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3 バズさん

 息が止まった。

 いや、本当に止まってたかもしれない。肺が動かない。指も冷たい。


 だって今――俺の部屋に、『画面の中の美少女』が実体化してる。


 テレビの前。


 そこに、今朝動画で見た通りの少女が立っていた。


 黒髪はゆるく揺れて、白いブラウスが月明かりを透かしてる。

 膝丈スカートがふわっと広がって、まるで空気の中に浮いてるみたい。


 ……怖い、はずなのに。美人すぎて脳がバグる。


「……あなた、人の部屋で勝手に撮らないでくれる?」


「えっ、あ、え!? えぇぇぇぇっ!?」


 声、出た。変な声出た。


 彼女――というか幽霊? ――が眉をひそめた。


「うるさいわね、近所迷惑よ」


「う、幽霊が……近所……気にすんなよ!?」


「気にするわよ。うるさいの嫌いなの」


 あまりにも普通に喋るもんだから、怖いよりツッコミが勝つ。

 ていうか、『うるさい』の基準が生きてる人と一緒ってどういうことだ。


 俺は床を指さして叫んだ。


「ま、ま、待って待って! お前……どう見ても、幽霊だよな!?」


「そうよ?」


「『そうよ?』――って即答かよ!」


「何でそんなに驚くの? あなたが住んでる部屋、私の家でもあるのよ」


「……は?」


「契約上は、ね」


 さらっととんでもないこと言った。


 幽霊が『契約上の同居人』とか、「賃貸トラブル開幕|(新章)」すぎる。


「ちょっと、落ち着いてもらえる? あなた、顔色悪いわよ」


「そりゃあ悪くもなるわ! 開幕三日で幽霊出るとか聞いてねぇ!」


「うるさい。まず座って」


「……はい」


 なぜか素直に正座してしまった。幽霊の威圧感ってすごい。


 少女はため息をつき、髪を耳にかける。

 その仕草が妙に丁寧で、なんか『上品』だった。


「名前、白瀬澪。あなたは?」


「……しん、じょう、ゆうま……です」


「新城ね。ふうん。じゃあ今日から、よろしく。ルームメイトさん」


「いや、よろしくできるかっ!」


 けど、彼女はそのツッコミも軽く流し、部屋を見回す。


「思ったより片付いてないのね」


「初の引っ越しなもんで!」


「洗濯物、また畳んどいたわ」


「あれやっぱお前かああぁぁ!」


「そんなに怒らなくてもいいでしょ? 雑だったから整えただけよ」


「洗濯物触る幽霊って何!? 怖い方向違うだろ!」


「清潔な生活は大事よ。……死んでもね」


「――説得力うぅ!」


 ……いや、なんだこれ。ホラーかコントか。


 気づけば、俺の恐怖はすっかりどこかへ行っていた。


 澪――そう名乗った少女は、俺の机の上に置かれたスマホをちらりと見た。


「それ、昨日の動画よね?」


「えっ、あ、うん……」


「消しておいて」


「な、なんで?」


「だって、私、写ってるじゃない」


「いや……むしろそれが目的なんだけど。あと、バズるかもしんないし……」


「『バズる』って? 宇宙のかなたまで行っちゃう感じ?」


「バズさん関係ねぇからぁっ!」


 そのズレっぷりに、ちょっと笑ってしまう。


 彼女は首を傾げて、不思議そうに俺を見た。


「あなた、変な人ね」


「どの口が言うか」


「幽霊の口よ?」


「お前が一番変だわ!」


 言い合いながらも、どこか空気がゆるい。

 気づけば、俺の中の『怖い』は消えて、妙な『生活感』が生まれていた。


「それにしても……なんで俺の部屋に?」


 落ち着いてから、改めて聞く。


 澪は少しだけ視線を伏せ、言葉を選ぶように呟いた。


「……たぶん、ここが『私のいた場所』だから」


「……いた、って?」


「前に、ここで暮らしてたの。いつからだったかは、思い出せないけど」


 急に空気が少しだけ冷たくなった。

 冗談抜きで背筋にぞくりと寒気が走る。


「そ、それって……つまり、お前……」


「そう。たぶん――ここで死んだのよ、私」


 静かな声だった。

 なのに、その言葉は金属音みたいに耳に刺さる。


 空気が止まって、時計の針の音がやけに大きく響く。


 ……でも、次の瞬間。


「ま、でも細かいことはいいわ。洗濯物、畳み終わったし」


「切り替え早っ……」


 ホラーの余韻が一瞬で吹き飛んだ。


 俺は思わず頭を抱え、笑いながらため息をつく。


「……もういいや。俺、今日から『幽霊付き物件』に住むってことで、受け入れる」


「順応早いのね」


「まあ……可愛いしな」


「へ?」


 口をついて出た言葉に、自分で赤面した。


 澪は目を瞬かせ、ほんの少しだけ頬を染める。


「そ、そんなこと言って……気持ち悪いわよ」


「え、あ、あざーっす? ――じゃなくてっ、辛辣だな、おいっ!」


「今、ちょっと成仏しようかしら」


「やめろ! そんな軽率な成仏すんな!」


 気づけば夜は明けていた。


 俺の初めての一人暮らし四日目は――『同居人(幽霊)あり』で幕を開けた。


 そしてこのときの俺はまだ知らない。

 この生活が、ただの『同居』じゃ終わらないってことを――。


みなさん、金縛りって経験したことありますか?

あの状態になったとき、決まって視界の端の方に何かの気配を感じるのって”仕様”ですかね?

めちゃくちゃ怖いんですけど。

ですが、わたくし臂りきは、常に高次元的存在との接触を夢見ているスピリチャラーでもあります。

なので、いつでも幽霊様方のご来訪をお待ちしております。

(できれば美少女の方でお願いします……)


あれ、金縛りも夢なんですかねぇ……。

なにか不思議な体験をされている方がいらっしゃいましたら、是非メッセージで教えてください!

共に死の恐怖を克服しましょう!

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