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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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46話 『元隊長ーークルス』

 本部から駆け出し、街を抜けて最後の烙印者の元へと向かっていく。

 街中を抜けていく最中、残滓は殆ど討伐されており、ノーヴァの姿はなかった。

 十中八九烙印者の元に居ると思って良いだろう。


「お願いだから生きててよ、ノーヴァ!」


 更に速度を上げて突っ走る。

 ノーヴァが殺されていない事を願いながら。


 そうして烙印者を視界に収めた時、私の体は怒りに震え、溢れんばかりの殺気を放った。


「ノーヴァに何してくれてんの!?」


 殺気を放ちながらノーヴァの頭を掴んでいる烙印者へと突撃し、離させるように殴りつける。

 勢いの篭った一撃は予想以上の威力であり、烙印者は防ぐ間もなく吹き飛んでいった。


「ユフィさん。すいません。ウチ、勝てなくて」

「全く。無茶しちゃったね。でも大丈夫。少し遅くなったけど、後は私に任せて」


 体の至る所から血が滲み、肩には貫通したような穴まであるノーヴァをゆっくりと休ませ、私は烙印者を見据える。


「良い威力だ。さすがは器なだけある。でも、そんなお荷物を守りながら戦えるのかなぁ!」


 烙印者は私に殴られた部分をさすりながら恍惚の表情を浮かべると、両手を広げて天を仰ぎだした。

 次の瞬間、私ではなくノーヴァへと向けて凄まじい速さの剣が飛来した。


「ノーヴァを簡単に殺させるわけないでしょ!」

「あははっ! その威勢がどこまで続くか見物だなぁ! ――はっ?」


 飛来する剣を弾き、次々と迫る剣を捌き続けながら突き進み、余裕の表情を見せていた烙印者の顔は私が眼前へと近づいた時には唖然としたものに変わっていた。


「ノーヴァの痛み、思い知りなさい!」


 烙印者が咄嗟に剣を手に持ち、私へと振るう。

 が、同時に私も笛を振り抜き、ぶつかり合ったお互いの武器は甲高い音を上げた。


「おりゃぁぁぁ!」


 私の笛と烙印者の剣。威力が勝ったのは私の方であり、態勢を崩した烙印者へと猛攻を仕掛ける。

 空を切るほどの速さと威力。

 これさえ決まれば確実に仕留めきれる……筈だった。


「っ! 後ろから!?」


 乾いた銃声が辺りに響き、背後から迫る銃弾が私の頭を撃ち抜こうとしてきていたのだ。


「凄い身体能力だね。背後からだったのに避けるなんて流石だよ」


 狙いすました銃弾を避けるには、既に振り抜いている笛の勢いを無理やり止める他なく、体へと掛かる強烈な負担を抑えながら、後方に回転するしかなかった。


「……やっぱりクルスさんでしたか」


 烙印者を守るように完璧なタイミングで放たれた銃弾は、その正確な射撃と声によってすぐさまクルスだと分かった。


「ごめんね。今ネメア様を殺させるわけにはいかないんだ」


 ずっと身を隠していたのか、茂みから姿を現したクルスは私を一瞥して声を掛けると、銃を向けながらネメアと呼ばれる烙印者へと歩みを進める。

 私へと視線は向けられていないものの、下手に動けば撃たれることが分かっている以上、私は動くことが出来ない。

 なにせ、眠らせることが出来る銃を向けてきているのだ。


「ネメア様。お望み通りクロスを仕留めて参りました。ですので、約束を果たして頂きたい」

「おい、勝手に俺様の名前を出してんじゃねえよ。器に知られちまったじゃねえか」

「も、申し訳ありません!」


 最後の烙印者。

 獅子座の烙印者の名前はネメアというらしく、クルスが喋った事によって私が知る結果となり不機嫌な顔をしている。

 クルスは怒らせたことに怯えたのか、すぐに膝をついて謝っている。

 が、依然として銃口を私から逸らす事はしない。


「ちっ、まぁ良い。んで、約束ってのはてめえの家族の解放だっけか?」

「はい、ご命令を果たしましたのでどうかお願い致します」

「んー、そうだなぁ。そこに居る器を戦闘不能にしたら解放してやるよ。てめえの力なら出来るだろ?」

「なっ!? それじゃあ約束と違うじゃないですか!」

「うるせえよ。てめえの家族が殺されても良いのか?」

「っ、分かりました……」


 クルスとネメアの会話から、家族を人質に取られているという事情は分かった。

 でも、それで今までの裏切りやクロスを撃った事実が許される事はない。

 私から、いや、私達からすれば今のクルスは烙印者と同じ、倒すべき敵だ。


「ユフィ君。お願いなんだけど、僕の家族の為に犠牲になってくれないかな?」


 命令を受け取ったクルスは私へと近付くと、優しい笑みを向けながら承諾出来ないお願いをしてきている。

 正直私は近付いてきた時点で、言葉を掛けるよりも撃ってくると思っていた。

 だからこそ身構えていた為に、まさかのお願いで呆気に取られて返答に詰まってしまう。


「えっと、その、ごめんなさい。それは出来ません」

「そうだよね。それじゃ仕方ない。戦おうか」


 ただ、幾ら私が返答に詰まろうと私がそのお願いを受け入れる訳がないと分かっていたのか、拒否したとしてもクルスがガッカリしたような様子はなかった。

 というよりも、むしろ何処か達観しているような表情を浮かべており、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 これならば戦う前に少しくらい話が出来るだろう。


「戦う前に一つ聞きたいんですが、メルクを助けたのってクルスさんですよね?」


 クルスと戦うのはもう止める事は出来ない。

 助ける事だって出来ないし、今ここがクルスと話す最期の機会だろう。

 そう思ったから私は話をする事にした。

 この会話次第でクルスが助けたから殺さないとか、見逃すという訳じゃない。


 ただ単純に、メルクを助けてくれていたのなら『ありがとう』と感謝を告げたいだけだ。


「そうだね。僕がメルク君を助けた。でも、勘違いしないで欲しい。メルク君を助けたのはあくまでも娘に似ていたから。ホントにそれだけ。僕はどうしようもない人間だよ。だって、油断している君に銃口を向けているんだから」


 正々堂々と戦うという言葉すら嘘だったようで、私が感謝を口に出す前に、眼前へと銃口を向けられてしまっていた。

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