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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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50話 『これは世界を救う為の戦い』

「ノーヴァ! 私が引き離すからその内にユフィを任せるわ!」


 ルーナの声? 可笑しいな。あんなに傷だらけだったのにどうして此処に?


「いや、ウチも戦うっす! メルク、ユフィさんを頼むっすよ!」

「うん! 任せて!」


 幻聴か、はたまた現実か。

 もしも現実なら時間稼ぎだとしても戦って欲しくはないが、私にはそれを言うほどの体力すらも残っていない。


「ユフィさん、これを握ってください」


 鞭の音と楽しそうな魔女の声に雑じって、一番近くでメルクが私の手に何かを握らせる。


「お願い。起きて、ユフィさん!」


 本部に居たメルクが私に何を握らせたのか。

 急速で回復していく力と体力を鑑みれば、それが何かなんてすぐに理解する事が出来た。

 そう、メルクはカルマが所有していた烙印者の武器を持ってきたのだ。


「……ごめんね、いつも心配掛けちゃって。ありがとう。私はもう大丈夫だから、メルクは安全な場所に隠れてて!」


 器であり、魔女と近しい力を持っている私だからこその芸当。

 武器から力を吸収した私は体を起こし、メルクへと声を掛けた。

 私の、いや、私達の戦いに巻き込まれないように。


「はい、私は絶対に勝つって信じて待ってますね」


 返答の代わりに頭を撫でてから、魔女を見据えて一目散に駆け出す。

 さっきよりも格段に膨れ上がった力は凄まじく、ルーナとノーヴァが戦っている所へと無理やり割り込むと、私は速さを保ったまま連撃を仕掛けた。


「ほう。力を得て舞い戻るとは面白い奴だ」

「その余裕な顔、絶対に歪ませてあげる!」


 威力もスピードも、身体能力の全てが向上している私の攻撃は防がれる事なく直撃していく。

 一撃ごとにほんの僅かだが、魔女の体はひび割れ、砕けていく。

 ただ、この程度では魔女にとって問題にもならないらしく、周囲に存在する風を操ったかと思えば、何度も瞬間移動を繰り返して私と鬼ごっこするかのように遊び始めた。

 つまり、魔女にとっては現段階の私の力程度ではまだまだ遊ぶ余裕があるという事だろう。


「このままじゃ勝てない……か」


 力を得ても、私一人では勝ち目はない。

 でも、だからこそ――それを補う仲間が居る。


「ルーナ! ノーヴァ! 私と一緒に戦ってくれる!?」

「最初からそのつもりよ! 先走ったのは貴方だわ!」

「ウチも精一杯アシストさせてもらいます!」


 私が攻撃を仕掛けたことで速さに付いてこれず呆然としていた二人へと助けを求める。

 回復した私を他所に、未だボロボロの二人はそれでも尚、喜んで頷いてくれた。

 どうしてルーナがここに居るのか、二人共そんな傷で戦えるのかなんて問う事はしない。

 意地と気力だけだとしても、これで三人で戦える。


 ーー仲間と共に世界を救えるのだ。


「攻撃は私に任せて。二人は魔女の事を引き付けるのをお願い!」

「そうね、見ていた感じ私達では通らなさそうだし、それでいきましょう」

「囮って事っすね! 任せてください!」


 私の攻撃だけが通る為、二人には申し訳ないけど囮としての役割を担ってもらう事にした。

 それにもし二人が魔女の攻撃に晒されれば死ぬ可能性は高いし、判断としては正しい筈だ。


「二人共、絶対勝って世界を救うよ!」


 意気込む私を見ながら二人は頷く。そうしてまずは私が動くのではなく、ルーナが真っ先に注意を引く為に行動を開始した。

 続いてノーヴァが駆け出し、最後に私が動き出す。

 魔女が瞬間移動しようとすれば私が無理やり止め、常に目まぐるしく動き回る事で徐々にだが、確かに魔女の体は砕けていった。


「良し、この調子なら倒せるよ! ……ってあれ。ルーナ? ノーヴァ?」


 私達の戦い方は魔女への対抗手段として間違ってはいなかったと思う。

 でも、私という烙印者と普通の人間では体力に違いがありすぎたのだ。

 幾ら烙印者の武器を持っていようと、ノーヴァとルーナは強いだけの人間に過ぎない。

