない。
着信の履歴からは、今も目が離せない。
電話の呼び出し音を待つ自分に戸惑っていた。




