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織女の光

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ルカの意識は闇に沈みかけていたが、真紅の髪の女性の姿が彼の心に一筋の光を投じた。彼女は背を向け、ローブの男と対峙していた。彼女の手には光る糸が絡まり、それはまるで星の光を紡いだ布のように輝いていた。彼女が一歩踏み出すと、星の狭間のガラスの地面が共鳴し、澄んだ音が響き渡った。




「この子に触れるな、闇の使者。」女性の声は静かだが、抑えきれない怒りを帯びていた。「星の狭間は私の領域だ。ルカの心を汚すことは許さない。」




ローブの男は口元を歪め、銀の剣を構えた。「織女よ、君の時代は終わった。星の力を握るのは我々だ。鍵とこの少年を渡せば、穏便に済ませてやる。」




女性――星の織女と呼ばれた存在――は静かに笑った。「穏便?お前のような者にそんな言葉は似合わない。ルカの鍵は彼自身のものだ。力ずくで奪うなら、私が相手になる。」




その瞬間、織女の手から放たれた光の糸がローブの男を縛り上げ、剣を弾き飛ばした。男は驚いたように後ずさりしたが、すぐに黒い霧をまとい、姿を消した。「これは始まりにすぎんぞ、織女。外の世界はすでに動き始めている。少年が目覚める前に、すべてを終わらせてやる。」




織女はルカの側に跪き、彼の額にそっと手を置いた。銀色の血が流れ出る肩の傷口サー。彼女の指が傷口に触れると、ルカの体から銀色の毒が抜けていくのが見えた。「耐えなさい、ルカ。まだ君の物語は終わらない。」




ルカの意識がわずかに戻り、織女の顔がかすかに見えた。真紅の髪が星の光を受けて輝き、翡翠色の目が彼を優しく見つめていた。それは…母の目と同じ色だった。




小鳥が織女の肩に舞い降り、鋭く叫んだ。「早く、織女!ルカの心が持たない!毒が深く入りすぎてる!」




織女は頷き、ルカの傷口に光の糸を巻きつけた。糸はまるで生きているように傷口を包み込み、銀色の血を吸い取っていく。ルカの痛みがわずかに和らいだが、意識はまだ朦朧としていた。




遠くで、星の狭間の空が揺らぎ、紫の靄が渦を巻き始めた。織女が顔を上げ、厳しい表情で呟いた。「奴らが…来る。ルカ、起きなさい。鍵を守るんだ。星の狭間が崩れる前に!」




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ルカがはっきりと目を醒ましたときには、女の姿はなかった。その代わり、小鳥が彼をつついた。


「ほら早く!ここを出るんだ!」


ルカはまだ痛む肩を押さえ、よろよろと立ち上がった。


「あれ…?さっきの人は…?」


「さっきの人?寝ぼけたこと言うな。ここには君と私しかいなかった。」


小鳥はルカにそう告げた。


二人は崩壊していく世界を背に、新たなる扉へ走った。


そしてとうとう、それの前に来た。しかしルカは足を止めていた。


「…見たことある…。この扉。何度も…何度も何度も…。」


ルカの目から涙が溢れる。自分でもなんで泣いているのか分からなかった。


小鳥が後ろを振り返ると、急速に向こうから足元の地面が陥落していき、紫の雲が雷鳴をはらみ、星々が乱れ狂うのが見えた。はるか遠くの方から、黒い集団が迫ってきているのが分かる。


「ルカ!早く鍵穴に鍵を挿すんだ!」


ルカは困惑しながらも鍵穴を探した。


「…鍵穴が…ない!」


押してみても、引いてみても開かない。鍵がかかっていることは事実だ。


ルカはパニック状態になりかけていた。背後からは世界が崩壊していく凄まじい轟音が近づいてきている。轟音に混じって、奇怪な叫び声も聞こえる。


「…ルカ、まだ躊躇っているんじゃないのか?」


小鳥はルカの肩に降りたった。


「そんなわけないじゃないか!こんな状況で!」


ルカは怒ったように反論し、闇雲に鍵穴を探し続けた。


「落ち着いて、ルカ。思い出すのよ。鍵には何て書いてあった?」


小鳥は諭すように語りかける。


「…夜の扉を開け、世界を紡げ。」


「君の目的は?」


「…僕が扉を開けるんだ!」


ルカが叫んだ瞬間、そこに鍵穴が現れた。まるで最初からあったかのように、扉に馴染んでいる。


ルカは鍵を差し、星の狭間を後にした。

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