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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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41話 『帰還』

 ――隣国から本部へ走っていくのにはそれなりの距離がある中で、どうしてか私は途中から力が思うように出せなくなっていた。

 それは傷があるからという訳ではなく、烙印者の力を吸い取った事で餌に飢えたように、残りの烙印者を喰らわせろとでも言うかのように魔女が出てこようとしているのが原因だった。


「顔色悪いみたいっすけど大丈夫っすか? もしかしてユフィさんも傷が……?」

「ううん、違うの。ちょっと魔女が暴れていてね。抑え込むのに手間取っているだけだから心配しないで」


 傷が開いて血が出ている中でも、自分より私を心配してくれるノーヴァには包み隠さず今の状況を伝えた。

 ここで隠す必要もないし、妥当な判断だろう。


「もしかしてさっきの烙印者たちの力を吸い取ったからっすか!? ウチに手伝える事があったらなんでも言ってくださいっす! 力になりたいっすから!」

「ありがとね。それじゃ少しだけ待っててもらっても良いかな?」


 魔女が出てきてしまえば真っ先に殺されるのはノーヴァだろうに、それでも一切怖がらずに接し、私は笑顔で感謝を述べた。

 その後、私は一度立ち止まり、全力で魔女を抑え込む。

 その間、ノーヴァは自分で簡易的に包帯を巻き、痛み止めを飲んでいた。

 私が魔女に乗っ取られる心配はしていないようだ。


「――待っててもらってごめんね。もう大丈夫だよ」


 力が増している所為か、抑え込むのに時間が掛かったものの、ひとまずの窮地を凌いだ私は周囲を警戒しているノーヴァへと声を掛けた。


「それなら良かったっす! それじゃもっとペースを上げていきましょうか!」

「うん! ……あ、ごめん。ちょっと待って、先に伝えておくことがあるんだ」


 走り出そうとした肩を掴まれた事で、きょとんとしているノーヴァ。

 既に私の所為で時間を費やしている為に、ここで再度引き留められてしまえば驚くのも無理はないが、それでも私は続けて喋り続ける。


「あのね、力を吸収出来たお陰で烙印者の居場所が分かるようになったみたい。詳細は走りながら話すけど、とにかく今は残りの烙印者が本部に集まっていることを教えとくね」


 私がどうしてこんな能力を手に入れる事が出来たのかについては一切の疑問を持たず、ノーヴァはただ言葉の意味を重く受け止め、真剣な眼差しを私へと向ける。


「りょ、了解っす! それじゃこれが最後の戦いっすね!」

「そうだね。これで最後だ!」


 自分の中で渦巻く思いに蓋をし、言い聞かせるようにノーヴァの言葉に同調する。

 でも、きっとこれが最後の戦いになる事はない。

 勿論、私が感じる残りの烙印者は獅子と双子だし、それで全部だから、普通に考えれば烙印者との戦いは最後になる。

 しかし、残された私が存在する以上は魔女との戦い、或いは私との戦いが残っているのだ。

 この事はノーヴァにも分かっていてもらいたいが、これを今言うのも無粋というもの。


 ――だって魔女か私と戦うという事は、抑え込めずに乗っ取られた時なのだから。


 本部から移動している獅子はともかく、残っている双子の位置をノーヴァへと伝えながら走り続け、ようやく本部が存在する国へと戻った時、私達はその惨状に絶句した、

 そして、同時に二人だけでは確実に戦力が足りていない事を理解した。


「く、なんて酷い……」

「これは……マジっすか。ここまでやるもんなんすね……」


 隣国も荒れに荒れて、復興も膨大な時間が掛かるほどだったが、それと比べてもこの国の有り様は酷すぎる。

 殆どの家は燃やされ、壊され、人々も殺されるか食べられているのだ。

 それに加えて、守りの要である本部もボロボロで、堅牢な外壁も崩れ落ちている。

 最早組織の本部としての機能は失われていると思って良いだろう。

 とは言え、この惨状の中でもまだ残されている希望はあった。

 まだ生きている人は居るし、懸命に戦っている隊員も存在するのだ。今ならまだ助けられる。

 だから、今この瞬間に絶望して立ち止まっている暇なんてない。


「とりあえず、えっと、烙印者はまだ中に居るんすよね?」


 ひとまずと言った形でノーヴァは私へと訊ねる。


「うん、獅子は離れてるけど、双子はまだ居るよ。結構近いから接敵しちゃうかもしれないけど、ノーヴァは最悪一人でも大丈夫だよね?」


 ノーヴァが小さく頷いたのを確認し、私は再度周囲に居る双子の位置を確認する。

 近付いてきているのか、気付かれているのかを把握する為に。


「良し、まだ気付かれてなさそう。それじゃここからは二手に分かれて――」


 彷徨っているのを確認したつもりだった。まだ、ここまで近くには居ないと確信していた。

 この能力に全幅の信頼を寄せたつもりもないが、それでもある程度なら大丈夫だと、そう思っていた。


 なのに、どうしてだろう。――気付けば私の目の前には烙印者が浮いている。

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