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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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『生きる為に』

 武器を手に、動揺している私を他所に、クロスは近付いて武器を凝視している。


「ふむ。君の武器は笛といったところか。どういった力を持っているのかはさすがに試せないが、少なくとも武器を創り出す事には成功したし、君には利用価値があると言えるな」


 そうして納得したように頷き、顎に手を置きながら私へと視線を戻し、声を掛けた。

 感嘆しているようには見えないが、どうやら少なくともクロスからすれば私の存在は多少認められたらしい。


「あ、ありがとうございます。でも、どうして心に念じろだなんて言ったんですか?」

「む? あぁ、それはだね。これを見て貰うと分かるだろう」


 そう言ってクロスは徐に真っ黒なキューブを取り出すと、目を閉じた。


「あれ? 動いてる?」


 まるで生物のように脈動し始めたキューブは一度分解されるように粒子へとなるが、次の瞬間にはもう形を成していた。


「これって、剣。ですよね?」

「そうだ。先程まで私が持っていたのは残滓を形付ける核、人間で言えば心臓だ。これには人ならざる力が備えられていてね、今や私達の主要武器になっている」

「それで、つまりはその核を持って念じれば武器の形に変形するって事ですか?」

「そういう事だ。付け加えて言うならば、イメージ力というのが大事になる。まぁ、基本的に単純な構造、自分が見知っている物になら変えられると思って良いだろう」


 喋りながら次々に形を変えていくキューブを横目に、私は自分の武器もどうにか変えられないだろうかと試してみる事にした。

 しかし、依然として形は変わらない。笛をイメージした覚えがないのにも関わらず、まるで最初からこれが正しいと言わんばかりだ。


「変わらないのかぁ」

「随分真剣な顔つきをしていたと思ったが、武器を違う形へと変えようとしていたのかな?」

「はい、ですが、どれだけ念じても一向に変わりませんでした……」

「そうか。それは上々だ」

「どうしてですか?」

「いやなに、烙印者の君が変形させられないという事は、つまり、他の烙印者も同じだという事だよ。武器が変わらないのならば対策は立て易いからね」


 私にとっては非常に残念な事なのだが、それでもクロスが感謝してくれるなら幸いだ。

 なにせ、得点を稼ぐと言っては聞こえが悪いかもしれないが、今の私は生殺与奪を握られているのだから、感謝されるという事はつまり、生き抜ける可能性に直結する。


「さて、武器も創れたことだ。最後になるが、一応試しておくとしようか」

「えっと、何を……ですか?」


 返答を聞くよりも早く、クロスがスタークに指示を出せば、首を傾げて疑問を浮かべる私の前に、どこからともなく烙印者へと情報提供した罪人が連れてこられた。

 恐らく最後の試しというのは私が残滓を創れるかの実験だ。


「あ、あの、この人をどうするんですか?」

「ん? そんなの決まっている。我々と敵対したのだ。殺す以外あり得ないだろう?」

「こ、殺すんですか!?」


 白々しいことこの上ない。自分で言ってて反吐が出そうになる。

 残滓を創れるか試すのだから、魂を使う為に殺す他ないのだ。

 けど、私は出来る事なら殺したくなんてない。

 人を、それも無抵抗の人間を殺すなんて……私には無理だ。


「んー! んーんー!」


 固唾を飲み、チラッと視線を向ければ、口を塞がれて喋る事すら出来ないこの人は、私に対して命乞いをするように喚き始めた。

 多分、この中で私になら命乞いが通じると思ったのだろう。

 なにせ、隊長達やクロスもこの人に対しては完全に興味すら示していない。

 いや、人とすら見ていない目をしている。


「さぁ、遠慮なく殺したまえ。君の力を知る良い実験材料が残っていて良かったよ」


 喚いてる声など聞こえていないかのように、クロスは良い笑顔を私に向けてきている。

 しかし、罪人の耳に残る声が、懇願する目が、必死に体をよじって死にたくないと訴えかける行動が恐怖を刻み、体は強張っていく。


「どうした? そうか、君にはまだ人を殺すのは難しかったかな?」

「はい、その、さすがに無抵抗の人間を殺すのは抵抗が……」

「ではこうしようか」


 私が難しいと言ったその瞬間、クロスは言葉と共に銃を取り出して罪人へと一発撃ち放った。

 徐々に撃たれた箇所から血が滲み、激痛が走っているのか、喚き声はまるで断末魔のように部屋へと響き渡った。


「これでやりやすくなっただろう。私が致命傷を与えたんだ。君はこいつを痛みから助けると思って殺してあげたまえ」


 どうしよう。どうしたら良い? 私が助ける? この人を痛みから救う為に?

 無理だ。まるで綺麗事のように言ってるけど、結局は私がこの人を殺す事に変わりはない。

 そんな事私には出来る訳がない。


「早く殺したまえ。このままじゃこいつが死んでしまう」

「うっ、わ、分かりました……」


 殺さない選択肢など、この人を助ける案など私に見つかる筈もなく、葛藤する時間も考える時間もなくなった。

 笑みの消えたクロスの顔が、私にこれ以上拒否したら自分の身が危ないと判断させたのだ。

 だから私は、手に持っている武器で頭を殴り、より一層激しくなる断末魔を聞きながら絶命するまで殴り続けた。

 自分を守る為に、自分が生き残る為に。仕方ない、こうするしかないと言い聞かせて。

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