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裏切り

grok

ルカたちは薄暗い路地の奥で足を止め、息を整えた。ロンドンの夜は冷たく、遠くで車の音や街のざわめきが聞こえる中、月の光だけが彼らを照らしていた。ルカは肩の傷をそっと押さえ、黒い模様がまだ腕にうごめいているのを確認した。痛みは引いたはずなのに、模様はまるで生き物のように脈打っていた。




「やるんだ、って…何をだよ、セリナ?」ルカは息を切らしながら、真紅の髪の女性に目をやった。彼女は警察の制服を脱ぎ捨て、代わりに星の模様が織り込まれた薄いマントを羽織っていた。鍵を手にクルクル回しながら、セリナはニヤリと笑った。




「鍵を使うんだ、ルカ。君の心が鍵と繋がってるって言ったろ?このロンドンって場所、ただの現実じゃない。ヴォイドウィーバーが作り上げた偽りの世界だ。ルシアンの歌が奴らを引き寄せたけど、同時に君たちの力を呼び覚ました。ほら、ルシアンも分かってるはずだ。」




ルシアンは震える肩を押さえ、濁った目でルカを見つめた。「ルカ…この世界は、星の狭間の一部なの。ヴォイドウィーバーが私たちの心を閉じ込めるために作った檻よ。私がここに長くいたのは…鍵の力を取り戻せなかったから。でも、君が来たことで、糸が動き始めた。」




「糸?」ビルが眉をひそめ、路地の壁に凭れた。「お前ら、相変わらずわけわかんねえこと言ってるな。星だの糸だのって、俺にはさっぱりだぜ。で、具体的に何すりゃいいんだ?このまま路地で突っ立ってても、アイツらがまた来るだろ。」




セリナが鍵を掲げ、月光の下でその表面がキラリと光った。「ルカ、ルシアン、二人で鍵の力を呼び起こすんだ。星を紡ぐ者は互いに繋がってる。ルシアンの歌と君の意志が合わされば、この偽りの世界を破って、織女の塔に続く本当の扉を開けられる。」




ルカはルシアンの冷たい手を取った。彼女の手は震えていたが、どこか力強い意志を感じさせた。「ルシアン…君の歌、さっきの食堂で聞いた。あれをまた歌ってくれ。俺も…鍵で何かできる気がする。」




ルシアンは一瞬躊躇したが、深く息を吸い、静かに歌い始めた。彼女の声は、少年院の食堂で聞いた時よりも澄んでいて、まるで星の光を紡ぐように響いた。




「星の糸よ、夜を貫け


闇の檻を切り裂き、


我らの道を照らせ…」




歌声が路地に響く中、ルカは鍵を握りしめ、目を閉じた。鍵が熱くなり、彼の心に光の糸が浮かび上がった。それはルシアンの歌と共鳴し、まるで二人の心が一つになるように絡み合った。路地の地面が揺れ、月光が歪み、目の前に星の模様が刻まれた扉がゆっくりと現れた。




だが、その瞬間、路地の奥から不気味な笑い声が響いた。「見つけたぞ、星紡ぎの者たち!」ヴォイドウィーバーの手下、赤い目の警官たちが黒い霧をまとって現れ、銀の剣を構えた。セリナが前に立ち、鍵を握りしめた。「ルカ、ルシアン、扉を開けるんだ!私が時間を稼ぐ!」




ビルが拳を握り、叫んだ。「おい、俺も戦うぜ!このクソくらえの偽りの世界、ぶっ壊してやる!」




ルカはルシアンの手を強く握り、鍵を扉に差し込んだ。歌声が強くなり、扉が光を放ち始めたが、ヴォイドウィーバーの手下が迫ってくる。黒い模様がルカの腕を締め付け、まるで彼の意志を試すように疼いた。




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扉の鍵穴はすぐに見つかった。あのときとは違う。ルカは躊躇うことなく鍵を穴に差し込み、ガチャッと回した。ルシアンの歌が低くしわがれていくのにも気づかずに。


「開いたよ!」


扉の冷えたドアノブに手をかけ後ろを振り返り、ルカは信じられない光景を目にした。


セリナのみぞおちから、赤く染まった銀の刃が突き出していたのだ。


その短刀を手にしているのは、ビルだった。


ルカは何が起きたのか理解できず、その場に呆然と立ち尽くした。隣のルシアンに肩を押され、ルカは新たに開いた扉へと落ちていった。



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