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最初の試練

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紅の小鳥は、影の小道を進み始めた。月光が木々の隙間から差し込み、地面に不思議な模様を描いていた。道は思ったより狭く、両側には黒々とした茨がうごめくように絡み合い、まるで生きているかのようだった。ルカは鍵を握る手に力を込め、胸の鼓動を抑えながら一歩一歩進んだ。




小鳥はルカの肩に戻り、鋭い目で周囲を見回していた。「気をつけな、ルカ。この小道はただの道じゃない。影の小道は心を試す場所だよ。恐れや迷いがあれば、道そのものが君を飲み込むかもしれない。」




「飲み込むって…どういうこと?」ルカは小鳥をチラリと見て尋ねたが、小鳥はただ首を振って「見てな」とだけ答えた。




しばらく進むと、道の先に古びた石の門が現れた。門には星座のような模様が刻まれ、中心には鍵穴がぽっかりと空いていた。ルカが鍵を取り出して見比べると、鍵の形がぴったり一致しているように見えた。しかし、門の周囲には不気味な霧が立ち込め、かすかな囁き声が聞こえてくる。「戻れ…進めば後悔する…」と。




ルカの足が一瞬止まった。小鳥が小さくさえずった。「どうする、星の子?その鍵を差し込むか、それとも引き返すか。君の心が決めるんだ。」




霧の中から、突然、黒い影がゆらりと立ち上がった。それは人の形をしていたが、目だけが赤く光り、ルカをじっと見つめていた。ルカの背筋に冷たいものが走ったが、鍵を握る手は震えなかった。


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よく見ると、その影はルカ自身だった。同じ背丈。同じ服。同じ顔。ただ、目だけが違う。黒い影の真紅の目は、ルカの翡翠の目には似ても似つかなかった。




その真紅の瞳を見るうちに、ルカの胸の奥の奥はゆっくりと、だが着実にかき乱されていった。




もし、森の外に何もなかったら?もし、この森から出られなかったら?もし、この世界に僕一人だったら?…もし、この子が僕の命を奪ったら……?




不安が、ルカの心を満たしていく。膝が震えだす。真紅の瞳以外の色が消える。森のざわめきも遠のいてゆく。


しかし、その真紅の目から目が離せなかった。もう…見たくないのに!




ルカが発狂する寸前、小鳥が歌い出した。




「翡翠の目をした人の子よ


星々紡ぐ民の子よ


君の世界には何がある?


君の肩には誰がいる?


何度挫けたっていい。


何回泣いたって構わない。


…私がそばにいる。」




ルカははっと我に帰り、真紅の瞳を睨み返した。世界に色が戻っていく。頭上で星々が見守っているのを感じる。


「僕は進むよ。君を置いて。」


震える声で、だがはっきりと言うと、ルカの分身は消えていった。紅い瞳は心なしか笑っているのように見えた。


ルカは石の門に鍵を差し、ひねった。


ガチャリ、と音がし、門が開いていく。重たい音を立て、完全に門が開いた。鍵を引き抜き、再び握りしめる。


「ありがとう。助けてくれくれて。」


ルカは紅い鳥を撫でた。鳥は得意げだ。


「さあ、行こう!」


ルカは、未知の世界への一歩を踏み出した。



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