 魔女から常に発せられる圧は精神を侵していき、絶え間なく動き回って注意を惹く為に攻撃をしていれば、常人の体力なんてすぐに枯渇してしまう。

 ましてや自分より遥か格上、一撃でも与えられようものなら死んでしまう状況では尚更だ。


「ごめんね、傷も残っているのに無理させちゃったね」


 息切れし倒れている二人へと駆け寄り、状態を確認した私は、これ以上戦わせられないと決断する他なかった。

 私一人では勝ち目がなかったとしても、先の戦いでの傷が開き、意識も朦朧としている二人に対して立って戦えというのはどうしても無理がある。


「ごめん、なさい。力になれなくて……」

「ウチも足引っ張ってばっかっすね……」

「ううん。そんな事ないよ。私だって助けられてるんだからさ。だから、今はゆっくり休んでて。大丈夫だよ、私はほら、強いからさ」


 屈託のない笑みを向け、私は無造作に転がっている武器を手に取った。ルーナとノーヴァの力が体中を駆け巡っていく。

 これなら、私一人でも戦える。


「ふむ。ようやく楽しくなりそうな所だったが、もう幕引きか」

「そうだね。私が貴方の命を次の攻防で終わらせてあげる。私の勝ちという結果で幕引きだ」


 力を得た私は魔女へと向き直し、この命に代えても魔女だけは倒すと心に誓いを立てた。

 これこそが魔女を宿し、育ててしまった私の贖罪であり、責務なのだ。

 だから、今は生きる事への思いは捨て去ろう。文字通り――私の全てを賭ける為に。


「おや? 武器を持たなくて良いのか?」

「うん、貴方を倒すのに武器なんて必要ないって気付いたからね。一撃、たった一撃で倒してあげるよ」


 ルーナの持っていた鞭から、ノーヴァの持っていたハンマーから。

 そして、私の笛から抜き取った力を拳に込める。避けられた終わり。一度きりの大博打。

 けど、これが最適解だ。


「面白い事を言う。やってみせるが良い」


 魔女と私がお互いに拳が届く距離に位置取り、対峙する。

 シーンと静まり返った世界の中で、風が吹き荒れ、雷が遠くで落ちた。それを合図に戦いは始まり、決着は一瞬。

 先に動いたのは魔女であり、私へと避けきれない程の風を放ってきた。一つ一つが高密度に圧縮されており、意図も容易く私の体へと穴を開けていく。脇腹、太もも、肩、腕。

 未だ戦いを楽しむつもりなのか、わざと致命傷は避けられている。

 私との実力差はまだあるし、慢心したのだろう。でも、だからこそ私の一撃は届いた。

 全てを防がず、避ける事もしないで力を込め続け、ただ一点心臓を狙って放たれた拳は魔女を穿ち、風穴を開けたのだ。


「なんだ、これは……。永遠の魂を持つ我が心の臓を失った程度で死ぬだと……?」

「そんなの貴方が完全に生まれていたら。の話でしょ?」

「我が、我が消えるなど……そんな事あってはならぬ! 消えるお前を取り込み、すぐに他も取り込めばまだ生き永らえれ――!?」


 私を殺し、取り込もうと躍起になる魔女の手が伸びる。

 しかし、それは眼前にて止まり、落ちていった。魔女の体は心臓部から広がる穴によって、ピシピシと崩壊していっている。勝敗は決した。


「……私の勝ち、みたいだね」


 もし、魔女が慢心せずにさっさと私を殺していれば結末は変わっていた。

 最期の瞬間にだって戦いを楽しむという事を捨てていれば、私は負けていただろう。

 何かが、ほんの少し何かが違っただけで今とは逆転の結果になっていたかもしれない。

 だけど、勝利の女神は私へと微笑んだのだ。


「アァァアア!! お前など、お前など生むんじゃなかった!」


 断末魔を叫びながら消えていく魔女。私へと恨み言を吐き、顔だけになっても呪いのように振りまいている。でも、〝生まなきゃ良かった˝なんて言われたとしても、私は最後に言わなきゃいけない事があるのだ。


「私は貴方が生んでくれた事には感謝してるよ。ありがとう。ごめんね、親不孝の子で」


 私をこの世に生まれ落としてくれた事への感謝と、親殺しをしてしまった事への謝罪。

 聞こえていないかもしれない。伝わっていないかもしれない。それでも構わない。

 ――だって、魔女が居なければ私は大切な人と出会えてすらいないのだから。

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